95話 キノコと○○焼き
ジョー「お! 主! 遂に!」
主「……遂になんだ?」
ジョー「遂に遂にじゃん、やったー!」
主「……何が遂になんだ?」
ジョー「え、……気づいてないの?」
主「え? ……ちょっと待って、思い出す ジョー「おおおおお怒りを喰らえパーンチ!」ウワラバ!」
しばらくして。
主「な、なあ……いいか?」
ジョー「何? ふふ〜!」
主「多分喜ぶのはまだ早いぞ。」
ジョー「えっ……」
一「さて、アレは前回と一緒だったっけ?」
うp「多分そう……じゃないか?」
バレンタイン翌日。ログインした俺と昇は前回クリスマスの大会の時と同じ様にギルドへと向かう。
一「やっぱり凄い人混みだな。」
うp「今回も多いな。またジョーか?」
俺達は最後尾に並んでそんな事を話していると奥から声が聞こえて来る。
「さあ、みんな! 早く乗って!」
「「「うわあああああぁぁぁぁぁ!!!」」」
「ふう……次の方!」
「全く、オーレちゃんは怖くて敵わねえぜ!」
「「「はっはっは!!!」」
オーレ「なんですって! つべこべ言ってないではやく乗りなさい!」
「「「うぎゃあああああぁぁぁぁぁ!」
……人混みはあっという間になくなり、残すは俺達となった。
その悲鳴の元凶は背中からオレンジのカワセミの様な羽を持っている白いニット? に茶色のスカートで橙髪の女の子がボブスレーで使いそうな大きさの小舟の横に立っていた。
オーレ「あなた達で最後ね。さっさと乗ってちょうだい。」
一「いや、今の聞いて乗る気起きないって……うpこれマジ?」
うp「え?結構楽しそうじゃないか?」
オーレ「あら、よくわかってるじゃない。」
嘘だろこいつら……高速で飛ばされて何が楽しいんだよ……
うpが乗り込み俺もそれに続いて乗る。
オーレ「じゃあ行くわよ?」
うp「いえーい!」
一「はあ、行きた オーレ「ファイア!」」ドンッ!
俺達は前回と同じく目的地へ飛ばされて行くのであった。
うp「いやっほーサイッコーだぜ! なあ一!」
一「……」
うp「ん? 一? ……死んでる!?」
一「いきたくねぇ……」
うp「はじめえええええええええええ!」
一「ふぅ……死ぬかと思った。」
うp「いや、なんか前も言ったかもしれないけど、お前普段飛んでるだろ。」
俺達は目的地の大樹や大きなキノコに囲まれた神秘的な場所に着く。着いた場所には「ようこそ 大森林の里・エモインプキーへ!」と大きく書かれたアーチ状の看板が立てられている。
そこからは左右と後の三方向に分かれていて、右側にはお祭り会場。左にはオークション会場。後ろには出口と書いてある看板が立てかけられていた。
一「いや、気づいたんだけど、やっぱり自分で飛ぶのと人に飛ばされるのは違うわ。」
うp「そうなのか?」
一「いや、車の運転じゃないけどさ、あの……」
そんな事を話しているとモブAからメッセージが届いていた事に気づく。
うp「ん? メッセージか?」
一「ああ、着いたら連絡してだってよ。」
到着したからどこにいるかを教えてくれとメッセージを送る。するとすぐにモブ狂組はオークション会場で出す物のチェック、うぽつは集合場所で寝て太刀魚とポーーはまだきてないらしい。
一「さて、メッセージは送ったし、今から適当に歩くか。」
うp「そうだな。」
俺達はお祭り会場の方へと向かう。
向かうとそこには様々な屋台が並び、アイのような妖精が店番をしていた。……というか、
一「匂いが甘い!」
うp「匂いだけで胃もたれしそう……」
