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恋するメイドさんが不治の病を発動しました。  作者: 染色
第一章 双璧の万華
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8 浮気はいけません

まっすぐに伸びた背筋と綺麗な黒髪。

キリッとした目尻に翠色の瞳がこちらを見つめている。


「んんっ!・・・エリオット様?」


カトレアさんに声をかけられ、つい見惚れてしまっていた事に気付いた僕は、ハッとして慌てて佇まいを直す。


「この度は援軍ありがとうございます。」

「いや、良いのだ。」


彼女が馬から降りたので、僕達もそれに倣い馬を降りる。


「助かったのはこちらも同じ、この者達は我らにとっても倒すべき敵だった。むしろこちらからも礼を言わもらおう。」


彼女は丁寧に頭下げた。

その動作には無駄がなく、何処か品の良ささえ伺える。


「して、この場の指揮官どのはどなたかな?」


黒髪が綺麗な彼女の視線が、僕とカトレアさんを往復する。


「あ、それなら・・・」


カトレアさんを紹介しようとすると、彼女はいつの間にか僕の背後に控えるように立っていた。


(え"っ?これは僕にやれって事?)


カトレアさんは当然だとばかりに澄ましている。


何故に?

確かに主従ではそうかもしれないけど・・・。

しかしこのまま答えないわけにもいかないので、仕方なしに僕が応対する事にした。


「申し遅れました。私はエリオット=フルハウスと申します。父がこの地方の領主をしております。もし宜しければ、お礼も兼ねて我が家にご招待させて下さい。詳しいお話はそちらで」

「そうでしたか。某はツバキ=ホウジョウという。気持ちは有難いのだが、急ぎ戻らなければならない用事が出来てしまった。」


そういいながら、彼女の視線がチラッと僕の後ろの方へと向けられた。


(出来てしまった?)


気になってその視線の先を追うと、そこには僕の住んでいるイゼットの町があるだけだ。ただし、一晩で大きく姿を変えてしまった町が。


「こちらからもお伺いしたい事があるので、後日改めてご挨拶に伺おう。」

「あっ、はい。わかりました。ではその様に父には伝えておきます。また、ご連絡ください。」

「わかった。よろしく頼む。よし、戻るぞっ!!」


そういうと、彼女は急ぎ部隊を率いて、元来た方角へと戻っていった。


(はぁ〜、ツバキさんか・・・)


彼女の後ろ姿を見送りながら、知らずにため息をつく。


(あれ?おかしいな、向こうの方には何もなかった筈だけど?)


彼女の去った方角には深い森とその奥に少し大きめの湖があるだけだ。

隣町に行くにしても街道からは大きく外れている。

疑問に思いはしたものの、今は捕虜の拘束と残党の追跡、その後は父上への報告を優先しなければならない。


「皆さんすみません、お待たせしました。それでは戻りましょう・・・?」


待たせてしまったカトレアさんと隊の皆さんをつれて報告に戻ろうと思ったのだが、何故か全員横を向いて視線を合わそうとしない。


「えっと、皆さん?・・・っ!?」


横から不機嫌なオーラが漂っている。今更ながらに気づいたのだが、すでに手遅れだったようだ。


「・・・エリオット様。」

「ハイッ!?」


背筋に寒気が走り、声がひっくり返ってしまった。


「お綺麗な方でしたね?」

「そ、そうですね。」


おそるおそる振り返ると、カトレアさんは満面の笑みを浮かべていた。


ヒィッ!


(ダメだ。絶対に気づかれてた!)


命懸けで僕を守ってくれたのに、当の本人は別の女性に見惚れていたのだ。カトレアさんにしてみたら面白くないだろう。


「ご、ごめんなさい!!」


ここは謝り倒すしかない。


「何を謝っていらっしゃるのですか?もしや、何かやましい事でも?」

「いえ!とんでもありません!」


いつもは癒される笑顔も、今は何よりも怖かった。

つい先ほどまで、武神のように敵を倒しまくっていた彼女だ。その姿を間近で目の当たりにしていた、部隊の皆さんの援護は当然ない。

僕はそれ以上余計な事を言わず。どうやって機嫌を直してもらうかだけを考えながら、町への帰路についた。


ちなみに隊の皆さんは、道中ずっと僕たちの3馬身程後ろをついて来た。


(薄情もの〜〜!!)


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