138 トレビアーン!!!
更新遅くなりました。
次章の構成を考えているので、しばらくは不定期更新になります。
すみませんが、よろしくお願いします。
〜カトレア視点〜
さて、目の前には醜悪な豚に囚われた女性がいるわけですが、どうした事でしょうか。
あの時とは状況は違います。
ぜんぜんまったく一つとして同じところなんかありません。
ないのはずなのに、精一杯の抵抗すら笑いながら踏みつぶそうとしている男を、そしてその理不尽に対し、自分から諦めてしまおうとしている彼女をみていると、あの時の記憶を思い出してしまうのです。
「悔しいですか?」
そんな言葉を、知らず知らずのうちに口にしていました。
私がいる事にやっと気がついた二人が、こちらへと振り返りました。
感情が抜け落ちていくような錯覚。
心の奥底からジワリと湧くように、溢れ始めた怒り。
「理不尽に全てを踏み躙られ、奪われる事を許容し、諦めてしまうのですか?」
キョトンと惚けている彼女に改めて問いかけます。
しかし、これはきっと目の前の彼女に問いかけているのではありません。
この状況に重ねて見てしまっている、過去の弱虫な自分に対してのものでした。
「メイド風情がなんの用だ!俺は読んだ覚えはないぞ?」
突然現れたクレアにブルトンは不快そうに吐き捨てた。
理由はわからない。
いつものブルトンであれば、クレアほど極上の素材を見逃すはずがない。
だが彼はそうはしなかった。
本能が、彼の悪代官としての勘がクレアを危険と判断したのだ。
「わ、私はい・・いいんですっ!に、逃げて下さい!」
先ほどまで助けを求めていた癖に、いざとなったらその逆の選択肢を選んでしまう。
そもそも声が震えているではないですか。
(はぁ、素直でない所はそっくりなのですね)
わたしはその様子を見ながら、自分も同じような事を言った覚えがありました。
心にもないくせに強がっていたわたしに、あの人はどうしただろうか?
答えは簡単。
あの方は、わたしの言葉なんかまったく聞きもしないで、自分の意思を押し通したのです。
「嫌です。」
「え?」
「だから、嫌だといったのです。」
彼女は何を言っているのかわからない、という顔をしています。
ふふ、あの間抜けな顔を見れただけでも、助ける価値があるというものです。
「貴様図に乗るなよっ!儂を無視しおって、今に直ぐにジェームズたちが来る。そうしたらミサキの前で嬲りものにしてやるわ!」
完全無視を決められたブルトンは、真っ赤になってブチ切れていた。
高々メイド一人に、随分と感情的に怒鳴りつけている。
その言葉に彼女、ミサキさんというのですか、が青ざめてしまっています。
「そんなもの来ませんよ?むしろなぜ貴方が逃げないのか、私は不思議でなりません。」
「は?」
今度はブルトンが間抜け面を晒していますが、先程と違ってグッとくるものがありません。
寧ろ引っ叩きたくなりました。
バシィィィィインッ!!!
「へぶぅっ!?」
だから引っ叩きました。
「えぇっ!?」
ミサキさんもびっくりです。
(この子なかなか面白いですね)
いい反応を返してくれるミサキさんに、気を良くしたわたしは、彼女の笑顔もみてみたくなりました。
「ふぐ、貴様よくもっ!後悔するぞ!?」
「そういえば、あなたは今まで理不尽にたくさんの人を苦しめて来たのでしたね。」
「それがどうしたっ?ここは儂の町だ、どうしようと儂の勝手だ!」
ぜんぜんお話にならないブルトンに、わたしはマトモに相手をするのをやめました。
「ではそんな貴方には、とことん理不尽を堪能して頂きましょう。遠慮する事はありません、私からのプレゼントです。」
その後はご想像にお任せしますが、思いつく限りの理不尽をプレゼントしました。
早い話がリンチ、拷問、言葉責め。
どれも素敵なレベルで実行したとだけ言っておきましょう。
「あ、あの・・・、もうその辺で・・・。」
最後はミサキさんの温情によりお終いにしましたが、裸にして鉄扉の中に放り込んでおきました。
後はあの姫様が適当にやるでしょう。
しかし腑に落ちません。
ミサキさんの笑顔を見るはずが、気づいたら青ざめてドン引きしていました。
(なぜ青ざめて・・いえ顔が、赤い?)
気づけばミサキさんは息を荒げてへたり込んでいます。
「大丈夫ですか?いったいどうしたと・・・」
「あふ、あぁぁっん!?」
身体を支えるとかなり熱を持ち、艶やかな声を漏らしました。
「これはまさか」
彼女はおそらく媚薬の類いを摂取させられています。
しかもこの様子からすると、強力なのをかなりの量飲まされていると推測されました。
これは危険な状態です。
(遅効性の毒でないのは救いでしたが、この豚最後に余計な置き土産を)
こういう時はどうしたら良いでしょうか。
いえ、分かりきった事ですよね?
しかし、わたしには心に決めた方がいるのです、例え同性であろうと・・・。
いやいやしかし、このままでは。
「とはいえ、流石にその辺で適当な男を拾ってくるわけにもいきませんし・・・」
ミサキさんも弱々しく、イヤイヤしています。
ええいっ、仕方ありません!
これは貸しです。
「この貸しは、命を救った事よりも、ずっと高くつくと心得なさいっ!!」
わたしはミサキをお姫様抱っこでヒョイと抱えると、隣の寝室へと向かうのでした。




