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6. 蝶野さんⅠ



 昼食も済ませ自分の席付近を見るともう女子軍団はばらけていた。

なら自分の城に戻るか…… そんな感じで我が席に帰還したわたくし。


 森田や仁志の近くに居たら胃が痛くなってくるので今日は早々に自分の席へと戻ってきた。



 まだ昼休みの時間はもう少しあるのだが、せっかくなので5時限目の準備だけでもと思い教科書やノートを準備する。5時限目は数学。そーいや前回の授業で先生が何か言っていたような気が………


 慌てて教科書を開けてみると練習問題に○が打ってある。すなわちこれ宿題。しかも今日は俺達の列が間違いなくあたる。


 問題数はざっと数えて20問以上。どれが当たるかわかんねー。もう無理。

今から全問解くなんて精神と時の部屋でもない限り絶対不可能。


 仕方がない。石になろう。

僕は石。怒られても聞こえない。みんなに笑われても気にならない。叩かれても痛くもない。そう僕はただの石……。



 現実からの逃避を図り自己暗示を行うため、瞑想の世界にどっぷり嵌っていると何やら背中をツンツンとする刺激が…。


「数学の宿題のノートだけど……いるかな~?」


 ツンツンの主は何と後ろの席の蝶野さん。いや~今日もお美しいことで…。

当然俺はビックリ。何で大天使様がこのような下僕に直接お声を掛けて下さるのか? 罰ゲームでも食らったの?…


「え、……いいの?」


 一瞬間を開けてから返事をする。こんな下賤に情けを掛けて下さるなんて…を強調。 高貴な人に対する礼儀ってやつ。


 他の奴から差し出されたノートなら今頃とっくにふんだくってるけどね。 でも相変わらずええ匂いしまんな~ ほんまに。


「うふふ… さっきから諦め顔になってたよ。言ってくれればよかったのに…」


 これは有難い。時間も無いので早速ノートを写しまくる俺。これにはマジで感謝。

でも蝶野さんってこんな人。誰とでも普通に喋って結構優しい。それに話しやすい。女子の話ではちょっと下世話な会話も得意だとか。


 勉強もできるし喋りも上手。やっぱ外見も中身も神ですわ。後で賽銭投げ入れさせてもらっときます。なんて馬鹿言ってる暇はない。もうおしっこ漏らしそうな時みたいに大慌てでノートを書き写さないと…。


…………。


 間一髪セーフ。授業開始直前にコンプリート。


「ホントに助かった。マジで感謝。蝶野さんありがとう」


 そう言って蝶野様にノートを返却。ノートを渡すときにちょっと手が触れちゃった。 ラッキ~ あとでしゃぶ…… 何も言ってませんがなにか?……



「ホントに感謝してる~?」


 すこしニヤっとして悪戯っぽく笑う蝶野さん。マジ可愛すぎるからやめなさいってば…


「してるに決まってるよ。何かお礼でもしたいぐらい……」


「そっか… お礼してくれるんだ」


 蝶野さんいきなり納得。いやあの社交辞令ですってば…。いきなり納得なんてしないで…ステーキじゃないんだからね。


 出来れば小ゼニーで済む程度で宜しく…… 人物が描かれた紙を使わない方向で。



 そんな事をやっている間に5時限目の授業の予鈴が鳴る。ガラガラガラっと教室の扉が開き先生登場。よっしゃ、バッチこい。……どんな問題でも答えてやるぞ!


「え~ 数学の先生が急に出張となったので自習。以上」



 写させてもらったノートを使うことは無かったが、お礼だけはしっかり発生するっていうのはいかがなものなの?……




 そんな訳で5時限目は自習……“自”みずから“習”ならう 教師いらずの自主学習…だったら家に帰らせろ。ついでに6時限目もおまけで休んでやるから。


 自習なんて言われて本当に自分でせっせと教科書見て勉強するバカいるの?……っていたわ、目の前に。


ツインテールの眼鏡っ子江藤えとう佐那さなちゃん。今日もロリってます、はい。


 背も小さくて、も~きゃわいいんだから~。流石に真面目っ子。教科書を見ながらコツコツと…。

小顔でちょっと大きくてクリっとした眼、そして可愛くて小さなお口。後ろ姿なんてもう条例違反の世界。


 言っておくが俺にそっち系の趣味は無い(うそ)。そんな俺でもこれだからそっち系の奴にとっては至宝だろう。



 そんな感じでお昼ご飯後の憩いのひと時を前方のロリっ子江藤さんを尊敬の籠ったエロい眼差しで見つめていた(デレていた)ら後方より多分俺に向けられたのであろう言葉が聞こえてきた。


「へ~えッ…本郷君ってロリなんだ…」


この俺様がロリですって?…… ええそうです俺はガチロリですが何か?… 


 振り返ると蝶野さんがニヤニヤしながら俺を見ていた。 普通に鼻から脳みそ出た。

この出ちゃった脳みそどうしよう? すすれば戻る?



