122話 少年少女と検証
ジョー「あいつまた遅れてやがる。何してるんだ。」
一「わからん。とりあえず俺達はあいつが書くのを待つしかないからここで飲み物でも飲もう。何がいい?」
昇「俺ビールで。」
一「はい麦茶。」
昇「人の話をきけぇ!」
主「すみません。体調不良とネタ改変を重ねていた結果遅れました。次回は治ってるはずです……」
一「とりあえず様子を見よう。」
叫び声が聞こえた方向の窓から顔を出す。
「やめてっ! いやっ!」
「ゲヘヘヘヘ!」
「ヤッチマエ!」
「ギャハハハ!」
砦の下で、黒い蝙蝠のような翼を持つ少女が、白い鳥のような羽を持ち、腹に木製の槍のような物が刺さり、仰向けで目を瞑り倒れている少年を庇うように立つ。
対するは砦で戦った謎生物が3匹。その内2匹は武器を持っている。
というかまたお前らかよ! いい加減にしろ……っていう程戦っても無いけど、もうちょっとバリエーションが欲しい。
一「悠長な事はできないな。」
とにかく状況がヤバいので急いで窓から飛び降りる。
一「おい! 大丈夫か!」
空から少女を呼びかける。
「!? 誰……でもいい! 私達を助けて!」
上を向く少女は俺に向かい助けを乞う。
一「任せろ! ウィンド!」
俺は2人に当たらないように謎生物3匹に当てる。
「グギャッ!」
「ナンダ!」
1匹には避けられたが仕方ない。
先に数を減らす事にする。
一「天魔裁誘!」
風に当たった2匹は体の前面から光を放ちそのまま焼け死ぬ。
「ウワッ! テッタイダ!」
一「ダメだ。ライトショット。天魔裁誘。」
後ろを振り向き逃げる謎生物。
生き残っても面倒なのでさっさ終わらせる為にライトショットを当てて天魔裁誘を発動。当たった部分から光が出てきて焼き焦がす。
一「よし、これで問題はないな。」
それじゃあ、と後ろを振り向くと、今度は怯えた表情でこちらを見る少女。
「あっ、あっ……」
一「どうしたんだ? そいつの怪我がひどい状態か?」
「え、あ、はい、そうです。」
クソ! 怯えてた訳じゃなくて危ない状態だったから青ざめているだけか!
一「ちょっと羽見せてみろ。」
「わかりました。」
そこには怪我は広がったりはしていないものの血が出続けて今にも死んでしまいそうた顔をしている。
一「仕方がない。応急手当てにしかならんが回復させておくか?」
「お願いします! 」
一「わかった。」
俺はとりあえずリピート、デュアル、チャージサークルを発動させる。
一「とりあえず……ごめん!」
「えっ!?」
一「よし抜けた!」
俺はお腹に刺さった槍を直接引っこ抜く。
一「これでいいな。」
「な、なにを……」
心配そうにこちらをみる少女。
「大丈夫だ。心配するな。」
一「「いくぞ! ヒール!」」「「ヒール!」」
ヒールとは、弱回復呪文の1つで傷を少し治してHPを回復させる。回復量はINT参照らしいが詳しい数値はわからない。
これを量と質を上げて唱えたため、傷口はみるみると無くなってゆく。
一「気休めかもしれないが、とりあえず回復はさせておいた。どうだ?」
質と量は増やしたものの回復量がわからない。 これは後で検証するとしよう。
「……大丈夫?」
「……はっ! 生きてる!?」
目を覚ましたのか、周りを確認する少年。
「よかった! 生きてて! よかった!」
「うわっ!」
少女は生きているとわかると、少年に向けてハグをする。
一「じゃあ、俺はここで。」
2人の空間を邪魔してはいけない。
俺はそそくさとその場を 「待ってください!」
去ろうとしたが、少年に止められた。
「助けていただきありがとうございます。」
一「いや、問題ない。 他に怪我はないか?」
一応聞いておく。
「いえ、先程受けた傷以外は無いです。」
「でも生きてて良かった! ほんとありがとう!」
一「そうか。なら 「助けていただいたお礼をしたいのですが。」 あー……いや、いいよ。大丈夫大丈夫。」
この少年は真面目だな……と思いつつも傷が治った先から動くのもアレだろうと思い断る。
「そ、そうですが……」
一「まあ、怪我が治ったと言ってもまだ安静にした方がいいかも知れないし、さっさとお家に帰って休みな。」
「うっ……で、ですが……」
このままじゃ埒が明かないな……
「ねえ、次に会う時にお礼をするのはどう?」
一「え?」
「う……それでいいですか?」
少女の提案に申し訳そうに頼み込む少年。
というか次か……
一「うーん……まあ、いつ会えるかわからないが、次会えたらな。」
「ありがとうございます!」
「じゃあまたくるね! お兄さん!」
2人が去って行く。 さて、次はいつ会える事やら……
一「あ、名前聞いてねえ。」
さて、2人は帰って行ったので俺は検証を始める。
一「まずはこのベッドからだな。」
ヒールの回復量じゃ無いのかって? いやいや、まずはあらかじめ確認したかったベッドだ。
とりあえず寝転ぶ。
一「うーん、まあいいか。悪くは無いな。」
及第点といったところだろうか。個人的に少し柔らかすぎる気もするが快眠に問題は無いだろう。
一「さて、次は……」
俺は倉庫へ向かい、適当な武器を見繕う。
ヒールの回復量じゃ無いのか!! って?
