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恋するメイドさんが不治の病を発動しました。  作者: 染色
第一章 双璧の万華
2/163

2 多分僕が主人公・・・

~エリオ視点~


― 時は少し戻って、パーティー会場



妹のアイリは、両親とともに挨拶まわりに行ってしまった。


軽く軽食を摘まみながら会場を見渡すと、大人がそれぞれ思惑の元にコネクション作りをしている。

子供の姿もあるけれど、みんな親に連れられて挨拶している。

きっと相手方に気に入られてしまうと、そのまま許嫁とか出来てしまうんだろう。

イヤな世界だ。


視点を変えてみると、配給のメイドさんやウェイターさんが、器用に人と人の間をスイスイと縫っては仕事をしていた。


そんな中、壁際に2人のメイドさんが仕事もせずに並んでが立っているのを見つけた。

するとその内の一人と目が合い、そのメイドさんはまっすぐにこちらへと歩いてくる。


「エリオット様、いかがお過ごしでしょうか?何か困ったことはございませんか?」

「ありがとう、大丈夫だよカトレアさん。」


そのメイドさんは近くまで来ると、丁寧に挨拶をしてくる。


紹介しよう。

彼女はカトレア=アイギスロード。

僕の専属のメイドさんだ。


綺麗な深紅の瞳をしていて、藍色を帯びた綺麗な髪を後ろで束ね、丁寧な物腰に隙のない身のこなし。

そんな彼女のお仕事は、僕の身の回りのお世話とボディーガード。


・・・もちろん、お目付け役も含まれている。



「あ、やっぱり大丈夫じゃないや。ここで少し僕の話し相手になってくれませんか?」

「私でよろしければ、喜んで。」


(あ、笑った・・・)


その華が咲いたような笑顔に思わずドキッとしてしまい、なんとなく目を逸らしてしまった。



僕たち兄弟には専属のメイド、執事がついている。

絶対にというわけではないが、だいたい10歳になった頃から専属が付けられ、今日10歳になったアイリの専属も近い内に決まることだろう。


基本的に歳は自分より少し上で、異性であることが多い。

理由はいろいろあるけど、優秀な年上の異性というのは色々な意味で、特別な相手になりやすいのではないかと思う。


自分よりほんの一歩先を行く彼女らは、憧れであると同時に一番近い目標となる。

そんな相手に叱られ、守られそして時には導いてくれるのである。頭は上がらなくなるし、ヘタに悪いことをして迷惑を掛けるのも躊躇われる。


結果として、立派な領主になっていく。というのが実体験を踏まえた僕の見解なのだけれど、多分そんな理由なんじゃないかと思う。



「アイリもいつの間にか10歳になりましたね。」

「はい、最近はより女性らしくなりました。これからは周りの殿方も放っては置かなくなるでしょう。」

「あはは、まさか。いくらなんでも気が早いですよ。」


まだ10歳になったばかりで、それはないだろうと思う。


「いえ、そうでもありません。先日も昔馴染みの方から専属としてのお申し込みがあったそうです。」


予想外の言葉が返って来た。

というか初耳だ。

彼女はどこでその話を知ったのだろうか。


しかし、僕には思い当たることがあった。


「昔馴染みというと、もしかしてカール君ですか?」

「はい。最近の彼は剣術の上達が特に早いと思っておりましたが、そのお話をお伺いして、なるほど納得してしました。」


カトレアさんは自分のことのように喜んでいる。


カール君のお父さんは、このイゼット領に駐在している騎士団団長の補佐官をしている。

お父さんの仕事上、時々顔を合わせることのあった彼は、数年前から僕と一緒にカトレアさんに剣術を習い始めた。


最初はお互いに、いい練習になるからと言っていたのに、今では僕よりも強くなってしまった。


「しかし、カール君はまだアイリと同い年だったはず、父上が認めてくれるといいのですが。」

「それについてはまだわかりませんが、おそらく大丈夫でしょう。私の所にも彼の実力と人柄の調査が入りましたので、プラス評価でお伝えておきました。」


成程、その時に知ったというわけか。

どうやらアイリの専属は近い内にではなく、もう決まっていたようだ。


これからカール君は執事としての仕事と並行して、マナーや教養をしっかりと教わるはずだ。1人前になるまでは研修期間といった形になるのだろう。


(頑張れ、カール君!)



「そういえばカール君が、何故か僕に対抗心を燃やしているような気がするのです。剣術も僕より強くなったのに、なにが不満なのでしょう。」

「・・・さぁ、分かりかねます。きっと彼にも思うところがあるのでしょう。」


なんとも気のない返事が返って来た。


う〜ん・・・、「お義兄さんに認めてもらいたい!」とかかな?

いやいや、そんなぬるい感情ではなかった気がするけど。


「アイリにしても、あれだけ好意を寄せている相手が近くにいるのに、全然気がつかないなんて、我が妹ながら鈍感すぎますね。そう思いませんか、カトレアさん?」

「・・・・・・、そうですね。」


おや?なんだろう、もしかして怒ってらっしゃる?


これ以上この話題を続けてはいけない。

何故かわからないけどそんな気がする。

僕は、そんな自分の直感に従ってとりあえず話題を変えてみた。


「そういえば、兄上たち二人が見当たりませんね。」

「・・・エルバート様はプレゼントを渡してすぐに退席なさいました。エミール様は会場で女子を物色してまわった後、同じく退席なさいました。」


物色って、まぁ確かにその通りなんだろうけど。後エルバート兄様は相変わらずマイペースだ。

壁側に目を向けると、先程カトレアさんと並んでいたメイドさんも、いつの間にかいなくなっていた。


あからさまな話題転換だったけど、特に追及はされなかったので、とりあえずはホッと一息。何とか乗り切ったようだ。


ここは今のうちに退散しよう。


「それじゃあ、僕もそろそろ失礼しようかな。アイリに一言かけたら部屋に戻ります。」

「畏まりました。後ほどお飲み物をお持ち致します。ハーブティーで宜しかったでしょうか?」

「はい。ありがとうございます。暖かいのをお願いします。」


僕は部屋に戻り、カトレアさんはハーブティーを用意してくれた。

因みに、部屋は予め暖めてあり寝間着も用意してあった。

まさに完璧なまでの気遣いだ。


あまりに優秀過ぎて、たまに自分には勿体ないような気がしてくるほどだ。カトレアさんなら皇室でも十分通じると思うのだけど、彼女にその気はなさそうだし。


でも、そんな人が僕の専属をしてくれているのだと思うとすごく嬉しい。

そんな自慢の姉なのだ。


「それでは、お休みなさいませ。」

「うん。お休みなさい。」


カトレアさんが部屋を出ていく。


「あ、それから。」


去り際に一言。


「明日の鍛錬は少し厳しくしますので、よくお休みになってください・・・では。」


パタン・・・。


やっぱり、見逃してはくれないようだった。


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