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39. 打ち上げⅢ



 みんなで学校を出て徒歩10分少々、先頭を行く蝶野さんが立ち止まり、「到着。みんなここだよ~」といってお店屋さんの扉を開ける。


 俺達が辿り着いたお店…それは俺と蝶野さんが以前一緒にやってきたことのあるログハウス風のシャレた造りをしている喫茶店。店に入った蝶野さんが店員に名前を告げると、奥にあるちょっと大きめの円卓にみんなは案内された。



 さて、どこへ座ればよいのやら…… そう思っていると、「佐藤君、一緒に座ろっ」と言って加賀美が佐藤を引っ張りまず着席。だったらと思い、俺は佐藤の隣に座ると、仁志が黙って俺の隣に座る。そしてその横に恭子。最後に蝶野さんがあいている席に座った。俺と蝶野さんは向かい合わせで、俺の両サイドはカップルといった感じだ。


 座るとすぐにテスト結果について加賀美は嬉しそうに佐藤と喋っている。 大体何でこいつがここにいる?… そう思うのだが、「あの時佐藤君と加賀美さんもいたから誘ってみた…」と、蝶野さんに説明されたので渋々我慢することに。


 加賀美はともかく、佐藤は口が堅いし、確かにこのメンツなら何を話しても大丈夫って感じがするので取り敢えず納得。


 メニューを開いて注文する品を選び始めると、蝶野さんと恭子は二人でキャッキャッと騒ぎながら仲良く相談をはじめ、あっという間に仲良しって感じとなっていた。佐藤は加賀美にべったり張り付かれているので、俺は仁志と二人で喋りながら注文の品を決めた。



 みんなの注文が済むと、蝶野さんが仕切る形で打ち上げが開始される。まず最初にすること…それは当然各自の結果発表。


「あたしね~、なんと14番だよ。佐藤君のおかげでだいぶ上がっちゃった。 えへへ…」


何故か加賀美がトップバッターとなり、以後それぞれが順位を言っていく。


「僕は今回7位だったよ。本郷君に負けちゃったね…」


「俺はなんと奇跡の5位だぞ。いやー頑張ったわ…」


……と俺が言っても誰も驚かない。何故なら俺の成績だけはここにいるみんなが既に知っていたから。仁志を除いて…。


「すげーじゃねーか、修二。 だが、…大丈夫だったのか?」


何がだ?…親友。何の心配してくれてんの? 言っとくけどその反応って加賀美と一緒だかんね。…


「仁志はどーなんだよ?」


「俺か? 俺はいつもと変わらん感じで10位だぞ」


 こんな感じで進んでいき、次は順番から行って恭子の番。自分の順番が回ってくると、恭子はちょっとおどおどした感じになりながら、恥ずかしそうに少し下を向いて喋り始めた。


「わ、私は……1位…かな…」


 ええ~っ!… と驚く皆さま。そして驚かない俺と仁志。

そもそも恭子だったらもう少し上のレベルの高校にだって行けたのだから、それを知っている俺と仁志にとっては何ら意外な事でもない。


 でも…ね、…さすが恭子だわ。多分俺が勝てることなんて一生無いだろうな。…… あ、あのね… いっとくけど悔しくなんかないんだからね? 5位でも負けるっていう理不尽さを堪能してるんだからね!


「じゃあ最後に…… 私は3位でーす。 えへへ…」


 最後の締めくくりは蝶野さん。結果は3位…俺としては納得といった感じ。 しっかし、うちのクラスの天使様たちのハイスペックなこと。やっぱ神に一番近い存在だからなんすかね。


 それから暫くはみんなで成績の事などを話しながら盛り上がっていたが、注文した品が来ると一部の人達だけがさらに盛り上がり始めた。


「わぁ~っ、蝶野さんの言ってた通りだ。これ本当に美味しそう…」


「蝶野のおすすめ最高だね。凄くいいよ…」


「でしょ~! ここのケーキは私のお気に入りなの…」


 運ばれてきたケーキを目の前にして目を輝かせている女性陣。流石の加賀美も今は佐藤よりもケーキに夢中のようで…。 あ、でもケーキにもたっぷり「さとう」が入ってるから結局は佐藤に夢中なのか…。この「さとう」好きめ!