 蝶野さんからいきなり“ロリ”って言葉が出てきたんでぶっ飛んだ。とてもそんな言葉使うようには見えないのに…。


 こんな美少女の口からロリなんて……余計に萌える。 でも俺はロリじゃないかんね!(表向き)


「い、いや~ そんなこと………」


あるけどね。ナイショ。だって素直に言うとみんなが白い眼で見るんだもん。


「江藤さんって幼く見えて可愛いよね」


 ニコニコと楽しそうに微笑みながらそう言った蝶野さん。 貴方が他の人に可愛いなんて言ったら嫌味ですって。


 でもなんて答えればいいの? こーいう場合。


そうだね、可愛いよね → これだったら俺がロリであることを自白するってことに…。


そうか? そんなことない → これだったら俺が江藤さんを貶しているように…。



「―――そうだね。でも普通の女性として可愛いと思うよ」


 頑張った、俺のCPU。肯定の言葉+普通の女性として称賛  俺は決して彼女をロリっぽく見ていない!(見てるけどね)


頑張った俺のCPUが使用率20%までようやく低下して落ち着いてきたころに、蝶野さんは前のめりになって俺に近付き小声でぼそっと訊いてきた。


「……そう言えばさ、本郷君って……ちょっと前に彼女と別れたんだよね?」


 思わずドッキリのビックリ……何で知ってんの?… ってかさっきから何なの? この妙な質問オンパレードは?


「―――そうだけど…どーしてそれを?」


「ちょっと小耳に…ね。こういう噂って女子の中で早いんだよ~」


そう言ってくすくすと笑う彼女。


 つくづく思う。女社会の脅威の情報伝達網。一人の女子からの発信が2日ほどで全体にいきわたる。スマホなんか使ってガチでやったら多分その日のうちに一瞬で全体に回ると思う。


 でもやはり女子の恋バナ好きは凄い。誰かが引っ付いた別れたって話は最高の御馳走なんだろうね。俺と理沙子の話は恋バナ(ダークバージョン)だぞ。恋花という花が散る話聞いてそんなに面白いか?



「でも……どうして別れたの? 結構続いてたんでしょ?」


「ちょっとね……お互い合わないなって感じで…」


もうこの辺で勘弁。あいつが浮気したことなんて言える訳ねーし。


「ふぅ~ん、そっか… やっぱ噂とは違うんだね……」


―――なんかこれはヤバい、もしかして詳しい事情を知ってる? かくなる上は…



「蝶野さんはどーなの? 好きな人とかいないの?」


面舵いっぱ~い。一気に方向転換。


「私?… ん~ん 好みの人はいるけど好きな人はいないかな…」


 ふぅい~い… 方向転換完了。

適当に訊いてみただけなのに何か真面目に答えてくれたぞ。ま、好きな人がいても答える訳ないよな。


 こっちも訊きたくないし。もし教えてくれてもその人の名前がばれたらパニックになるだけだしな。“あの蝶野さんの好きな人は.........で~す。”…一気に学校中の話題を集めることになんぞ。


 あ、そうだ。ついでに興味本位で一つ訊きたいことが……


「そう言えば蝶野さんってさ、付き合った経験とかは?」


これだけの美少女を射止めたやつはいるのか?… やっぱ興味あるよね。


「あるよ。中学の時に一度だけね」


へ~ いるんだ。過去に蝶野さんを射止めたやつ。 いったいどんな奴? って聞けねーよな。

何か知らんけど俺も他人の恋バナ聞いてたら楽しくなってきた。ついでに訊いちゃえ。


「今は彼氏いないんだよね?」

「ん~、……いないっていうか…どーなんだろ……」


何か奥歯にものが挟まったような言い方。いったいどーしたんだろ?


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