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エピローグ

この作品は自衛官の特殊部隊な転生物語を練り直したものになります。

誤字や読みづらい箇所がありましたらご指摘ください。

ズドドドドッッ、ガガガガガ

 かなり遠くで銃声が聞こえる中、俺は森の中に密かに隠れていた。

 

 2037年5月16日、東アジア統合連合国の日本国攻撃によって始まった、日東戦争。日本は自衛隊を正式に軍隊とし日本海沖では防衛線が、東アジアでは東アジア統合連合国の戦力を削ぐため自衛隊が攻めていた。

 現在は2037年9月10日午後21時30分、俺は自衛隊特殊作戦群の隊員として東アジアで戦っていた。隠密部隊の狙撃手として。自衛隊は数で完全に押されている状況だ。敵軍およそ二万に対し自衛隊は五千という圧倒的不利な状態で交戦に臨んでいた。 

 そんな中、俺は敵の指揮系統を混乱させるため司令部と思われるテントを探し司令官を狙撃することが任務だった。敵軍の拠点は山間部にあり視界はほとんど取れない、木々の隙間を縫うように慎重に移動し狙撃ポイントを探す。俺の持つM24狙撃銃の有効射程はおよそ1500m、今いる地点は敵拠点からおよそ4000mでかなり離れている。しかし、これ以上近づいてしまえば的の見張りに気づかれてしまうため、俺は4000m以上離れたところから狙撃を成功させなければならない。更に隠密作戦のため観測手はいない。普通の狙撃手であれば不可能に近いだろう。しかし、特殊作戦群に入り鍛え抜かれ狙撃の腕を認められ、当時上層部しか知りえなかった優れた狙撃手のみが入れる部隊、特殊隠密作戦狙撃班にスカウトされ更に磨きのかかった俺の狙撃技術ならば可能だ。

 

ジジッ、ジジジッ

 山の中腹に敵拠点を見下ろせる狙撃ポイントを発見したところで左耳から無線機のノイズが聞こえる。


「こちらアルファ、フォックス状況報告、送れ。」

 本部のオペレーターが状況報告を催促してきた。


「こちらフォックス、現在ポイント38.120にて狙撃準備を開始、送れ。」

「フォックス、準備出来次第対処せよ、送れ。」

「了解アルファ、行動に移る、終わり。」

 通信を終了し、俺は背中に担いでいたケースからM24のパーツを取り出し組み立て始める。周りを警戒しつつ組み立てを完了し、バイポットを展開して地面に伏せ的拠点の方を見る。テントがいくつもある中、一番大きなテントにスコープの照準を合わせる。

 このスコープは日本の企業が独自に開発したサーマルスコープで、物体を透過して生物を視認できる。たとえ4000m離れていようとスコープに写っている物体の熱エネルギーを感知し、内蔵されているAIが生物か否かを判断し表示させるという日本の最先端技術だ。ただ、普通のスコープより大きくかなり重いのが欠点だ。

 テントの中には十一人おり六人はコンピュータの前座っている。他五人は楕円形の机の周りに座っている。おそらく机の周りに座っているうちの誰かが指揮官だ。

 およそ30秒ほど様子を見て、俺はM24のボルトハンドルを引き弾を装填する。ハッと息を止め、五人のうち上座にいる一人に狙いを定め引き金を引いた。


パァンッ

 

 サプレッサーにより減衰した乾いた音が周囲に響く。間髪入れずにコッキングし、右隣にいた奴に狙いを定め再び引き金を引く。


パァンッ


 瞬時にコッキングし様子を見る。どうやら二人とも命中したようだ。他の人間は机の裏に隠れている。しかし、このスコープがあれば遮蔽物に隠れようと弾が貫通するものであれば関係はない。次々に机裏にいるターゲットを狙撃、排除を完了し本部に報告する。


