112話 Dream Dimension
一「お、今日は俺1人か?」
一「……本当に俺1人だな。」
一「じゃあ……カメラ置いて、と。」
一「おっさんどもがヌルゲーVRMMO。スタート。」
一「……これでいいかな。」
一「ここはどこだ?」
周りを見る。
赤、赤、赤。
何もない、ただ赤いだけの部屋だ。
一「いや扉もないってどういう事だよ……」
いやマジで。何もないのである。
人を呼んでおいて椅子の一つでも……とか思ったりする。
とりあえず椅子の代わりになりそうな物でも床に置いて座って色々考える事にした。
一「ふーむ……傲慢なる魂の持ち主を呼んだって事は7つの大罪関連の何かか? それにしては部屋の色が違うし他のやつもいないけど……」
前回のppの時とは違い、真っ赤な、もう目に悪すぎる真っ赤な部屋。
……いや、ちょっと待てよ?
一「なにか変だな……」
体が変……というか、何かすごい違和感を感じる。
例えば背中に羽が生えていない様な……
一「……無い。 いや、本当にない。 というか服がおかしい! 白シャツにジーパンて……」
他にも色々やってはみたが、どうにもうまく行かない。
どうやらステータスそのものが無くなっている様だ。
何より1人というのが謎を強くする。普通こういうのは誰かいるもんでしょって言う……
一「うーん……」
手詰まりか? そんな事を考えていると、不意に、目の前の壁に黒い扉が出現する。
「来たれ、傲慢なる魂を継ぐ者よ。ルシファーの魂を継ぐ者よ。」
……扉の先から声が聞こえてくる。
低く恐ろしい声の持ち主だが、一体どんなやつなのだろうか。
一「とりあえず行くか……」
扉を開けて中に入る。
そこは暗く、広く、中心に蝋燭が複数置いてある円卓と椅子、そして離れた場所に大きな玉座のある部屋だった。
円卓には、ジェノサイド、ばはむーと、カオスポテト、煙seru、ミル、そしてえーっと……ピリオドだったっけ? たしかその6人が座っていた。
……ただ、違う点として、全員白いシャツとジーパンを付けていたと言う所だ。
王座には誰も座っていない。
ばはむーと「あ、来た。」
ミル「遅いですわ!」
ジェノサイド「いや、一さんだけ明らかに扉の出現が遅かったけど。」
煙seru「なんでもいいけど早く座った方が良さそうだぜ! ケケケケ!」
一「ああ、悪い。」
俺はおそらく自分の先であろう空いている席に座る。
「揃ったな。最強の七柱の悪魔の意思を継ぎし者達よ。そなたらのことをずっと待っていたぞ……」
座った瞬間、玉座の左右から炎が出る。そして、玉座に先程の声の主であろう人物が座る。
「我は大魔王オン・ドグログラ。」
そこには若いながらも圧倒的なカリスマ性とオーラの様なものを纏っている1人の好青年が座っていた。
というかドグログラってなんだ。名前の響きだけで決めただろ絶対。
オン「かつて世界を支配した、大魔王オグラ・ドグログラの子孫である。」
オグラ……すごい日本人っぽい名前だな。
オン「我は大魔王オグラの意思を継ぎ、再びこの世界を支配する! そのためにそなたらを呼び出したのだ!」
一「おー……」 ミル「なるほどですわ……」
パチパチパチパチ……と乾いた拍手が部屋に響く。
ジェノ「あの……質問いいですか?」
手を挙げおずおずと尋ねるジェノサイド。
オン「ふむ、許可しよう。聞きたいことも山ほどあるだろうからな。」
ジェノ「じゃあ失礼して……ここってどこですか?」
確かに。 ここは……というかこの場所がわからないのだ。何よりステータスもないから鑑定とか出来ないし。
オン「この世界の事か? それとも場所の事か?」
ジェノ「どちらもでお願いします。」
オン「わかった。ではこの世界の事から説明しよう。」
と、言うわけで説明してもらう。
オン「この世界はドリーム・ディメンション。そしてここは大陸ンジューマにある私の城、ワッカ、だ。」
……え? 名前だけ? しかも変だし。
ジェノサイド「……もしかして終わりです?」
オン「他に何か言うこともないであろう。」
それもそうだけど……いや、ここはゲームの世界とどう違うとか……色々……
ジェノ「いや……そうですね。まあ、できれば欲しい情報もありましたけど、最悪自分で調べますので。」
え、ええ……
カオスポテト「あ〜……じゃあ、俺も。」
オン「なんだ。」
カオスポテト「いや、世界の支配はわかったんだけど……何故俺たちを?」
煙seru「どうせ自分たちじゃどうにもならないんだろ! ケケケケ!」
うーん……最初に七柱の悪魔と言ってたし、少なくとも人手不足って訳じゃなさそうだけど……
オン「ふむ、その事だが……端的に言うと、敵の勇者達が召喚されるため、そなたらの腕前を見込んだ事や七柱の悪魔の意思を継いでいるゆえ、と言う所だ。」
なるほど?
