第9話:クーデターの始まりとブラックホールは無限の牢獄
第9話:クーデターの始まりとブラックホールは無限の牢獄
「美紀!そっちは超重力圏内だ!退避しろ!!」
俺はずっと一緒に育ってきた幼なじみであり、大切な人を失う瀬戸際にいる。頼む、超重力圏内から逃れてくれ!!
「ダメ!鷲川君!機体が言う事を聞かない!!」
無線越しから聞こえるデンジャーグラビティ(危険重力)という警告音が辛い。もう、やめてくれ。何度も願った。だが、それが最期の彼女からの通信だった。
余りにもあっけなく、宇宙の脅威、自然の力を思い知った。
戦闘機学部では年に一度、訓練や試験途中で亡くなった学生の追悼式がある。俺は真川美紀元大尉の黒い墓標の前に立っていた。
「美紀、今日君の夢を見たよ……俺が……俺のせいで……」
そうだ、元々俺は自信家の方だった。だがゴースト隊の入隊試験で俺は指示を誤り、美紀を死なせてしまった。彼女は今でもブラックホールという名の牢獄に囚われている。そしてそれ以来俺の自信は微塵も、一滴も残らず消えて、ずっと寮のベッドで座って、どうすればよかったか考えていたある日、石崎閣下に技術を披露したら、認めてもらった。こんなを俺を優秀なパイロットだと。2度目の試験は首席で受かり、もう二度と仲間は死なせないと誓い、とにかく学術書と訓練の末に前代未聞クラスのゴースト隊へと仕上げた。
「なぁ、美紀。俺さ……アグレッサー部隊への招集がかかったよ。笑っちゃうよな……お前を死なせておいてアグレッサー部隊なんて……」
俺は墓標に寄りかかる。冷たい黒い石はただその冷えた温度だけを伝えてくる。美紀の心は冷たくなっているのだろうかと錯覚してしまい、墓標を抱きしめる。
「ごめん……ごめんよ……」
俺は涙を何滴も流し、持ってきた美紀の好きだったオレンジジュースの缶を置く。
「じゃあね美紀……もう、二度と仲間は死なせないよ」
せめてもの贖罪だと思い、墓標室から出る。涙のせいか、日光のせいか、やけに景色が眩しく感じ、日陰に座る。
すると衛星スマホが鳴り、学生全員に通告が来ているようだった。
「石崎希光大佐が……平和の為のクーデター?……志願者は学生艦隊第1港へ集結せよ……」
まさか、本当に昨晩の願いが叶うとは。俺はポケットに入れてあったアグレッサー部隊への招集令状を破り捨て、走り出す。
「石崎閣下ぁ!小官は命張りますよ!!」
そう、叫びながら第1港へ、全力ダッシュで向かった。
そこには多くの学生と卒業を控えた学生……つまりは先輩達も集まっており、まだ教官達が居ないことから、恐らくだが教官室の電子キーをハッキングして閉じ込めたのだろう。
だが、反乱前に俺にはやる事がある。
それはすぐに達成された。
「小隊長!来てくれたんですね!」
「小隊長殿!あなたがいれば百人力です!」
「ゴーストリーダー!共に平和を手に入れましょう!」
小隊員達の暖かい言葉を胸に、俺は再度約束する。
「俺はお前たちを死なせたりしねぇよ!最期まで一緒だぞ!」
そのまま石崎閣下による演説が始まるらしく、俺達は平和を胸に最強のゴーストとして新しい宙域へと旅立つ。
これは僕の人望によるものなのか。それともここに居る学生達は皆、平和への願いがあるのだろうか。
「石崎長官、教官の突入まで残り5分とありません。早く演説を」
いつも以上に真剣な面持ちの雪室からのアドバイスを受け取り、頷く。そのままマイクを拾い、手をマイクにかざして、ハウリングを引き起こし、注意を向けさせる。
「諸君、集まってくれた事にまずは感謝する!我々次世代を担う軍人学生は今度は平和のために戦う!今四大列強は支配者層の利益ばかり追求し、軍人を食い潰している!この国だってそうだ!僕達はなぜ軍に入ったか!?四大列強の支配者層の利益のため?星間国家連合の組織力維持のため?……答えはノーのはずだ!僕達は守りたい人、守りたい平和の為に軍に入ったはずだ!さぁ、今こそ拳を振り上げ、鉄槌の如く下す時が来た!!我々が新時代の平和を作り、繋いでいく!!さぁ、意思ある者たちよ!船に乗り込むといい!!」
一瞬静寂が訪れ、誰かが拍手をした。それに呼応し、次々と花が咲くように拍手が鳴り響き、学生達の叫びが第1港に響き渡る。それはまさに学生軍人の意思表示に他ならなかった。
「「「うおおおおおおお!!!」」」
大歓声が響き渡り、涙を流す同期達、拳を握る先輩達、新たな時代に喜び合う後輩達が次々と学生艦に乗り込む……学生艦は合計20隻用意出来たか……四大列強と戦うにはちょっと厳しいかもな……まずは、僕が選んだ拠点惑星で増産などもしなければ……
山積みの課題に一つ一つに手をつけていく覚悟を胸に、艦隊司令長官室に戻る。