「こちらフォックス、対象の排除を確認。これより撤退する、送れ。」

「こちらアルファ、フォックス、撤退を許可する。ポイント30.110にてエコーと合流し帰還せよ。復唱よろし、終わり。」


無線通信を終了し、すぐさま撤退の準備を始める。指示されたポイントは山を迂回しなければならないため、およそ6000m移動することになる。俺はケースを担ぎ、足音を立てず素早く移動する。ポイントまであと数分というところで異変に気付き、とっさにP9とナイフを抜く。


パンッ、パンッ、パンッ


茂みに隠れ、何が起きたのか確認する。20mほど先に敵軍の兵士6人が何かを囲むように各々銃を構えていた。その真ん中には合流するはずだったエコーが血塗れで倒れている。俺は込み上げて来る怒りを抑えようとするが敵兵への殺意が漏れ出てしまう。


“しまった…”


 そう思った瞬間敵の一人に気づかれてしまう。すぐさま俺は茂みから飛び出し、気づいていない兵士を死角にその兵士を背中からナイフで刺す。気づいた兵士達が発砲してきたので刺した兵士を盾にし俺もP9の引き金を引く。二人を射殺し、盾にしていた兵士を一人に投げつけもう一人に接近し顎に肘打ちを食らわせる。最後の一人の腹部に弾丸を打ち込み、肘打ちによって地面に伏していた兵士の頭部を打ち抜き射殺、盾にしていた兵士の下敷きになっていた奴に銃を向け俺は口を開く。


「終わりだ。」


バンッ


 敵兵を全員倒しエコーを確認する。エコーは頭部に弾丸を受けており絶命していた。俺は唇を噛み締めながらエコーの瞼に手をかざして閉じる。


”俺がもう少し早く到着していればこんなことには…”


カチッ


 背後で金属が擦れる音が不意に聞こえる。振り返ると腹部から血を流した兵士が不敵に笑っている。


「急所は外していないはずだが、貴様よく立っていられるな。」

「ブラックアサシン、貴様もここで終わりだあぁぁああ!!!」


 兵士は俺に向かって突進してくる。P9を構え発砲し兵士は地面に倒れこむ。すると、俺の足元にグレネードが転がってくる。


”ヤバっ”


ドゥゴーン


 咄嗟に離れようとするが間に合わず爆発に巻き込まれ、痛みを感じる間も無く俺の意識は途切れた。



歌が聞こえる。賛美歌のような歌が。俺は死んだようだ。深層意識の中で女性の歌声が響いている。どこかに引っ張られていくような感覚。



ユル ベオーク パース エオロー エオー ウル オセル ギューフ ニード 


ティール ユル



 歌が終わる。俺の中にはなぜか高揚感と喪失感が押し寄せる。すっと意識が戻され風が頬を撫でる感覚と木々のざわめきが聞こえてくる。目を開けると俺は見知らぬ森の中にいた。


“俺はいきているのか?”


 自分の体に異常がないかを確認する。グレネードの爆発をもろに受けたはずなのに全くの無傷だ。しかし、身につけていたギリースーツと無線機、腕時計がなくなっている。


”とりあえず現在地を確認しなければ。”


 そう考え見晴らしが良さそうな場所に移動する。すでに日が昇っているため敵兵に見つからないように気配を消しつつ木々の隙間を疾走する。周りを一望できる高台に移動したところで俺は愕然とした。かなり遠くにだが一本の木が天を貫いているのだ。


「おいおいなんだよあれ、ユグドラシルかよ!?」


 ゲームやアニメ、漫画に出てきた世界樹を彷彿とさせる風貌に思わず声が出てしまう。すると、背後からものすごくでかい気配を感じる。俺はP9を構え振り向くがそこにはなにもいない。集中し気配を探ってみると500m程先に巨大な象のような生き物が蠢いていた。しかし、象にしてはでかく鼻が三本もある。更に周りには小さいワイバーンのような生物も飛んでいる。

俺は夢でも見ているような感覚に陥り自分の頬をつねる。痛い。確かに痛い。つまり夢ではない。

 

 どうやら俺は異世界に来てしまったようだ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

作中に登場するM24とは自衛隊がしようしている狙撃銃です。また、P9は9m拳銃です。

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