053
俺はダッシュで学校に向かってなんとか遅刻せずに済む。
「はぁはぁはぁ。ぎ、ぎ、ぎ、ぎりぎりセーフ」
すごく息をあげながら教室のドアを開けると桃田さんが寄ってきて
「どうしたの仁君。こんな遅いなんて珍しいね。いつももう少しくらい早いのに」
「ち、ちょっと。寝坊しちゃって」
俺が言うと桃田さんは顔を近づけて
「大丈夫?仁君?手握って仁君の席まで連れてこうか?」
「だ、大丈夫だよ。桃田さん」
はぁはぁ吐息をあげながら言うと桃田さんは俺の手をとり
「ほら。そんなに疲れてちゃ自分の席まで行くのも辛いでしょ。私が手を握ってつれてってあげる!」
桃田さんはドヤ顔でいい、俺はそれを見て疲れていたのが吹き飛ぶような笑顔にやられていた。
俺は自分の席まで桃田さんに連れてきてもらい席に座ってぐったりする。数分後に先生が教室にきて出席確認をとる。
「今日の休みは柏木しか聞いてないが他にもいないかー」
先生が言うと、桃田さんは挙手をして
「先生!なんで凛ちゃん休みなんですか!」
「凛ちゃん?あぁ。柏木か。なんでも家の事情らしい。よし。柏木以外は来ているな。では数分後に授業を始める。皆教科書等を用意しておくように。では朝のホームルームを終わる」
先生が教室から出ていくと桃田さんは俺に近づいて
「ねぇねぇ仁君。凛ちゃんがなんで休みか知ってる?」
「う、うーん。し、知らないなぁ」
俺は桃田さんの反対方向を向いて言う。
「なんで反対方向向くかなぁ。怪しいなぁ」
「あ、あ、怪しくなんてなぃよぉ」
桃田さんが俺と顔を合わせようとするたび俺は顔を反対方向に逸らす。
「ねーねー。こっち向かないと唇が触れちゃうよ」
「え?何言ってるの?そんなわけ」
俺が振り向くと本当にギリギリなところに桃田さんの顔があって、唇が触れそうだった。
ドキドキドキドキ!
し、心臓がもたないぞ!これは!
「やっとこっち向いた!で?凛ちゃんのことはわかりまーすか?」
「わかりまーせん」
「おっけーでーす」
適当にかえすとわりと納得した桃田さん。え?
「いいの?これで?」
「だって知らないんでしょ?私は仁君を信じてるからそれ以上は聞かないよ!」
うっ!その優しさが心臓に響く。可愛いうえになんて優しいんだ桃田さん。思わず泣きそうだ。
俺が顔を下に向けていると桃田さんはしばらく黙って
「仁君、お昼に2人で話さない?」
「え?き、急にど、どしたの。い、いいけど」
桃田さんはそこで話をやめて授業が始まり、俺は姉のことで頭がいっぱいで授業内容があまり頭に入らなかった。