「石崎司令、見事なご演説でした」
「山本先輩!僕はまだ……未熟者です……」
「そんなに謙遜しなくて構わない。あとこれからは参謀長とお呼びください。私はあくまでも、石崎司令の参謀長なのですから」
大学卒業を前に四年生首席だった山本先輩もこのクーデターに手を貸してくれた。主に教官の誘導や電子ハッキングで。
「分かりました、山本参謀長。現時点で聖国宇宙海軍の様子は?」
「事前の根回しで電子ハッキングチームが総力を挙げ、発電所の不具合とIFF(敵味方識別装置)を不調にさせているので、まず来れないでしょう」
優秀な先輩だと思ってはいたが、想像以上だ。現代宇宙海軍戦において発電所による電力で1次動力を得て、スペースシールドアンドイグニッションシステムを起動させる。そして距離が遠く、なおかつ広範囲で立体的な宇宙海戦ではIFF無しでは誤爆・誤射のリスクが高過ぎる。
この件が最大の難関であり、山本参謀長との事前協議でこの作戦を立案してくれた天才ハッカー蒼空雷電子科首席に感謝している。
ちなみに蒼空先輩は女性で、いつも白衣を身にまとい、オッドアイの神秘的な瞳と長い黒くて、少しボサついた髪を持ち合わせており、完璧なオタク風美少女だ。現在も電子攻撃を行うため、この御影級の電子指揮室に立てこもっている。
「蒼空先輩……じゃなかった、蒼空電子作戦長と山本参謀長は仲がよろしかったとお伺いしています。何かありましたか?」
山本参謀長は渋い顔をして、苦笑混じりに話す。
「……お互いに好きなアニメのキャラの好きなキャラクターに似てたから、お互い協力する条件でシチュエーションを用いたコミュニケーションをしていただけですよ……」
「そ、そうですか……内密にしておきますね」
「よろしくお願いいたします」
するとドアがノックされ、失礼します。という声と共に1年生と2年生の首席が現れる。姉妹で首席枠を支配しており、蒼髪の瑞夏、紅髪の雪路と呼ばれており、あだ名の通り髪色と瞳以外はまるで一緒だ。
「2年生首席、高宜瑞夏です。石崎司令の元で重巡洋艦春蕾の艦長をさせて頂きます!」
「1年生首席!高宜雪路です!石崎司令長官の元で空母天馬の艦長兼航空隊司令として全力で務めさせて頂きます!そしてまだ、学ぶ事も多くあると自認しているので、ビシバシご指導ください!」
僕は2人の瞳をしっかり見て、答える。
「僕は元より君達が女性だから、歳下だからと言って甘やかすつもりはない。それは自分の死だけならまだしも、仲間を巻き込めば最悪の罪と言っても過言では無い。だが、褒めるところは褒める。2人には後者を沢山言わせてもらえると司令長官として嬉しい」
「「はい!ありがとうございます!!」」
可愛らしい女の子が艦隊司令長官室から去ると山本参謀長が再び話を持ち出す。
「今の我々の向かう星はアンドロメダ銀河の惑星はフィシュテルで間違いありませんか?」
「その通りだ、かつて影の星と呼ばれ、長年発見されなかった分周辺小惑星の資源もあり、事前に僕が自立式作業用ロボットを数百機送らせてもらってる。4年前からの計画だが、ロボット長の日報では既に御影級のドッグが4つも出来てる。そしてホテルやラウンジなどの休憩も兼ねた複合施設も。まぁ父上が協力してくれたのは不気味だけどね。海軍軍令部総長である以上反乱に手を貸したとなればタダでは済まないはずだから」
山本参謀長も思案を巡らせながら、一つ質問を投げかける。
「石崎司令は何故、5年前に平和の為の計画を……?」
「4年前……そうか、ちょうどこの宇宙暦だと今日で6年目ピッタリだな。6年前、僕の母さんは四大列強の政治闘争に巻き込まれて、亡くなった。その時に思ったんだ、人類の愚かさにね。2年間の憎しみの結果がこれかな」
いつの間にか声には憎しみが走り、怒りが響く。山本参謀長は痛み入ります……と言い、艦隊司令長官室を出る。
たった一人の艦隊司令長官室は宇宙のように広く、そして孤独だった。
こんばんは、お疲れ様です!黒井冥斗です。いつも読んで下さる方も初めての方もお手に取ってくださり、ありがとうございます!
今日は午前中筋トレをしておりました。趣味の1つにサバゲーがあるのでそして今年も行く予定も入ってる事もあり、体力作りが必須です。ちなみにですがメインウェポンはHK417です。はい、めちゃくちゃ愛(物理)が重い嫁銃です。なので夏にやったら冗談抜きで熱中症まっしぐらコースなので秋から冬にやっております。サブウェポンのガスハンドガンは動作不良も起こしますが…
話が長くなりましたね、いつも読んでくださり、ありがとうございます!初めての方もこの作品や黒井の他の作品も読んでいただけたら幸いです!それではいい夜を!




