125話 夢どころじゃない
一「おかしい。」
ジョー「どうしたの?」
一「あいつ1週間サボってやがるぞ。」
ジョー「なんだって!? ちょっとぶっ○してくる!」
主「応援してくださいました皆様。大変遅れてしまいました。すみません。理由は後書きにて記入します。」
「シネー」「ギャー」
一「じゃあな。世話になった。」
ジェノサイド「いえ、こちらこそ。」
土産に茶菓子入りの箱を貰い、街に戻る。
クランの寺に戻ってこれでも食べながら資料でも読もうかな。
ばはむーと「それじゃあ行くぞ。」
そう考えながら自分達のクランに向けて歩いていると、隣にばはむーとがいる事に気付く。
一「全く……何してるんだ。お茶会は終わったろ。」
とりあえず何をしているか聞く。
ばはむーと「今はジークがいないから暇。だからついてく。」
一「暇潰しだったのか。まあ良いけど。」
とりあえず俺は寺に戻る為に、ばはむーとと雑談しながら歩く。
ばはむーと「この世界の魔法について……」
一「確かにそういう考えもあるよな。俺は……」
普段話さない人との会話は慣れないが、その分様々な事を学ぶ事ができる。
ばはむーとは火系魔法に特化した純粋な魔法使いで、火のプロフェッショナルのような存在だ。
また、俺の様なオールラウンドに、攻撃防御回復支援妨害なんでもやるタイプではなく、純粋に攻撃系特化にもしているらしい。
ばはむーと「私の奥義、【フレイムブレス】で火が効かない相手以外は倒せる。」
正直無茶苦茶なやつだが、それで今まで片っ端から敵をねじ伏せ、バレンタインの大会個人戦では2位になる程の強さを誇る。
というかうpが負けた時点で相当強い事は確定しているのだ。 圧倒的な炎で弾丸を燃やし、龍に変化し憤怒の力を使ってうpを倒したらしい。
憤怒の力ってダメージを受けた分与えるダメージを強くする的なやつじゃなかったか? あんまり覚えてないけど……
閑話休題
まあ、色々と話を進めて行く中俺達は改めて7つの大罪の能力格差について考えながら歩く事数分。
ばはむーと「じゃあ、私はこの辺で。」
一「ああ、またな。」
ばはむーととは行く途中で別れ、俺はクランに着く。
一「さて、読むか……」
アイ「はむはむ……」
アイを呼び、寺でゆったりとしながらスキルの情報資料を見る。
ちなみにアイは机の上で貰ったお菓子を食べている。……どうやらクッキーが好きな様だ。
一「うーん、やっぱりすごいな……」
パラパラと簡単に斜め読みをする。
そこには、そもそものスキルとは何か、スキル毎の覚え方の違い、種類や仕様などなど……
一「おっ、これは……必要だな。」
俺はその中でも気になるスキルを発見する。
それは、スキル【特殊】より「複操術」という物だ。
複操術とは、武器を2個以上装備する事ができる様になる、というシンプルかつ超強いスキルである。
アイ「一さん、何か良いスキルでも見つけられましたか?」
このスキルの取得方法を見ていると、アイから声がかけられる。
一「いや、ちょっと面白いスキルを見つけてな。」
アイに複操術の事を伝える。
アイ「ああ、複操術ですか。中々に強力なスキルですね。」
そうそう、という風に頷くアイ……ん?
一「ちょっと待てアイ。知ってるのか?」
聞くと、アイは頷き答える。
アイ「はい、マクリーが使ってますから。」
マクリー……あの大会の時の水色の妖精で、前ゲームの主要キャラクターの1人だったな。
確かゲーム内でダガーを数本浮かせて攻撃していた様な気がする。
一「アレはこのゲーム内で装備判定って言えるのか?」
アイ「そうですね……妖精は基本的に魔力で物を持ちますし、ステータスも増えますから、装備してるで良いと思いますよ。」
なるほど……?
