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恋するメイドさんが不治の病を発動しました。  作者: 染色
第一章 双璧の万華
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4 僕の騎士様

部屋に戻って一人掛けの椅子に座りながら、先程の話を思い出す。


「・・・。」


カトレアさんは、ホットのハーブティーを入れた後、黙って傍についてくれている。何も言わず、ただ僕から話を切り出すまで待っている。


(静かだ・・・)


これから戦場に行くかもしれないというのが嘘みたいだ。

だんだんと心が落ち着いていくのが分かる。

しばらくの間そうしていると、僕はやっと決心がついて、先程父上から聞いた話を切り出した。カトレアさんはただ頷くだけで、黙って聞いていた。


「そう言うわけで、ぼくはこれから戦いに行かなくちゃいけない。」

「左様でございましたか、よくわかりました。それで・・・エリオット様はどうなさるのですか?」


カトレアさんに聞かれ、少し考えた後正直に答えた。



「・・・わからないんだ。ただ、僕には剣を振るくらいしか出来ない。」

「それはつまり、前線へ行かれる・・という事ですね?」


そうだ。答えは出ているんだ。

でも。


「でも・・・でもっ、怖いんだ!僕はカトレアさんみたいに強くないし、カール君にすら勝てない!!」


僕は自分でもびっくりするくらいの大きな声をだした。

そう、僕は怖いんだ。行かなきゃいけないのはわかっているのに、その一歩が踏み出せない。

情けなくて、恥ずかしくて僕は俯いてしまった。


怖くて、カトレアさんの顔が見れない。

自分の主人がこんなでは、がっかりさせてしまっただろうか?いや、それくらいならまだしも、呆れているかもしれない。


「・・・・・・」


ふわっ。


と、そのまま黙ってしまった僕は、つぎの瞬間には花のような香りにつつまれていた。


(えっ!?僕、今カトレアさんに抱きしめられてる!?)


びっくりして固まってしまった僕に、カトレアさんが語りかけてくる。


「エリオット様・・・。」


ゆっくりと、優しく。小さな子に言い聞かせるように。


「戦場を怖いと思うことは当たり前です。むしろ、怖いと感じなくなってしまう方が、よっぽど怖いと私は思います。」

「・・・うん」


抱擁を解かれ、カトレアさんは僕の瞳を覗き込んでくる。


「しかしながら、あなた様には私がいます。」


綺麗な深紅の瞳。そこには力強い意志の炎が揺らめいていた。


「『アイギスロード』の名を頂いた私が、必ずあなた様をお守り致します。あなた様の剣となり盾となり、行く道を照らし導きましょう。」

「えっ?あの・・・。」


あまりに真摯なその言葉に、僕は思わず赤面してしまった。


「ですから、エリオット様。ご自分の信じた道をお進みください。私は何処まででもついて参ります。」


これでは、まるで口説かれているみたいだ。

座っている僕よりも低い視線で上目遣いに見つめられ、その姿はまさに姫の前に跪く騎士のよう。


これでは、男女逆だっ!?

・・・でも・・凄く、かっこいい。

思わず、「このまま僕を連れて逃げてください!」とか言ってしまいそうだ。

真面目な話をしているのに、僕は不謹慎にもそんなことを考えてしまった。


けれど、覚悟は固まった。

彼女にここまで言わせて、怖いなんて言っていられない!


「ありがとう、カトレアさん。僕、頑張るよ。」

「はい。どこまででもお伴致します。」


そう返事したカトレアさんは、すごく嬉しそうだった。

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