97 リッくん御一行様、到着です
一台の馬車がペルナンティアに到着した。
片道一週間の旅を終え、馬車は指定の停留所へと向かう。
「やっと着きました!」
ずっと外を眺めていたミュリエルさんが馬車から飛び降りた。
「はあ、生き返りました。やはり大地に足をついている方が落ち着きます。」
初めての旅行にはしゃいでいたミュリエルさんも3日目辺りから大人しくなってしまった。
理由は色々あるのだが、要は馬車に飽きてしまったのだ。
「うん、とてもいい天気です。最高の海日和ですね!」
「はい、エリオット様。たくさん予定を立ててきましたので、思いっきり楽しみましょう。」
すっかり機嫌を直したカトレアは1日の無駄もないように、ビッシリとスケジュールを組んで来ていた。もちろんその中には、僕の休憩日も込みである。
「ほんとですよー。馬車の中では散々な目に遭いましたからね。もうお腹一杯です。」
「ええ、全くです。私が知らない内にとんでもないのが現れたものです。」
この二人がボヤいてしまうのも仕方がない。
いつもの事といえばそうなのだが、ここに来る間だけでも色々なことがあった。
そう例えば・・・。
◇
「リッくん。妾、少し退屈して来たのじゃ。」
「そうですね、じゃあオヤツでも食べますか?せ、セッちゃん・・・」
「おぉ、いいではないか!では食べさせておくれ、あ〜〜ん♡」
パクッ。
「むぐもぐ。・・うむ、美味い。」
「あはは・・・」
「「・・・・・」」
リッくんことエリオットくんが差し出した焼き菓子に、パクリと食いつくセッちゃんこと雪椿。
「何ですか、このムカムカが止まらないやり取りは?」
「ええ、何でしょうね?このリア充感いっぱいの甘い空気は。」
カトレアとミュリエルは今展開されている甘々空間の中において、それを止めることが出来ないでいた。
本来であればそのような暴挙をカトレアが許すはずもないのだが、旅の途中で一番最初に勝負事を持ちかけたのが彼女だったのだ。
勝負事の内容は様々で、基盤上で駒を動かすもの、カードを使ったもの、心理ゲームなどなど。
元はと言えば、カトレアがエリオットを独り占めしようとした珍しく(?)不純な動機から始まり、そしてその思惑通り作戦は順調だった。
そう、セツハが乱入するまでは・・・。
「今はあの時の自分を殴り飛ばしたい気分です」
「本当ですよ、何てことしてくれたんですか」
「そういう貴方もちゃっかり参加していましたよね?」
「・・今はあの時の自分を懲らしめてやりたい気持ちです」
セツハが参戦した途端に、負ける負ける。
美味しい所は全て持っていかれてしまったのだ。
「「・・・、はぁ〜〜〜〜」」
それ故に二人から深いため息が漏れるのも仕方のないことだろう。
不幸中の幸いか、1時間交代と時間を決めたおかげで、残り後半は実に平和に過ごすことが出来た。
因みにだが、雪椿が希望した雪ちゃん又はセッちゃん呼びは却下され、セツ様と呼ぶことで落ち着いくことになったそうな。




