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恋するメイドさんが不治の病を発動しました。  作者: 染色
第二章 眠れる森の司書と師匠
83/163

83 出来るだけ遠くへ

僕が急いで後を追うも、ただでさえセツハさんより遅いので現場に着いた時にはほとんど終わっていた。

やっと着いたそこは辺り一面が血の海。

その惨状を表現するならば、凄まじいと言うほかない。


全く息を切らした様子のないセツハさんに対して、相手はおそらく15体以上。その殆どが一刀の元に斬り伏せられていた。


「凄い・・・、セツハさん怪我はありませんか?」

「無論。これでは準備運動にもならんわ。」


そう答えたセツハさんは、その言葉通り余裕のある表情だった。


「ネズミがもう一匹紛れているようだが、さっきから椿が煩いので一度この身体を返す。後は適当にやってくれ。」

「あ、はい。・・・はい?」


ツバキさんが煩いって、今の一連を見ていたって事?・・・て事はさっきまでのアレも?

そうして言いたい事だけを言ったセツハさんは、アッサリと引っ込んでしまった。


「・・・・。」

「・・・・。」


残されたのは気まずくなった空気の中、固まる二人。


「・・・・あのツバキさん・・」

「言わないで下さい、主様。後生ですから、見逃して下さい。」

「え、ええ、ツバキさんがそれでいいのでしたら、僕としましても?」


ああ駄目だ、見ていられない。

セツハさんがやらかしたアレコレの全てを、その結果を受け止めきれていないのが良くわかる。


「これはまた凄いな、お二人さん。若いから仕方がないのかもしれんが、ハッスルするのは控えてくれよ?」

「そういうデリカシーのない発言はやめて下さいよ、師匠。思っていても言わないのが優しさじゃないですか。」


騒ぎを聞きつけたフローリアたちも起き出してきた。

しかし、それがトドメとなりツバキさんは崩れ落ちてしまった。これは暫く再起不能だろう。

二人はよほどストレスが溜まっていたのか、言ってやったという満足感と共になんかスッキリした顔をしている。


「そんなに大騒ぎしてました?」

「それはもう。あの古い家であれだけギシギシしてくれちゃえば、目も覚めるというものです。」

「はぅぅぅ・・・。」


ミュリエルさんの皮肉混じりの抗議の声に、ツバキさんが更にシオシオと小さくなったところで、緊急深夜会議が開かれる事になった。

・・・・・。

・・。





黒い影が真っ暗な森の中をひた走る。

光のほとんどない筈の道無き道を、其の者は苦もなくグングンと進んでいく。


(やばいヤバイヤバイ、あれはヤバイッ!)


それだけの技術を持ちながら、其の者には今焦りしかない。


(あれは完全に気づかれていた・・・)


今回は運良く見逃してもらえたみたいだが、もし敵と見なされていればあの屍の山の一部になっていただろう。


せっかく苦労して魔物の群れをあそこまで誘導し、その隙に暗殺する手はずだったのに、相手は想像以上の化け物だった。

これはどうやら作戦自体を見直す必要がありそうだ。


割りに合わない仕事を引き受けてしまったと後悔しながら、それでも其の者の仕事が信用第一である以上降りるわけにもいかない。

難易度が一気に上がった事に溜息を吐きつつ、其の者は真っ直ぐに森の出口へと急いだ。



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