まあ落ち着け。焦る事は無い。
今度はふくろの検証だ。
ふくろ、その見た目はただの茶色い布製の袋だ。
ちなみに大きさは大体45L入るゴミ袋と同じくらいだ。 意外とでかい。
一「ここにある剣を試しに……うわっ。」
まずは適当に剣を袋に入れる。 すると、袋に吸い込まれるように入っていく。
一「何本でも入れられるってこういう事か。これならいくらでも入るな。」
これなら袋に入るサイズの物ならいくらでも入りそうだ。
さて、後は取り出す方法だが……
一「これ、剣はどこ行ったんだ?」
普通に袋の中に手を入れても何も無い。
一「うーん……」
とりあえず袋を逆さまにして振ってみても何も出てこない。
一「どうすれば……剣出ろ!」
……反応は無い。少し虚しくなる。
しかし、反対側に裏返してみるととある文字が書いてある事に気づいた。
一「初心者の剣、かける一、取り出す……これに触れればいいのか?」
俺は取り出すを押すと、剣の柄の部分が袋の先から出てくる。
一「これは……抜けたな。」
簡単に取り出すことができる。思ったよりも簡単だったな。悲しい。
他にも短剣を試しに5本入れると表記が初心者の短剣×5 取り出す×1 というふうになり、取り出すの横の数字を触れば数字が増えその数だけ出せるようになったり、最大の数の後に2回触れば1に戻ってくるなどの仕様も発見した。
一「まあ、ある程度はわかったしとりあえず装備をつけて最後の検証に移るかな。」
俺は、適当にローブと白い魔導書を持ち、長杖と短杖と短剣をあるだけ袋に入れて下へ降りる。
本当は魔導書もあるだけ入れたかったのだが、何故か色が違う本は全部違う種類判定にされてしまった。
仕方がないのでとりあえず初心者の回復呪文書と書かれた物を持ち歩く事にした……というかこれで今度からは鑑定をしていこう。
ちなみに短杖も長杖も、なんなら短剣も使えないがとりあえず持っていく。杖は呪文の消費MP軽減とかありそうだし、短剣はこの後の実験に使用するからな。後……コレはまあ必要な時でいいだろう。
閑話休題
俺は最後の検証へと向かう為、先程殺めたゴブリンの所へ向かう。
ここで検証する事は、ヒールの回復量を調べる事である。
じゃあなぜここなのか。
答えは簡単。俺は部屋を汚したく無かったのだ。
俺は先程入れた短剣を取り出し、手のひらに刃を当て、手を切る。
一「いっ……ステータス!」
自分のHPが1%減っている事を確認する。
一「これで1%かよ!」
俺はもう少し減らす為に手のひらの傷口を更に傷つける。
傷つけるたびに地面は血で汚れ、ステータスの体力の消費量も上昇していく。そして何より、
一「あぁ! いってえ! 思ってた数倍痛え!」
本当に自分の手が切られているような感触を覚える。 いやマジで痛え!
事実数回切るとHPは15%減少している。
一「よし、ヒール!」
俺は手のひらにヒールを唱える。 すると、傷口は開いたままだが僅かに痛みが和らぐ。
そして、持続的に回復し、HPは9%回復した。
一「いやでも痛え! ちくしょう!」
しかし、痛みは止まらない。
一「しかし……やるしかない!」
俺は短剣を右手に突き刺した。
一「うぐっ! フー……フー……まだ、後数回……」
そして、再使用が可能になった時、俺は更にHPを減らし、HPは63%になっていた。
一「フー、フー、……よし、そろそろだな!」
俺は、さっきも発動させたリピート、デュアル、チャージサークルを発動させ、すこし時間を置く。
一「「ヒール!」」 「「ヒール!」」
俺は右手を回復させ、傷口は塞いだ。が、HPは100%までいかず、95%で止まっていた。
一「フー……フー……よし、よし、まだ、まだいける……」
幸いMPはまだ70%以上残っている。HPは満タンにしておきたい。
何より最悪とっておきの秘策を取ればなんとかなるだろう。
そう希望観測をして、俺の辛く長い時間が始まった。
どうも、後書きです。
最近梅雨明けで気温が上下しやすい時期です。皆様の体調は大丈夫でしょうか。
私はなぜか睡眠不足になりました。眠れるけど4時間以上眠れないので頭おかしなります。職場で眠くなるくせになぜなんだ……
まあ、それはさておき、
次回、秘策解禁! ……また不定期に戻すかも知れないっす。