バレンタインということもあって、チョコイチゴ? なるチョコバナナの亜種から、ベビーカステラやマシュマロ、他にも飴細工やらなんやら……しかもそれをプレイヤーや他の妖精も食べ歩きをしているおかげで甘い匂いがプンプン漂って来る。正直きつい。
そんな中、俺達が耐えながらも歩いて行くと、とある屋台を発見する。
一「お、アレ見ろよ。」
うp「アレ?」
俺は里名物、キノコノスミビヤキと書かれた看板がある屋台を指さす。
うp「ええと、椎茸焼きに、エリンギ焼き、それと松茸焼きだって? 秋みたいだな。」
一「うまそうだし、行ってみないか?……というか匂いのせいで甘い物以外が食べたい。」
うp「賛成。」
俺が問う瞬間間髪入れずにOKをもらったので、屋台に向かう。
屋台では、玉のような顔をした妖精が店主をしていた。
「お、らっしゃい、うまいよ?」
一「ああ、うまいと思う。この店のオススメとかあるか?」
とりあえずおすすめを聞く。
「そうさな……今なら松茸だな。」
うp「お、いいねぇ……じゃあ俺はそれで。一は?」
そうだな……
一「俺もそれにしようかな。」
「あいよ。お代は焼いた後でいいから、焼き上がるまで待ってくれ。」
そういうと大きめの松茸二つを半分に切って焼き始める。
「はぁ〜、あのキノコがありゃ、あれにしたんだけどなぁ……」
一「どうした急に。大丈夫か?」
そういうと妖精店主が松茸を焼きつつもため息混ざりに色々話してくれた。
「ああ、最近ここら辺じゃ取れねぇキノコがあってな……それがうまいんだよ。適当に焼いたやつはシャキシャキでしっかりした香りでよぉ……一番いい所は味だな。全く癖がねぇからたまにハマらないやつもいるけど、やっぱり抜群にうまいんだよな……例えるなら癖がねぇ無茶苦茶旨い椎茸って感じだな。それとそのキノコを入れまくってつくる熱燗がもう……くぅ〜! たまんねぇぜおい!」
一「いやどんなキノコなんだよ。」
うp「でもうまそうだよな。」
一人で盛り上がる妖精。
「そうだな……お、焼けたな。一つ一万五千マルクで合計三万マルクだ。……それと後の話が聞きてぇならそこの切り株に座って食ってくれ。」
俺達は一万五千マルクを払い松茸が乗った串を貰って、切り株に座る。
一「なんかいいな。」
うp「高さが丁度いいよな。」
俺達は座って堪能する。
うp「香り強いな。」
一「……うまっ!」
うp「お前もう食ったのかよ。」
香りは強い。味も大きさのわりにぼやけてなく、しっかりとしている。更に食感も柔らかすぎず、程よくシャキシャキした食感。これがうまくないわけがない!
一「うーん控えめに言って最高。」
うp「無茶苦茶満足するわこれ。」
「お、職人冥利に尽きるってね! まあアレに比べりゃ月とスッポンだけどなぁ!」
……無茶苦茶気になってきた。
一「なあ、店主さんよ。ちなみになんで名前のキノコなんだ?」
「あ?言ってなかったか?超越茸って言うな。知ってるか?」
一「……ちょっと待ってくれ。」
俺はうpとコソコソと話をする。
一「コソッ(うp、例のアレ、渡して大丈夫だと思う?)」
うp「コソッ(やめとけ? 大会用で少なかっただろ? 粉とかにしとけ。どうせ百個あるだろ。)」
一「コソッ(えぇ……いや百個あるけど粉もらって喜んでもらえるか?)」
コソコソ話が終わり、俺は妖精店主に振り向く。
一「なあ、混沌茸の粉ならあるけどいるか?」
「粉? まあ、味はあるだろうから渡してくれ。」
そう言ってくれたので、大人しく五百ミリ入る瓶にパンパンに詰まった混沌茸の粉を渡す。
「おお、結構多いな。……どれ一口。」
妖精が一口分粉を食べる。
一「どうだ?」
「……うまい。ただの超越茸が食えなくなりそうなくらいはうまい。」
え、そんなになのか?
