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恋するメイドさんが不治の病を発動しました。  作者: 染色
第二章 眠れる森の司書と師匠
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76 SS少女A③〜マシュマロは天敵〜

次回更新は2日後になります。

「やっと、着いたぜ。途中で雨は降るし散々だったな。」


青年は長旅の疲れを表すように、「うーーんっ」と、伸びをする。


「それにしても賑やかな町だな。」

「団長、後で一杯いきましょう。」


団長と呼ばれた男と中年の男が今夜の予定を話し合っている。

私たちは今ジェルミン王国北の町、ヴィッチェラに来ています。


「本当にこっちで合ってるのね?」

「あ、ああ、間違いない。ここの先にアジトがあるんだ。」


アイリを攫った一味であるロクスケが、怯えながら案内をしている。


「わかっていると思うけど、間に合わなかったらあなたも同じ運命をたどる事になるからね?」

「わかってる、だから急いでるんだ。あそこには誰もいないから、最悪餓死してたら俺も終わりだ。」


アイリを助けたのは旅芸人の一座だった。

最も本人たちがそう行っているだけで事実かどうかは怪しい。


団長のウェルモット、青年ルディ、少し年配のリュメル、そしてこのパーティーの紅一点モニカ。この四人で旅をしているらしい。実際にどこから来て何処へ向かっているのかは知らないが、助けてもらった手前もありあまり深く追求するつもりもなかった。


「ねぇ、それより先に宿を決めたいんだけど。」


先ほどまで街の中を観察していたモニカが、申し訳なさそうにいった。

モニカはオレンジ色の髪の毛とメガネが特徴的な女の人だ。しっかり者の彼女はこのメンバーでは会計を担当しているようで、みんなの財布は彼女に握られている。

きっと、早めに今夜泊まる場所を確保しておきたいのだろう。


「モニカさんごめんなさい。すぐにこの用事を済ましますので、少しだけお時間をください。」

「うん。少しだけならいいけど・・・。」


自分の用事を優先してもらっている手前、彼女にも迷惑をかけてしまっている。


そのうちに、一軒のぼろ家の前にたどり着いた。窓は外から板が打ち付けられ、入り口には鎖と錠前が付いている。


「ここね?早く開けなさい!」


私を攫った連中は、もともとホウジョウ家と敵対していたものの残党だった。捕虜として捉えたものの内数名を、エミールが面白半分に私兵として再雇用したのが始まりだ。

中でも使いっ走り担当のロクスケは鍵を預かっており問題なく扉が開いた。


「助けに来たわよ!?いるのっ!?」


大きな声で呼びかけながら私は家の中へと飛び込んだ。


シーーーン。


物音一つしない。まさか、間に合わなかったのだろうか?慌てて部屋の中を見渡すと、部屋の隅に転がる人の姿が。


「だ、大丈夫!?しっかりしなさい?起きるのよ!!」


乱暴に揺するとその人影が動いた。


(うっ、相変わらず立派なマシュマロ・・・と、そうじゃなかったわ)


「あえっ?」

「大丈夫っ!?意識はあるの?・・ニーナッ!!」


寝ぼけたニーナに呼びかけ続けると返事が返ってきた。


「あううぅっ、・・・・・お、お腹すいた・・・。」

「・・・・・。」


会って一言目がそれか。

まだ寝ぼけているようだけど、無事を確認出来てひとまず安心した。


「その子がお前さんの言っていた知り合いか?」


団長さんが様子を見にきてくれた。


「はい。私の家で働いていたメイドさんです。私が捕まる少し前に行方不明になったのですが、彼らの話から私と同じく攫われたに違いないと。」

「そうか、間に合って良かったな。では、私とリュメルはそこの男を憲兵に引き渡しに行ってくるので、お前さんはモニカたちと共に宿屋へ向かってくれ。」

「何から何までありがとうございます。このご恩はきっと返します。」


団長は軽く手を振ると町へと消えていき、そこへルディがやって来た。


「おおっ!!スタイル抜群のお姉さんじゃねぇかっ!後で紹介してくれ。」

「あなたはもう少し団長さんを見習った方がいいと思います。」


まったく空気の読めないルディに呆れながら、私たちはニーナを連れて宿屋へと向かう。

体力的にルディがニーナを背負って行ってくれたのだが、鼻の下を伸ばした顔が何故かやたらとムカついたのは何故だろうか。


(私の時は荷物でも運ぶかの様に扱ってくれたくせに!やっぱり胸なの?おっきい方が偉いの!?)


なんとも悔しい思いをしながら、先頭を歩くモニカさんについていった。

宿屋に着き部屋に荷物を置いた後、私達は食堂に来ていた。幸いにもご飯をたくさん食べたニーナはすぐに元気になり、今は食後のおしゃべりタイムだ。


「はぁ〜〜、一時はどうなることかと思いました。」


お腹一杯になったニーナは満足そうにのほほんとしながらいった。


「アイリさんに感謝してくださいね?あなたを助けるために、私達に協力を仰いだのですから。」

「たまたまよ。知らない仲でもないし、見捨てるわけにはいかないでしょう?」


素直に感謝されるのが恥ずかしかった私は、誤魔化しながら答える。


「ありがとうアイリちゃん。私はてっきりアイリちゃんに嫌われていると思っていたわ。」

「あれは・・・、ほら。あなたがエリオ兄様に色目を使うから・・・。」

「なかなか興味深い話ね。私にも聞かせて?」


黙って聞いていたモニカも、色恋話には興味あるのか話に参加する。

今は3人でのトークタイムだ。団長たちは酒場に、騒がしいルディはこのテーブルから追い出されて店の端っこの方で1人、肉料理を食べていた。


「あのね、アイリちゃんには3人のお兄さんがいるんだけどね?私は一番上のお兄さんが担当だったの。」

「そういえば詳しい経緯を知らないわ?どうしてうちに来ることになったの?」

「それが町の酒場でお友達と飲んでいたんだけど、そこにエミール様がやって来て、何故か目をつけら・・・じゃなかった、見初められたの。」


この人、いま目をつけられたと言わなかったかしら?


