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21. 中間テストⅠ

これから少しの間、シリアスちょっと少なめでゆるい展開となります。



 恭子へ電話をした。そして今まで心の奥で引っかかっていた棘もようやくなくなった気がした。

めでたく二人の和解も成立し、俺が抱えていた大きな問題もなくなったので晴れ晴れとした気分で過ごせるように…。


―――なるはずだよね?



 電話をしてから1週間ほど経った今日このごろ…。

もう暦は6月となり朝の日差しもめっきり強くなってきている。


 今日もいい天気だ。

俺は学校へ行く準備を済ませると玄関の扉を開け、道を挟んだ向かいにある一軒の家の様子を窺う。


……よし、異変は無いな。


 すぐさまダッシュ!……

逃亡犯もビックリといった感じで駅まで猛ダッシュをかますわたくし…。

理由は単純、恭子に会いたくないからである。 いや、正確に言おう…… はっきり言って会わせる顔が無い。


……だってさ~、彼女とのいざこざでムカついていた腹いせに絶縁を叩きつけたんだよ?…


 しかもあれから2年間も完全無視を決め込んでいて……

それがある日突然「やあ、元気してた?…」なんて言える訳ねーよね?


 電話では許して貰えたんだけどね、……はっきり言って、“今更どの面下げて…”だよね。

クラスでも恭子の顔を見るたびにもう恥ずかしくって…

穴があったら入りたいを通り越して、穴があったら埋めて欲しいぐらい…。



 今は何か以前より恭子の顔をまともに見れなくなっている現状です。…はい。

かといって意識的に無視してるなんて思われるのは絶対ダメだし、恭子の顔を直視するのも厳しいし…。

なので今は通学もいつもより一本早い電車で一人で学校へ行っている。



 そしてクラス内での関係だが、仁志に喋りに行くついでに恭子とちょこっと話す… これが現状でございます。


 昔のような慣れ親しんだ感じは2人でいるときのみ、クラス内での態度は今までとあまり変えないで欲しい…… 恭子にはそうお願いしている。


 恭子は相も変わらずクラスでの人気者。中学の時と一緒で…。そして俺は同じクラスになってから一度も恭子と口を利いていなかった。そんな俺がある日突然恭子とお互い名前で呼び合って親しい感じで話していたら……


どー考えても不自然極まりないでしょ?



 だから今は仁志と恭子と3人でぼそぼそと喋る程度にしている。

恭子には悪いけど暫くは他人行儀にしてくれと頼んでいる状況。



 俺はそんなこともあり今は前以上に自分の席周辺で引き籠っている状態となっている。

ま、時間が経てばゆっくり状況も変化させていけるでしょう…。


 それに俺が席から離れないのには理由がもう一つ…。

俺の隣の席の住人である佐藤さとう忠司ただし


 見た目は普通で大人しいのだが中身は好青年。こいつは“ただし”の名前通り常に正しい。本当にジャスティス。そしてゲームの腕前が神レベル。だいたいどんなゲームでも卒なくこなしてくる。


 最近では休憩時間などを利用して二人でスマホゲーで対戦し、家に帰ってからも二人で戦場へと向かう毎日…。


 特に最近嵌っているのが戦車ゲー。女子高生が戦車道に励んでいるのに感化された俺は男子高校生としての戦車道に邁進している。そんな戦車道において佐藤は俺のお尻……いや、背中を安心して任せられる大切な友。


今日も家に帰ったらパンツ・アホーウ!


 ちなみに佐藤に好きなタイプは?…と聞いたら即答で「アリス」と答えた。

俺は佐藤と固い握手を交わした。 佐藤、お前もこっちロリの人間だったんだな…。



 まーだいたいこんな日常を過ごしている。

そして今は休憩時間。当然佐藤と向かい合ってスマホでバトルをしていたのだが…。


「ちょっと、……本郷、邪魔だからどいて…」


 クッソ偉そうな物言いで割り込んできやがる人物が1名。

こいつは加賀美かがみまどか。名前は似ているが魔法少女ではない。


 こいつはただのクソギャルでございます。某アニメキャラと似ている点はスカートの短さぐらい…。

明るい茶髪のセミロングで薄っすら化粧までしくさって…… 可愛いじゃねーか…チクショウめ…。



 席替えしてからたまに佐藤の所に来て喋っていたりしていたのだが、最近はその頻度が高くなっている。


 加賀美の席は真ん中列の最後尾。だから俺達の席とは全然近くない。

なんでわざわざ席も近くないのに佐藤の所へ?… そんなの決まってるよね? 