「それではみんな、テストお疲れさま~」


 蝶野さんの掛け声とともに女性陣はケーキを食べながら、男性陣はサンドイッチを食べながらの歓談が始まる。


 加賀美に蝶野さんに恭子…みんなタイプは違うのだが、ケーキは女性を繋ぐ架け橋になるみたいで、みんな楽しそうに燥ぎながら食べている。


 俺達男連中もサンドイッチを食べながらいろんな話で盛り上がった。普段は無口な仁志も佐藤が空気を読んで上手く喋るので、いつも以上に口数も多くなり楽しそうにしている。



 やがてケーキを食べ終わると加賀美は佐藤の傍に戻り、恭子と蝶野さんは熱心に喋りだしたので俺は仁志と話し始めた。よく考えれば仁志とゆっくり喋るのも久しぶり。結構積もる話もあったのでそれから暫く仁志とまったり話していた。


―――蝶野さんは予告通りって感じだな


 仁志と話している途中、何度か蝶野さんの方に目を配ると、楽しそうな表情で恭子にあれこれ質問している蝶野さんの姿が目に映った。それに時折、「本郷」や「沖田」といった俺たちの名前が聞こえてくる。目を輝かせて興味津々といった感じで、恭子を質問攻めにしている彼女の姿は見ていて楽しく思えた。



「そう言えば修二、最近高科とどうなんだ?」


「どうって?…」


「以前のように戻ることができたのか?」


 しっかりと俺を見据えながらはっきりとそう訊いてきた仁志の表情は真剣なものだった。


「ああ、恭子はすっかり昔の感じに戻ったよ、……それは俺も同じだし…」


「そうか…… ならもう絶対彼女を泣かしたりするなよ…」


 まるで俺をたしなめるかのように仁志はそう言った。なんか兄に説教された弟のような気分、…だがその言葉に籠った仁志の気持ちは十分に理解できる。それに俺だってもう恭子を泣かせるつもりなどない。


「分かってるって…。俺も少しは大人になったよ。本当に大切なものも分かってきたし…」


「ならいい。これでやっと俺の肩の荷も下りるってもんだ……」


 仁志はそう言うと笑っていた。

俺と恭子の関係が元に戻ったことを本当に喜んでくれているようなのだが……


―――仁志、お前は恭子の事をどう思ってるんだ?


 思わず訊こうと口をけかけたが、何故だか俺の口が開くことはなかった。


 俺の眼には明るく楽しそうに話している恭子の姿が映っていた。今の恭子は俺が知っている中でも最も幸せそうに見える。何の憂いもなく、何の迷いもなく、本当の笑顔で笑っている。


「最近の高科は幸せそうだな。ほんとにいい笑顔だよ…」


 ポツリと仁志がそう呟いた言葉を訊いて思った。 ……やっぱ仁志だな、よく分かっていやがる。俺よりも恭子との付き合いは短い筈なのに、本当によく恭子の事を知っている。


―――お前になら安心して恭子を任せられるよ…。


仁志なら間違いない、…そう確信できる。



「そう言えば修二、お前いつの間に蝶野と仲良くなったんだ?」


「別に特別仲がいいって訳でもねーよ。俺が一方的に彼女のお世話になってるようなもんだし…」


「そうかなの?…」


 ちょっと訝しい感じで俺を見る仁志。 恭子といい仁志といい、どうして俺と蝶野さんの関係を勘違いするのかよく分からん。


 確かに仲が良いのは認めるが、彼女に事情があるのを知っている俺が彼女の迷惑になるようなことをする筈もない。


「蝶野さんは誰にでも優しいし… 佐藤とだって普通に仲がいいよ」


「そんなもんか…」


「そんなもんです…」


 少し要領を得ないような感じの仁志だったが、何となくそれで納得したようだった。



「しかし、みんなが天使だなんだというが……蝶野はさすがに凄いな」


“お前でもそー思うの?”…思わずそんな言葉が出そうになった。可愛い女の子から告白されても、眉一つ動かさずに断る仁志がそんな言葉を出すとは思いもしなかった。


……こいつにもそーいう感情があったんだー(棒)。


 てっきり生まれてくるときに、人間として大切な感情を母体に置き忘れて出てきたもんだとばかり思ってたんだけど…。


「蝶野さんはうちのクラスの大天使様だぞ。お前も少しはうやまえ…」


「大天使様って… ただのクラスメイトだろ? いつからお前は下僕になったんだ?…」


「し、失礼なこと言うんじゃねーよ! 下僕になんかなってねーよ…」


「で、いつからだよ?…」


「えっとね、席替えしたときからかな…」


「恥ずかしくねーの?」


「―――ちょっとね…」


 うっさいやい!…下僕でいいもん。 おれこんな自分を気に入ってるし~ 文句言われる筋合いないし~


 ちょっと身長高くてクールでイケメンで妹は美人で母さんも美人で父さんイケメンだからって……


―――ちょっとは欠点もとーよ。


性格以外に欠点のない仁志にイラっとしていたら……


「しっかし、高科も本郷なんかさっさと見捨てればいいのに。人生損してるよ?」


「クスッ… そんなことないって~ 修二はあれで優しいよ…」


「なになに?… 本郷君ってどう優しいの?」


気が付けばとんでもない会話が進行されていたようで……


「だって本郷ってさ、ときどき私の太ももチラ見してんだよ? ただのスケベじゃん…」


「え~ッ… 本郷君ってそんなことしてるの?」


「いっぺん修二には怒んないとダメみたいね……」



加賀美…覚えてろよ。今度はチラ見じゃなくてガン見してやるからな……。


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