「それとエリオ君だっけ?と、どういう関係があるの?」


モニカは続きが気になって仕方がないようだ。


「それが、隙あらばいつもちょっかい出そうとしてたのよ。ニーナの担当はエミール兄様だっていうのに・・・。」

「ふふっ、アイリちゃんはエリオット様大好きだったものね〜?」

「ちょっ、違うわよ?・・・確かに少しはいいなと思ってはいたけれど・・・、兄妹だし?」


モニカにも大体の事情は飲み込めたらしい、苦笑いをしていた。


「でもね、アイリちゃん。確かに私はエリオット様とか、エルバート様とお近づきになりたいな〜と思ってはいたけれど、あの2人にはもの凄〜くガードの固い人たちがいつも側についていたから・・・」


エリオ兄様だけでなく、エルバート兄様も狙っていたのかこの人は。

しかしなるほど、あの2人が目を光らせている以上は近づくことなどできないだろう。まして、逢い引きなどほぼ不可能だ。

なにせ私がそうなのだから、ニーナの気持ちも少しはわかるというものだ。


「んっ?待ってよ。エミール兄様がダメで、エルバート兄様とエリオ兄様がOKという事は・・・」

「そうなの!私、年下が好きなのよ〜。」


嬉しそうに「よく出来ました!」、などといっている。


「はぁ〜、すごいわね。」

「そう?」

「私はほら、そっち方面はさっぱりだから。」


モニカさんはもうお腹いっぱい、みたいな顔をしていた。


「でも、アイリちゃんもニーナさんもお気に入りの子はちょっと興味あるかな?」

「なんでよ?男3人とずっと旅をしてたら、こういった機会なんかないの?他にも旅先での出会いとか。」


私はまたライバルが増えるのかとげっそりしながら、話をそらしてみた。


「冗談でしょ?あれはないわ〜。」


カウンターで肉を齧っていたルディに視線を向けると、モニカさんは本気で嫌がった。

どうやらほかの二人もないらしい。


「出会いもね、あの3人と一緒だと向こうから逃げていくのよ?まさに厄病神ね。」


酷い言われようだが、あの面子なら一般男子は腰が引けてしまうのも頷ける。あれは芸人ではなく組合かなんかの用心棒だ。

もっとも見た目だけで、実際には気のいい人たちなのはアイリも既に知っている。


「モニカさんは理知的な知性派なんだから、きっと優しくて運動神経良さそうな人なんかが相性良さそうよね。」

「そう?なら今度いい人がいたら紹介して?私の青春をこんなところで浪費するなんて耐えられないわ。」

「私も〜〜。」


ニーナさんがさり気なく便乗している。


「はぁ〜、でもそうね。ニーナさんにも誰か紹介しておけば、私も安心だわ。」

「あら、それとこれとは別問題よ?私は世界中の年下に興味があるの。」

「げほっ!」


話を聞きながら紅茶を飲んでいたモニカさんが吹いた。

まったく、本気なのか何なのか。これではエミール兄様と一緒ではないか。


(いや、案外そういうところで気が合っていたのかもしれないわ。)


「さて、そろそろお開きにしましょうか?」

「そうね、もう遅いし部屋に帰りましょう。そういえば、ニーナさんはこれからどうするの?」


モニカさんの一声で解散することになり、私はニーナさんがいつイゼットに帰るのかを聞いたつもりだった。


「えっ?アイリちゃんとずっと一緒にいるつもりだけど?」


しかし、ニーナさんは不思議そうな答えたが帰ってきた。いやいや、こちらの方が意味不明だ。

ニーナさんは少し考えて、ああっ!と一人納得をする。


「私は一応容疑者扱いだし、ほとぼりが冷めるまで帰れないの。それにアイリちゃんは私の命の恩人だもの、暫くは専属でお世話させてもらうわ。」

「ついてくるのはいいけど、私だって文無しよ?それに助けられたのは私も同じだし。」


彼女も私と同じで売られる予定だった。

スタイル抜群の彼女は、きっと好色の貴族にでも高値で買われてしまう所を、アイリに助けられたのだ。それは彼女もよく理解していた。


(その前に空腹で死にそうだったけどね)


私は今のところ家に帰るつもりはない。両親は心配しているだろうが、そこは手紙でも出して知らせておけばエリオ兄様が何とかしてくれるだろう。

何より、せっかく家を出る機会を得たのだ。このチャンスを逃す手はなかった。


「大丈夫、何とかなるわよ。私に任せて?」

「やたら自信満々なのはいつもの事だけど、心配だわ。」


雇い主になる筈の自分が、逆に養われているのはおかしな話だ。けれど彼女は自分よりもずっと年上で、無理に意地を張ることもないと思ったので、取り敢えずは任せることにした。


こうして私の冒険の旅に、マシュマロなメイドさんがお供についてくることになったのだった。


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