一「いや、ちょっと待って? 魔力で持つって何?」
全く知らない用語が出てきたんだけど。
MPで持つってどういう事だ? 魔法みたいなもんか? ただそんな魔法はなかったと思うんだが……
アイ「え? 一さん普段からやっているじゃないですか。 ソレ。」
アイが俺を指……いや、違う。
俺の、大体右上くらいに浮いている、とある武器を指差す。
一「え? この太極図?」
アイ「はい、それと同じ要領でやればできますよ?」
おいおい、待てよ? そもそもこの太極図、装備した時に勝手に浮いてきたんだぞ? 一体どうやって……
一「うーん、わからん。一旦装備から外すか。」
とりあえず装備から外すと、太極図は垂直に落下するので、右手で掴む。
アイ「……もしかして、その太極図は装備している時には何故か浮いている、とか思ってましたか?」
一「ああ。」
装備、それはインベントリの装備欄から操作できる物で、それ以外に装備をいじれる所はないはず。
例えば武器を持つだけでは装備にならないように。
武器を持って振り回していてもステータス補正がかからないように。
本来は装備、というシステムによってステータスを変化させる行為、その結果起こったのが太極図の浮遊だ。
一「改めて考えるとおかしいな。 装備って。」
アイ「そうですか?」
うーん……
一「いや、これ以上考えると頭がおかしくなりそうだ。やめやめ。アイ、その魔力で持つやり方を教えてくれ。」
アイ「はい、わかりました! ……と、言いましたけど、私が手伝いできる事はそこまでありません。」
アイが申し訳なさそうに呟く。
一「いや、手伝ってもらえるだけでありがたいよ。」
できない事をできる様にしてくれる。それだけでなんと有難いことなのだろうか。現実じゃ無理だね。
アイ「ありがとうございます。それでは、始めますね。」
そう言って始まる、魔力で物を持つ講座。
アイ「まずは、目をつぶって空を飛ぶ時みたいに、体の魔力を意識してください。」
アイの指示通り、目を閉じ、飛翔する要領で、体の魔力を確認する。
一「ああ、いつも通り、血液の様に循環しているな。」
アイ「そうですね。それでは一旦そのままの状態で、意識し続けてください。」
ふむ、そうか。
魔力を意識する。それは、体の中を循環している。
つま先、脚、腰、腹、臓器、胸、腕、指、首、頭、羽、翼……
待てよ? おかしいな。
俺の体には、普通の人には無い、羽や翼がある。
それは別に良いことなのだが、改めて考えると、この体を巡る魔力の存在がまず違和感を感じる。
改めて考える。どうやって体の中を循環し、なぜ俺は体内の状況がわかるのか。
内臓や血管を自分の力だけで理解するには、おそらく不可能だろう。
しかし、分かる。
自分の内臓の場所が、自分の血管の位置が、血液がどう流れているのかが。
分かる。
アイ「一さん?」
一「ああ、ごめん。ちょっと集中してた。」
アイ「あっ、はい。」
ああ、待てよ、落ち着け。今はそんな事を考える時間じゃない。どうやって魔力で物を持つかだ。
アイ「では、魔力をしっかりと意識しましたね?」
……ああ、意識した。している。
アイ「それでは、上に向かって無属性魔法のマジックボールを撃ってください。」
マジックボール、それは無属性魔法で最初に覚える魔法の一つだ。
俺は、言われるまま真上に向かってマジックボールを撃つ……
一「俺は今、何を指先から出した?」
俺の指から魔法を撃とうとした瞬間に、俺の指から魔力が流れ出て行く。撃った瞬間では無く、撃とうとした瞬間だ。
そう、まるで指先から血が流れる様に。
それは、円形にかたちどり、真上へ飛んでゆく。
真上に当たった魔力は、天井に当たった後、霧散する。
一「さっきのが魔力が体から抜ける感覚か。」
アイ「そうです! それが外に魔力が出る感覚です。」
魔力が外に出る感覚。そして、外に出た魔力を感じる。
重要なのは外に出た魔力はしばらく感覚として知覚できた事だ。
出し方はわかった。おそらく魔法に頼る必要はない。
手の平から、ゆっくりと魔力を出してゆく。
アイ「は、一さん?」
一「あとはどうやって操作するか…….」
アイ「えっ、もうそこまで!?」
魔力が太極図の周りを包む。
一「こっから……どうするんだ?」
うーん、魔力は太極図の周りを包んでいるだけで、そこからどうして良いのかわからない。
アイ「一さん、その太極図をどうしたいですか?」
俺はこの太極図をどうしたいか?
浮かせる? 違うな。浮かせるのはそう見えている偽りの結果であることがわかったんだ。
これを持つ? そんな曖昧な考えで持てるのか? そもそもどうやって持つ気なんだ?
摘む? 握る? なんか違うな。 そもそもこれを持つ時俺はどうやってる?
もっと良く考えろ。これは太極図とは言うが、実際は二つの勾玉だ。摘むと落としそうだし、握ると石同士が傷つけ合ってしまう。
ならばどうしようか。
一「これを……手に乗せる?」
俺は、太極図を手の平に乗せて持ち上げる考えがよぎる。
手の平サイズの太極図は、魔力によって右肩あたりの位置まで持ち上げられる。
アイ「あっ! やりましたよ一さん! 持ち上がりました!」
そうか、これが、魔力を操る感覚か。
一「おお、これが……」
俺はアイを魔力で撫でる。
アイ「は、一さん? 恥ずかしいです……」
これか、この感覚か。
自分の魔力の、手となる感覚が。
と、そうしていると俺はある感覚に気づく。
俺は先程アイを撫でたが、この時、目は開いてなかった。
アイを撫でたのはほとんど無意識レベルだったが、場所はわかっていた。
自分の魔力で、周りの魔力が見える事に。
自分の魔力で、周りの物が感覚的に理解できる様になっていた。
【スキル【特殊】魔力操作を入手しました】
【スキル【特殊】魔力感知を入手しました】
【スキル【特殊】装備理解を入手しました】
すみませんでした!
繁忙期+コロナワクチン+熱中症+展開変化で投稿が遅れてしまいました!
次回から……は、まだ繁忙期なのでまだわかりません。申し訳ないです。
せっかく微鬱脱却したのに……
次回、夢見気分




