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1. 理沙子Ⅰ



 前を見る、誰もいない。横を見る、誰もいない。一応後ろも見る、誰もいない。

よし、安全確認OK。上を見る、木が見える。あたり前。


ここは公園にある雑木林の中。目の前には小汚いベンチが見える。よーあんな汚いベンチに座るわ。

目の前に見える小汚いベンチには一組のカップルが座っている。恋人つなぎをしてお互い照れて顔を赤くしている。


 なんて初々しいカップル。でも昼間っからよーやる。だが上手くいけばこれから濡れ場が見れるかも…。わくわく…。


 こんな現場を思春期の俺がスル―なんて出来る訳ないでしょ? 今後の人生に役立てるためにも学習せねばなるまい。


 どのような雰囲気からエッチが始まっていくのか、そして女の子はどうされると喜ぶのか?

自分の恋愛に生かせる良い勉強となる。……… 言っておくがこれは覗きではない。学習である。

でも何でだろ? 学校の勉強では後ろしか向こうと思えないのに、この勉強はガッツリ前向きにのめり込める。



 あ、そうだ。家に帰ってから復習しないといけないから………

スマホを起動させてと…よし、撮影準備完了。 もう一度言っておく。これは学習のためである。エロではない。


 だいたい公衆の面前で濡れ場を展開するということは一般公開しているんだからそれを鑑賞しても何ら問題は無い。


(だが皆さんは絶対にやらないように。これはあくまで俺個人の脳内解釈です。)



 というわけで……撮影開始。

先程から見ているが雰囲気的に彼女の方が積極的な感じ。つないだ手を動かすたびに彼ににじり寄って行っている。


 どっちかってーと彼氏の方が押され気味な感じだな。

なんて積極的な彼女。きっと彼女の方が彼氏にべた惚れなんだろう。

あのニヤついてデレた彼女の表情……それだけ彼氏のことを愛してるんだな。(ほっこり)

でもその顔ヤバいっすよ…。



……それからハチミツの糖分はどんどん上昇していき……



 あ~ッ…彼女は彼氏の頬に手を添えて……彼氏の顔をガッツリ固定してからの……熱~いチューによる攻撃。もう彼氏はメロメロ。完璧に堕ちたな、あの彼氏。 あの女やりおる。何て恐ろしい娘……


 これだけ積極的な彼女。ここで止まる筈もないだろ。ということは……次はあれしかない。

―――彼女の二子山を使った彼氏攻略作戦


 あのけっこうでかそうな彼女の二子山を彼氏が揉み揉み……もしかしたら白熱して服が捲れあがって生の二子山を拝むことができるかも…。 もう俺っち心臓バクバク。 普通にAV観てるより興奮…ごほん、学習です。



 さぁ~ 盛り上がってきたぞ~ ……ってやば。スマホのバッテリーが……ここまでか。


 さてさて………どーしよ。

このまま見学しててもいいのだが……さすがにこれ以上こんな公園でエッチを進行させてたら他の誰かに撮影されて脅されて…… そんな危険もあるよな。みんながみんな俺みたいに善人じゃないんだし。(俺は善人アピール)


―――仕方がない。何となく誰かに見られちゃうよって危険を教えてあげようか…


…………………。


 やっぱ止めとこう。盗撮…ゴホン勉強してたのがばれたら不味いしな。それに二人の逢瀬を邪魔するのも無粋だし…。




 スマホをポケットにしまって。 ばれないように音を立てずに雑木林を出て…っと。

ん~んッっと背伸び。 ずっとかがんでたんで凄い解放感が味わえた。ちょっと清々しい気分。


さてさてあのカップルは?……


 今は落ち着いている雰囲気だな。しっかり恋人繋ぎは継続中だけど……

けどマジに勉強になった。あーいう雰囲気の時は彼女も結構期待してるってことか。俺もあの彼氏と一緒で照れ屋さんだからなかなか積極的になれないんだよね。


 さっきの雰囲気、…あの状況は彼女も二子山を攻略して欲しいと誘っていた。外から見てる俺にはよく分かったけど。だが当事者である彼氏はテンパってそれどころじゃないって感じか…。