「なあ、まだ待っているか?」
一「え、あ、まあ、多少は。」
「スゥー……売ってくれ、言い値で買おう。」
うp「いや待て待て待て、早いなおい。」
「これにはそれくらいの価値がある。」
どうするか。腐る程手に入るからいくらでも渡していいけど……
一「……よし、一瓶六百マルクでどうだ?」
ここら辺にしておこう。無茶苦茶手に入るし、あまり高くてもいい気にならないからな。
「……本当にそれだけでいいのか?こちらとしてはありがたいが。」
うp「ああ、ぶっちゃけダンジョンで無茶苦茶手に入るしな。」
「……ダンジョン産なのか?」
一「あ、ああ、そうだが、なにかまずかったか?」
「いや……超越茸が出てくるダンジョンなんて聞いた事がないが、一体どこに?」
一「ああ、それは俺達のクランのダンジョンだからな。」
うp「いやあダンジョンって便利便利。」
「……わかった。とりあえずあるだけだしてくれ。」
「……すごいな。圧倒されそうだ。」
と、言うわけであるだけ、文字通りあるだけ、百個出した。自分の身長よりも高い粉に対して、妖精店主は若干引いてるが、それと同時にワクワクしているようにも見える。
一「じゃあ、……そうだな。合計六万マルクでどうだ?」
「ありがてぇ、恩に着るぜ。ほらよ、六万マルクだ……そうだ、折角だから他の味付けも食わせてやるよ。」
俺達は六万マルクを貰った後椎茸焼きやエリンギ焼き、さらに味変した松茸焼きなんかも食べた。
「またのおこしで!」
一「いやあうまかったうまかった。」
うp「うまかったな。……ただタレ系とか塩系を食べたから今度はお茶と甘い物が食いたくなってきたな。」
一「ああ、欲しくなるよな。」
キノコを堪能した俺達はシメを探す為歩き続ける。そして歩く事五分。
うp「一、アレどうだ? お茶売ってるし、程よい甘さで、モブ達のお土産にもできそうだぞ?」
俺はうpが指さす方向を見る。そこには和菓子っぽい屋台がある場所が見えた。
一「ああ……なにが売ってるかはよくわからんが、じゃあアレ買ってからオークション会場へ向かうか。」
うp「おう。」
オークション会場についた俺たちはモブ達を探す。すると三分くらいでみんなを発見する。
モブA「おはよう。今日は大会だからな。気を引き締めて頑張ろう。」
一「おお、そうだな。……で、どうした。」
モブ達が床に寝て今にも死にそうになってる。その横ですやすやと布団にくるまって寝ているうぽつ。どこでその布団買ったんだ?
閑話休題
モブA「いやあ、結構な作業があってな。」
モブC「結構疲れたましたよ。」
うぽつ「すう……」
うp「そんなお前らにさっき買ってきたお土産があるぞ。」
モブB「本当ですの?」
ああ、と言いながらインベントリから出す。
一「はい、ここに置いとくぞ。」
モブA「なんだ?」
モブC「これは……」
モブA「今川焼き!」
モブC「回転焼き!」
……え、今川焼きじゃないのか?
モブA「え?今川焼きじゃない?」
モブC「回転焼きは回転焼きでしょ?」
モブE「今川焼き……カスタードは正義www」
モブB「回転焼きは粒あんが美味しいですわ。」
モブA「一、どっちで売ってた?」
一「いや、今川焼きだけど……」
俺達は今川焼きならちょうど焼きたても美味いし土産にしてもいいしとつぶあん、こしあん、しろあん、カスタード、チョコレートを頼んで購入してきた。
うぽつ「ふぁ……あ、兄さん。」
うp「おう、……ま、買ってきたから適当に食べよう。」
うぽつ「そうですね……ふぁあ……」
モブD「大判焼き……」
モブF「二重焼き派はいないんですねぐすんぐすん。」
この後、太刀魚とポーーが加わり名前争いが激化してしまう事になった。
はい、二重焼き派の後書きです。うまい。たまに余って冷凍庫に入ってるやつをそのまま食べるのがうまい。
さて、遂に始まりましたバレンタイン翌日編。
果たして主人公達の運命やいかに。
次回「その前にオークションあるの忘れてない!?」