 傍から見てれば加賀美が何考えてんだか誰でもすぐにわかるんだけどね、唯一理解できてない人が一人だけ…。


 当然それはお目当ての人である佐藤本人。

こいつは鈍感なのかわざとやってるのかは知らんが、全く気付いていない様子。

これ天然でやってんならある意味凄いと思う。


 そして佐藤の反応が全くないんで加賀美はもうジレジレ…。

そんな加賀美を見てるともう可笑しくって… 笑うしかねーよね?

そんでニヤついた目で加賀美の顔を見ていると……


「―――何よ!」


 鋭い目つきで睨んできて…… って、いってぇぇ~!

見えない所で俺の足を踏んでくる。この女凶暴につき要注意。


 そんな訳で俺と佐藤の憩いのひと時をいつも邪魔しやがる。


 大体佐藤がお前に振り向くとでも思ってんのか?

そもそも似合わねーんだよ。 二人が並んで歩いたらウケ狙ってるとしか思えん。

この二人の組み合わせを例えると、頭はガ○ダムで体はザクみたいなもんだぞ?…

バリバリ違和感しかねーじゃん。



 佐藤は俺も認める人格者。お前みたいなクソギャルには勿体ないんだよ。

佐藤には清楚でお上品な可愛い子がお似合いでございます。



でもさ…… 正直佐藤は凄いと思う。

加賀美ってスタイルがいいっていうかエロイんだよね。もうフェロモンぷんぷんって感じ。んで顔も可愛いし…。


 普通の男なら大概直ぐに堕ちると思うんだけどね… まるでそんな気配がない。

佐藤ってさ、パッと見た目では小城にしか見えないのに、実は難攻不落の稲葉山城でしたって感じだね…。

竹中半兵衛でも雇わない限り佐藤あれを堕とすのはムリでしょ?



 佐藤を加賀美にとられて暇なんでアホな想像ばかりしてると、何やら必死に加賀美が佐藤にお願いしている声が聞えてきた。


「佐藤君、お願い。 …私さ、今回のテスト全然自信ないの… だから一緒に勉強してくれない?…」


はん!… なにを言ってんのかと思ったらテストを口実に一緒に勉強しようって…て…て… テスト?!



 その言葉を聞いた瞬間、俺の体に青春のほとばしる汗が噴き出してきた。


―――そういやそんな都市伝説みたいな行事があったよな


 6月に入って中間テスト… これをしくじって期末もやらかすと夏休みが自動的に消えていく。

ヤバいの5乗…



 思わず最近の自分を振り返る。

そして出てきた答え…… 現在の俺はまるでパプリカ…。


 授業中に宿題を当てられても完璧に答えている俺。英語の先生には訳した時にexcellent!って言われちゃった。


全部蝶野さんのノートのフルコピーなんだけどね…。


 今の俺は外から見たらテカテカと綺麗に光り輝いているが、実際中身はスッカラカン。

本当にパプリカだ。頭の中身は何にもないただの空洞。



 ちょっと待ってよ… ヤバすぎるでしょ?…

なまじ蝶野さんを召喚し過ぎた。最近の俺って蝶野さん使いのマスターレベルだもんな…。

流石に大天使様を召喚しまっくた罰があたったかな…。


 そもそもこの甘々の環境が悪い。

だってさ、…お願いすると“いいよ”って言って宿題を全部写させてくれるんだもん。


だが何とかせねばなるまい。


 最良の方法は佐藤活殺術により佐藤を生かさず殺さず上手に利用出来ればなんだけど… 多分佐藤は加賀美に持っていかれる。そこへ混ぜてなんて言ったら加賀美にナイフで刺されるだろうし…。


 ならば最終兵器“恭子”……いや、まだ封印は完全に解け切っていない。


………ならもうこの手段しか残っていない。


―――神に祈ろう…。



「わたくし本郷修二は他人様の力を借りてばかりで自らの努力を怠りました。ここに後悔と共に懺悔いたします。こんな私でございますが、何卒神の御加護を―――」


「何言ってんの?… 本郷君?」


 蝶野さんに向かって十字を切って拝んでみた。苦しいときは神に頼むしかない。

俺の懺悔を訊いた蝶野さんは意味が分からずキョトンとしていた。


「―――蝶野さん… 勉強おせーて… お願い…」


「ええ~ッ! 私が教えるの?… 私もそんなに自信ないけどな…」


「あれだけ完璧に宿題こなしている蝶野さんなら絶対大丈夫。 …な・に・と・ぞ・お願いします…」


「―――まあいいけど… 責任持てないよ…」


「全然オケ。一人でやるよりよっぽどましです…」


ってな感じで何とか家庭教師蝶野さんをゲット。 取り敢えずこれで何とかなるだろ…。



「……で、本郷君…」


「なに?…」


「どれぐらい寄付してくれるのかな?…」


相変わらず大天使様はキャッシュなお方でございました…。


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