 ホント、ヘタレな野郎だな。……俺と同じで。 

俺ら男ってさー、口ではエロいことばっか言ってるけど、いざってなったら緊張してなーんもできねーもんな。触りたいのに触れない…… わかる。わかるよ…彼氏。



 人の振り見て我が振り直せ…か。

そうだよな。やっぱ外から見てたらヘタレが良くないのは分かった。男ならガツンとやらねば…。


 彼女だって期待してるのに男があんまりグジグジやってたらイラっと来るよな。俺も気を付けないと…。


皆からは彼女がいるというだけで「幸せ者が」とか「このリア充が」とか言われるけどね、彼氏ってのも結構苦労が絶えないもんなんだよ。


 声を大にして言いたいわ。いつも彼女の機嫌をとんないといけないし…。

何して欲しいのか直接聞くと“察しろ”とか“空気読め”とか言われちゃうし。マジ泣けてくる。

でも今日は勉強になった。やっぱ実践を見るのが一番の学習だな。


◇ ◇ ◇


 今は4月の下旬。

高校2年生に進級したばかりの本郷ほんごう修二しゅうじには半年前から付き合っている彼女がいた。


 彼女の名は山下やました理沙子りさこ

友達からの紹介により付き合いが始まったが、流石に半年ともなってくると二人の関係も進展していくことになる。


 だが修二は積極的な彼女に対してどうしても前に進めない自分に悩んでいた。

―――このままではいかん……

分かってはいるが、どーしたらいいものか……。



 家に帰ってきて晩御飯を食べて、それからベッドでごろんと横になり寛いでいると、彼女である理沙子からラインがきた。


『明日は一緒に帰れるんだよね?』


そーいえば明日はそんな約束してたな…。


『もちろん大丈夫だよ』


『だったらちょっと何処かへ寄り道したいな~♡』


『俺もそう思ってた』


思って無かったけどね。こう言っとかないと後が怖い。


『修二もそう思ってたんだ。やっぱり気が合うね、私達♡』


『当たり前だろ…』


気が合う →訂正→ 気を合わせている。 いつも苦労してます、はい。


『明日は少しでいいから二人っきりになりたいな~』


彼女からのお誘いか……。よし、俺も男だ! 決断した。


『なら家に来るかい?』


『え、いいの?』


『どーせ両親が帰ってくるのは遅いし……大丈夫だよ』


『行く行く…絶対行く! 嬉しい。久しぶりに二人っきりになれるんだね♡』


…………。


 と言うわけで明日はいよいよ…… だな。

やべー、今から緊張してきた。ドキドキ…。

だがもー迷うまい。気合を入れよう。……アレも仕入れたことだし。




 そして次の日の放課後。

理沙子を連れて俺は家に帰ってきた。

今までに何度か家に来たことがある理沙子だったが、今日はちょっと緊張している様子。

一緒に帰って来る時も俺の腕にしがみ付いて、俯き加減で頬を赤くしながらいつもより大人しい感じだった。


 二人とも妙に口数が少なくなり、互いに意識していることがよく分かった。


「どうぞ、中に入ってね…」


家について玄関の扉を開けると俺はそう言って理沙子を中に招き入れた。


「……ど、どうも… お邪魔します」


誰もいない家なのだが、理沙子は少しおどおどしながらそう言って靴を脱ぎ家に上がる。


「先に部屋に行ってて。飲み物でも持っていくから…」


「う、うん… ありがとう。先に上がってるね…」


 ちょっと照れた様子ではにかみながら理沙子は楽しそうに俺の部屋へと向かっていく。

キッチンでコップを2つ用意してジュースを注ぎ、それをもって俺も自分の部屋へと向かった。



 部屋に入ると妙にもじもじしながら理沙子はテーブルの傍にちょこんと座っている。

ちょっと気が強くて行動的な理沙子にしては何故か今日は大人しい。そんな理沙子の態度を見ると俺は余計に意識して気持ちが高ぶってしまう。


 取り敢えずテーブルにジュースを置き、理沙子の前に差し出す。


「あ、ありがとう… 修二…」


 差し出されたジュースに一瞥もくれず、俺の顔をじっと見つめる理沙子。

ゆっくり理沙子の隣に座ると、理沙子は俺の手に指を絡ませてくる。すぐ後ろには俺がいつも寝ているベッドがある。


 俺を見つめる理沙子の顔は紅潮し目は少し潤んでいた。やがて理沙子はゆっくり俺ににじり寄り、ぴたっと身体をくっつける。そして顎を少し上げ、可愛い唇を俺の方へと差し出した。


 先ずは優しくキスをして、それから彼女を抱きしめ、徐々に彼女の体に触れていく…… これが手順だろう。


緊張する。もう口から心臓飛び出しそう。だがやらねばなるまい。


…………いよいよか


俺は意を決して理沙子を見つめ、真剣な表情で言った。



「理沙子、俺達は今日で別れよう……」


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