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おまけ 「あぁ、俺の愛しの彼女は可愛くて美味しい」

 どこにである暗い部屋。部屋の主がいないため、電気が付いていない。

 閉ざされたドアが開き、部屋の主が帰ってきたことを告げる。廊下から漏れた光で部屋の主の姿が現れた。

 顔立ちの整った青年は部屋の電気を付け、部屋全体を見回す。


「あぁ、いつ見ても君は可愛いね」


 パタンと部屋のドアを閉め、部屋全体に向かって恋人に囁くかのように甘い言葉を呟いた。

 なにせ、この部屋の至る所には彼が愛しているものが沢山あるからだ。


「俺をジッと見つめる君も可愛いし、友達と話している君も可愛い。俺と目が合って照れる君も可愛らしいし、目にゴミが入って涙目の君も非常に可愛いね」


 部屋の壁に貼られた数多くある写真。部屋の白い壁が見えないくらい貼られてある写真。

 その一枚ずつ違う写真の共通点といったら、一人の少女が映し出されていることだ。

 ある一点をジッと見つめる彼女。誰かに微笑みかける彼女。ふと悲しげに視線を下に向ける彼女。涙に濡れた目を擦る彼女。恥ずかしそうに髪を弄る彼女。

 全ての写真に彼女が映し出されていた。それはもう彼女しか目に見えてないくらい彼女の写真だけだった。


 彼は壁一面に貼られている彼女の写真を一枚ずつ舐めるように見つめ、机の前までゆっくりと歩いてくる。机の上にも飾られた彼女の写真を愛おしげに撫でた。

 大量にある彼女の写真さえ見えてなかったら誰もが彼に見惚れるくらい今の彼は魅力的な笑みを浮かべていた。


「やっぱり君は可愛いね。いつでも俺の心をかき乱すのは君だけだよ」


 机の引き出しを開け、中から取り出したのは一つのクリアケースだ。そのクリアケースの中に入っているものにうっとりとしてクリアケースごと優しく撫でた。

 クリアケースの中に入っているものは、その辺に落ちていそうなゴミだ。正確にはゴミとなったティッシュらしきものである。

 このティッシュは彼にとって素晴らしい宝物。何百万を積まれても手放したくない大切なものなのだ。


「君が鼻をかんだティッシュは、いつ見ても素晴らしいね」


 クリアケースの表面を撫で、同じ引き出しから手に持っているクリアケースと同じものを取り出す。その中にも同じようなゴミである使い古されたティッシュが入っていた。

 大切に撫でていたクリアケースを机の上に置き、さっき取り出したクリアケースから中身を取り出した。


「はぁ……君が鼻をかんだティッシュっていうだけで興奮するよ。目の前で君が実際に鼻水を出したら俺はどうなるんだろう?」


 鼻水を一滴も残さずに小瓶に入れるのか。それとも一滴も残さずに全て舐めとってしまうのか。

 どちらにしても彼にとって素晴らしいことには変わりない。どちらもしたいというのが彼の本当の気持ちだった。

 鼻水をかんだティッシュを大切に手に持ちながら、いろいろと妄想をする。その妄想が美味しすぎてゴクッと喉が鳴った。


「君の鼻水は美味しいのだと思うよ」


 少し前に彼女の汗を舐めた味と同じように美味しいのだろう。

 偶然を装って彼女の手を掴み、自身の手に付着した彼女を汗をひたすらトイレの個室で舐めた。それはもう美味しくて忘れられない味だったのだ。

 それと同じように彼女の鼻水も美味しいのだろう。味を想像するだけで体が熱くなる。

 この体の火照りをどうにかしてくれるのは彼女だけだ。彼はそっと手に持っていたテッシュに口付けた。


「俺の可愛い君はいつでも美味しいよ。君は知らないんだ、俺がどれだけ君を愛しているか。こんなにも美味しくいただいているのか」


 吸って吐いて吸って吐いてと何度もテッシュを鼻に当て匂いを嗅ぐ。鼻孔を刺激するいい匂いと彼は満足をする。

 この行為は毎日のように繰り返されている行為だ。彼にとって彼女を愛でることは呼吸をするのと同じ。彼女を愛でなければ生きてはいけないのだ。


「あぁ、俺はなんて贅沢なんだ。日によって愛でるものが変わるなんて贅沢だよ」


 今日は彼女が鼻をかんだティッシュだったが、昨日は彼女が古くなったといって捨てた服だった。

 明日はどんなものを愛でようかと考えただけでも楽しい。彼女を愛でる毎日が楽しいのだ。


 しばらくはティッシュを大切に美味しくいただいた。

 気持ちが落ち着いた頃にティッシュをクリアケースの中に入れる。その前にクリアケースに汚れがないか確認したり、クリアケースを綺麗に磨いたりしていた。

 ティッシュがクリアケースの中に無事に入ると、彼は優しく表面を撫でる。それは愛しの人を撫でるのと同じに甘く優しく撫でた。


「あと数時間すれば、君が起きる時間だね」


 クリアケースを撫でながら時間を確認し、愛しげに囁く。

 少しだけ仮眠を取り、あとは家を出て彼女の家の前で彼女が出てくるのを待つだけだ。そう彼は呟き、女性なら誰もが見惚れてしまう笑みを浮かべた。


「あぁ、俺は君を愛しているよ」


 彼女が笑っている写真を取り出し、その写真に口付ける。何度も口付ける角度を変え、彼は甘くて優しいキスをし続けた。


 満足した彼は最近買ったばかりの小型カメラの充電を確認し、チャック付きの袋も十分な数があるかを見る。彼女と一緒に行動するなら数がないと駄目だ。

 それらの準備をすると、やっと彼はベッドに行き眠りにつく。ベッドにはこの夜に一緒に寝る彼女の写真もちゃんと持っていく。

 彼女の写真を胸に抱きながら、ベッドの上にあった彼特製の彼女の抱き枕をギュッと抱き締めた。


「あぁ、早く本物の君を抱き締めて寝たいよ。抱き潰して俺から一生逃げれないようにしてあげたいな」


 クスクスと笑みをこぼしながら、彼は彼女のことを想うのだった。

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