ジャマモノ
「オ帰リナサイ」
セブンが玄関でみんなを出迎えた。
「ダレデスカ?」
リョウベエがセブンを見ておどろく。
「セブンっていうのよ。あなたが入院したんで、レンタル会社から来てもらったの」
ママさんがセブンを紹介した。
「ヨロシク、セブンデス」
「ボクハ、リョウベエ。コチラコソ」
あいさつを返したが、リョウベエはいい気がしなかった。一時的とはいえ自分がいない間に、代役のロボットが家にいたからだ。
「サア、仕事ダ、仕事ダ」
すっかりはりきっているリョウベエに、
「リョウベエ、オマエには休養が必要なんだ。しばらくジュンの部屋で休んでいなさい」
パパさんが命令する。
リョウベエがジュンの部屋に行くと、パパさんはママさんにだけ、ロボット病院の先生から聞いた話をこっそり教えた。
「少し休ませないとな」
「これまでリョウベエ、がんばっていっぱい働いてきたんだものね」
ママさんはうなずいて、リョウベエのいる二階を心配そうに見やったのだった。
そのころ――。
リョウベエは掃除を始めていた。
「コンナニ、チラカシテ」
「休んどけって、パパが言っただろ。セブンにやらせるんで、リョウベエはベッドで寝てろって」
ジュンにしかられて、リョウベエはしかたなくかたづけの手を止めた。
「おとなしく寝てるんだぞ。オレ、セブンとサッカーしてくるからな」
「ボクモ、ヤリタイナ」
「リョウベエは休んでなきゃあダメなんだって」
ジュンはそう言い残し、バタバタと階段をおりていった。
しばらくの間。
リョウベエはベッドで横になっていたが、だんだんいてもたってもいられなくなってきた。とても寝ている気分ではなかったのだ。
ジュンの部屋を出て台所に行くと、ママさんが夕食のしたくをしていた。
「ママサン、オ手伝イヲシマス」
「あら、休んでなきゃダメでしょ」
ママさんが赤ちゃんをしかるように言う。
「モウ、ダイジョウブデス。コンダテハ、ナンデスカ?」
「リョウベエはいいのよ。あとでセブンにやってもらうからね」
ママさんもお手伝いをさせてくれない。
次は居間にいるパパさんに、肩もみぐらいならと申し出た。
「いや、いいよ。リョウベエは休んでろ」
パパさんにも断られてしまった。
がっかりしていると……。
公園から帰ってきたのだろう、台所からジュンの声が聞こえてきた。
「セブンって、サッカーうまいんだよ」
「あら、よかったじゃない。じゃあさっそく、お料理を手伝ってもらおうかしら」
「きっと、おいしいのを作ってくれるよ」
「オマカセクダサイ」
セブンのはずんだ声もする。
――セブンナンカニ、負ケルモンカ。
リョウベエは台所に行った。
「ママさん、オ手伝イヲシマス」
「料理は、セブンにまかせてあるの。あなたは二階で休んでて」
「そうだよ、寝てなきゃダメじゃないか。ほら、オレの部屋に行くんだ」
ジュンに背中を押され、リョウベエはいやいや二階に追いやられてしまった。
――ボクハ、ミンナノジャマモノ。
リョウベエは一人になると、ひどくむなしい気持になったのだった。