118話 拠点ゲット! ……ゲット?
主「うわっ、何かテンプレートがついてる!」
一「それ使う?」
主「使わない。」
一「だろうな。」
一「ひっどい臭いだ。」
周りには光で表面が焼け焦げた謎生物が死臭を放つ。
どうやらこの世界では解体のスキルが無くとも死体が残るらしい。まあ特殊スキルがないから妥当だろう。
「グギャッ……」
一「ん? まだ生きているのか?」
天魔裁誘一発だけではダメージが足りなかったか。
体が丸焦げになっていてもなんとか立ち上がろうとする謎生物が1匹だけいた。しぶといな。
一「うーん。……まあ、もう一発何か撃つか。」
何にしようか。また風は芸が無いし、水か土か……
「マ、マテ……」
一「ん?」
お、なんだ? まだ何かあるのか?
「ユ、ユルシテクレ……」
一「……は?」
こいつは何を言っているんだ?
「コロサナイデクレ……」
許せ? 殺さないでくれ? こいつは何を言っているんだ?
一「おい、勘違いするなよ?」
「グッ……」
俺は謎生物の方を見る。少しだけ睨んだかもしれない。
謎生物は俺を見て怯えているように感じた。
一「俺は最初、対話を求めた。」
しかし実際はどうだ、謎生物。
俺はジリジリと近づいてゆく。
一「攻撃を仕掛けてきたのはそっちだろう?」
「グギャッ!」
先に攻撃を仕掛けておいて? 許せ殺すなだと? 寝言言ってるんじゃないか?
俺は逃げようとしていた謎生物の足を踏む。
一「もう遅い。間違いだったんだ。俺と敵対した事がな。」
俺は謎生物に拳を振り下ろし、謎生物を絶命させた。
一「……さて、まだ居ないか確認するか。」
ああ、気分が悪い。やはり直接生物を殺す感覚には慣れないな。
俺は、謎生物の生き残りを潰しておくために、階段を下ってゆく。
一「居ねえ!」
一通り砦の中を回ってみたが何も居ない。
どうやらこの砦にはもう何も居ない事がわかる。
一「やべえ、勢い余って全滅させたが間違いだったか。」
やっちまったというやつだ。
とは言え、やってしまったものはどうしようもないので、逆に考えよう。
砦をゲットしたと。
一「いやいいのか?」
とりあえず入り口から出て、考える。
まずはここが防衛拠点かどうか。
一「……多分違うだろうなぁ。」
違うと思う理由はなぜか。それは砦内の設備が問題だったからだ。
設備が何かあったのかって? 何もなかったんだよ。
一「謎生物が住んでいた形跡はあるけど、それだけだし、ただの建築物なんだよなあ……」
土で作られたただの建築物。これは流石に防衛拠点じゃないだろう……多分、おそらく、きっと。
一「よし。」
あの後、とりあえず仮拠点くらいにはできそうだったのでささっと謎生物の死体を空島の外へと投げ捨てる。丸焦げと出血、そして元々の大きさによって軽々と持ち運ぶことができた。
まあ、数は多かったが、そこは問題はない。正直適当に飛んで行くだけで大丈夫だった。
後は元々の獣臭と流れた血液が問題として残る。
一「とりあえず外に生えている樹木とかで使えそうなやつで匂いは消すとして……」
血はヤバいよなぁ……変な病気とかも持ってそうだし、衛生面で良くないよな。
一「まあ、手についてるけどな、血。」
傷口は無いし粘膜については無いから大丈夫だと信じたい。
俺は右手に着いた血を見ながら思う。
一「……まあ、とりあえず流すか。」
俺は弱水魔法によって使える魔法、ウォーターを使い、目の前に野球のボールほどの水の塊を作り、浮かべる。
ちなみにこれをぶつける事で微量なダメージになる。何かに使えそうだが、単体火力ならライトショットでいいし、範囲火力ならウィンドでいい。
閑話休題
一「これに手をつければ簡単に手を洗えるってわけよ。」
まあ、本格的に石鹸とかはなんとか用意しないとダメだが、簡単に洗うのはこれでいい。
とりあえず血は水で洗い流し、汚れた水は適当な場所へ流す。
一「一応周りを見てみるか……」
周りの探索、及び使えそうな物があるかを探してゆく。
一「うーん、……なさそう。」
10分ほど砦周辺を探索したが、全く無い。いやマジで。
一「匂いが強い草も無いし、木には果実がなっているわけでも無し。どうしようか。」
うーん、どうしようか……
一「とりあえず、血はなんとかするか。」
仕方がない。これだけはやりたくなかったが、致し方ない。
まずは、適当に落ちていた短い枝を複数本重ねて持ち、一旦屋上まで飛び、血まみれの現場へと到着する。ちなみに死体はない為、血だけが残っている。
そして。
一「うおおおお!! デュアル!」「「リピート!!」」「「ウォーター!!!」」「「「ウォーター!!!」」」
片っ端から水をぶち撒け、
一「そして片っ端から枝で擦る!」
……そう、圧倒的に脳味噌を筋肉にしたゴリ押しである。
一「もう……無理……」
2時間は経過しただろうか。体が震えてきた。
一「な、なんで……」
おかしいと思い、自分のステータスを確認すると、HPは問題ないが、MPが残り2%になって、また、魔力欠乏という状態異常になっていた。
一「これは……なんだ? こっち専用の状態異常か?」
吐き気やめまいがする。これはヤバい。もう一歩も動けない。これがまだこういった敵がいない場所で起こっているならともかく、戦闘中や逃走中になってしまったら、おそらく確実に死ぬだろう。
一「まあ、先に知っておいて良かったというか何というか……」
とりあえずゆっくりと時間をかけて休憩をしようかな。
【Dream Dimension からログアウトします】
……目が覚めるとそこはベッドの上だった。
一「おいおい、まさか疲れすぎて寝たっていうのか。」
マジかよオイ。あのまま屋上で寝てたら体壊すぞ。どうするんだよおい。
アイ「ふあ……あ、おはようございます……」
隣にはアイが今目覚めたのか少し眠そうに体を起こす。
一「おはよう。よく眠れた?」
アイ「はい、とてもよい……一さん?」
一「ん?」
アイが俺の顔を見るや否や、困惑した表情をする。
一「どうした?」
アイ「いえ、その……一さんがすこし、少しだけ疲れていたように感じました。」
あー……
一「まあ、寝疲れみたいなもんだろ。知らないけど。」
アイ「そ、そうですか?」
そうそう。……あ、というか時間的にそろそろ昇が家に帰ってくる頃かな。
一「じゃあ俺はそろそろログアウトにしようかな。」
アイ「わかりました。」
俺は一旦ログアウトした。
昇「ふう〜! 疲れた〜!」
ログアウトし、機械を外して枕元に置き、昇がいるであろうリビングに向かう。
一「おお、いた。」
昇「おお、……おお? お前なんか疲れてない?」
一「え?」
なんでまた急に?
昇「いや、なんと無く?」
一「なんだよ気持ち悪い。」
そんな事があるわけ……ないない。
その後、ゲームにログインする事なく、今日は終わっていった。
はい、後書きです。
さて、最近暑くなってきましたね。と、世間話もこれくらいにしておいて、
一君は襲われた上に命乞いをされたためイライラしちゃいました。おおこわ
次回、一旦幻次世界にて。