オン「まず、この世界の住民はある一定の強さまで来てしまうとそこから幾ら体を鍛えようとも強くなれず、強さの限界が来てしまうのだ。これを我々はレベル上限と呼んでいる。」
カオスポテト「ふむ。」
オン「それゆえ、オグラの支配はレベル上限の概念が無いそちらの世界から召喚された勇者に滅ぼされてしまったのだ。」
……なるほど? というかあの世界のレベル上限って無いのか。まあなさそうだけど……
オン「しかし、それから数千年……先代や先先代の力によって今や世界の完全なる支配まで後少しとなった。しかし、またオグラの悲劇を繰り返そうと、とある街がまた勇者を……今度は大量に召喚したと言う情報を聞いた。」
まあおそらくこれが今回のストーリー中の普通のプレイヤーの一大イベントなのだろう。
オン「故に! 我は戦わなくてはならない! 忌まわしき勇者の殺戮! 支配! そして勝利の為に!」
ふむ……まあ、つまりは勇者をどうにかしてねって事らしい。
ミル「なら、ステータスを元の状態に戻してほしいですわ。私はともかく他の方々はステータスが必要でしょうし……」
カオスポテト「それもそうだな。そこはどうなんだ?」
オン「ああ、それについては……」
「それについてはワタシがキミ達に教えよう!」
突如、円卓の真ん中に1人の白い仮面を被った白と赤の衣装のピエロが立っていた。
一「あ、ぴーぴー。」
ジェノサイド「なんだピーピーか。」
pp「いや、キミ達順応能力高くなーい? もっとこう……あるよね? お、お前は! 見たいな……」
いや、正直前回の時に仕切ってたこともあって意外でもなんでも無いんだけど……
ミル「いいから早く教えてくださらない?」
pp「あっ、ハイ。」
ppが説明を始める。
曰く、この世界は夢の世界である為、肉体がそのままある状態で召喚するととてつもない負荷がかかってしまう。
曰く、そのためそちらの世界から召喚するのではなく、一度魂の状態で呼び出し、霊魂の状態でこの世界に固定。そしてこちらの世界で肉体を作るのが一番負荷がかからないらしい。
pp「まあ、という訳でささっと肉体を作ってもらうね! ちなみにこの肉体は一度壊れたら二度とこちらの世界に来れないから注意してね!」
え、ええ……
ジェノサイド「ちょっと待ってほしい。という事はあちらの道具とかは使えない、という事でいいのか?」
オン「うむ、その通りだ。何か問題点があるのか?」
そういうとジェノサイドは絶望した顔で項垂れた。……いや、よく見ると煙seruも絶望した顔をしている。
ジェノサイド「小道具で撹乱する僕の……このボクの戦術が封じられた!?」
煙seru「ヤニが吸えねえとかこの世界終わってんな……」
一「……まあ、2人とも、もしかしたらこの世界で作れるかもしれないから、まだ諦めるには早いぞ。」
俺もあの太極図が使えないのは痛いがそこはなんとかするしか無い。というかむしろ肉体がどうなるか気になる。
pp「じゃあ、とりあえず肉体を作るからこの部屋に入ってもらうね!」
そう言いいつ出てきたのかわからない扉を指差す。
pp「まずは ばはむーと「ちょっと良い?」……どうしたの? 今更怖気ついた?」
ばはむーとが話に割って入る。一体なんだろうか。
ばはむーと「みんな協力してるけど、全員それで良いの? 報酬とかは?」
一「あっ。」
カオスポテト「あっ。」
あっ、やる気満々で報酬の事忘れてた。
ジェノサイド「僕は普通にやる気だったけど……そうだね。ちなみに報酬とかはありますか?」
オン「無論。もしこの世界を支配できた暁には、そなたらをこの世界の王にしてやろう。」
王、王か……
一「王か……ならちょっと遠慮するかな。」
ばはむーと「私も。」
ジェノサイド「僕もかな。」
そういう俺たちにかなりビックリしたオン。まあビックリするだろうな。
オン「え゛っ、ま、まて、王だぞ? 人を支配し、好きな様に生きる事ができる王だぞ?」
そんなことを言われてもな……
一「いやあ、あいにく、王様とか興味がないもんで……」
ばはむーと「常にNo.2以下が良い……」
ジェノサイド「王になった所で特にメリットがないんだよ僕達3人は。少なくとも、一も僕もあっちじゃ支配者みたいな事やってるし。」
いや、クランマスターは違うだろ……違うよな?
オン「な、ならば……よし! 金……は持ってそうだし、力……もあるし……」
あ、悩んでる悩んでる!
ミル「ばはむーとさん、どうしてそこまで勇者討伐に反対しますの?」
ばはむーと「リーダーが勇者だから。」
そう……そうだったっけ? 全部人間じゃなかったっけ……まあいいか。俺の天使から熾天使みたいなもんだろう。うん……
ミル「おう……」
ジェノサイド「ふぅむ……よし、ばはむーと、ちょっと耳を貸してくれ。」
ばはむーと「わかった。」
ジェノサイドがばはむーとにコソコソと耳打ちをする。すると、ばはむーとの顔が徐々に真っ赤になり、一度ジェノサイドのお腹あたりを強めのストレートみたいに殴る。
ジェノサイド「痛いっ! pp! どうなってる! 魂が殴られるのはおかしいだろ!」
pp「いや、殴ってる方も魂のだから……」
閑話休題
その後、全員がやる気となり、とりあえず自分の肉体を作ることとなった。
pp「じゃあ、みんな元の部屋に戻ってね?」
そう言ってどこかへ転移するpp。
一「さて、どんな風になることやら……」
部屋に入ると、そこはどこかで見た……いや、ここアレだ。わかった。
一「もしかしてキャラクリエイトの場所か? でもそれにしては何か変な……おっ。」
待っていると目の前にパネルを持った小さな妖精が現れた。
「よ、ようこそ! "Dream Dimension" の世界へ、私はキャラ作成担当AIでしゅ! あっ……」
「あ、ああ……よろしく。」
これ……どうなるんだ……?
はい、新たな世界、Dream Dimension編です。
一さんは新たなステータスでどう戦うのか。
うp達はどうなった?
……緩やかに期待してください。
次回、新ステータスと新た……な仲間




