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プロローグ 選べなかった罰

プロローグ 選べなかった罰

俺は選べなかった。2人の女性を。

大日本聖国航空宇宙海軍大学の教室。日光がちょうどよく教科書を照らしてくれる。

俺は教官に頼まれた教本の違和感を探していた時だった。金髪の貴族風の女性が声をかけてくる。女の子らしい優しい香りもセットに俺の前に現れ、教本を覗き込む。

「レティシア……どうした?」

「どうしたも何もないだろう。今日は一緒に大日本聖国の名産品とも言えるドーナツを食べに行く約束をしたじゃないか」

彼女はレティシア・フォンデワール・アリーナ。ドイツ連邦星間帝国から来た留学生にして、この大日本聖国宇宙海軍大学のエリート学生の1人だ。

「あーごめんごめん。教官から資料を渡されてて……すぐに準備する」

「いや、このまま行くぞ。瑞香に見つかってしまう」

河野原瑞香、平民の女性だが気配り上手で成績も上々。特にあらゆる技をアリとする実戦剣道では私でも勝てない。

俺はレティシアに手を引っ張られながら、ドーナツショップまで一直線だった。

「うむ、チョコレートにするべきか……いちごチョコか……」

「悩むくらいなら全部買ったらいいんじゃない?お金ならあるでしょ?」

彼女は少し俯きながら答える。

「国民の税金で他国に留学しているんだ……貴族としてせめてお金使いくらいは……」

「はぁ、店員さん。ドーナツ全部2個ずつください」

店員さんもレティシアも驚いた顔をしたが、私の家は大日本聖国の航空宇宙海軍の設立に大きく貢献した由緒正しき軍家だ。お金には困っていない。

2人で大人数用のテーブルにドーナツを広げて食べていると子供の視線を感じる。

「坊や、食べてみるか?」

「いいの!?お姉ちゃんありがとう」

子供はドーナツを貰い喜んで親の元へと戻る。

「レティシアは優しいな。軍人よりも諜報関係に向いてないか?」

「それも検討中だ」

その時だった……

「あー!剣ちゃん!レティシアちゃんとまた二人で!!」

瑞香に見つかってしまった。彼女は物腰こそ柔らかいが、寂しがり屋なのも知っている。だから俺が選ばなくてはならなかった。

「レティシアが観光巡りをしたいという事で連れてきたんだ」

咄嗟に吐いた嘘だったが、彼女は分かっていたようだった。

「レティシアちゃん、隣座るね」

「あ、あぁ……」

瑞香はドーナツをドンドン食べながら質問する。

「それで、モグモグ、剣ちゃんは私とレティシアちゃん、モグモグ、どっちと付き合うの?モグモグそしてどっちと結婚するの?」

「まずは食べ終わってから話そうよ。ね?」

「そうね。モグモグ」

レティシアは既に満腹の様子で紅茶を飲みながら瑞香に問う。

「明日の実戦剣道の試合で勝った方が剣示と付き合えるのはどうだ?」

「いいわね。レティシアくらいなら余裕だわ」

「貴族の剣術を舐めないほうがいいぞ」

その後も2人は食い倒れになるまでドーナツを食べて、俺がタクシーを呼び大学の寮まで送った。

2人とも満腹のご様子で晩御飯の食堂には向かわなかった。無論俺もだが。

そのまま夜遅くに、相部屋の雪室月吉に今回のことを話すと、呆れられた顔と言葉が出てくる。

「全く、お前というやつは……女の子はな、自分が1番愛されたいに決まってるから取り合いになるんだよ」

「だけど仲良く出来れば2人ともハッピーなんじゃ……」

「お前は砂漠で喉が乾いてる人間2人に水の入ったコップを見せて仲良く分け合うと思うか?」

あーなるほど。分かりやすいな。

「何となく理解できた。明日の実戦剣道で勝った方に水を渡すよ」

「本当はお前が選ぶべきだがな……じゃ、おやすみ」

「あーそうだな……おやすみ」

翌日の放課後、体育武道館では大勢のギャラリーが集まっていた。

容姿端麗、貴族流剣術の免許皆伝を持つレティシアと家庭が実戦剣道の最高段位を代々継続する瑞香。そして勝者には俺と付き合うというプレゼント。男女共に見応えがあるといったところだった。

瑞香は上段切りの構えに対して、レティシアは中段から突き抜くような構えだった。

審判に選ばれたのは生徒指導部の教官だった。留学生を巻き込んだ恋沙汰という事もあり、冷静にジャッジするために、俺が頼み込んだ。

「それでは2人とも……初め!」

瑞香は軽く木剣を回し、挑発する。

無論レティシアもそれに乗って、一瞬で距離を詰める。ギャラリーの歓声が既にマックス域だった。

瑞香はギリギリで受け止めて、レティシアの目線から次の方向を予測し攻撃を防ぐ。

木刀が激しく、ガコンとぶつかり合う音と倒れたところを間一髪でかわす激しい動作。

そんな攻防戦が15分ほど続いた時だった。

互いに限界を迎え、必死に構えようとする。そんな時だった。

金髪に黒い軍服の男性達がズカズカと遠慮なく入ってくる。

「レティシア嬢、総統元帥がお呼びです。至急本国にお戻りください」

「まだ留学期間は半年残っているだろう!」

「総統元帥の命令は絶対です。連れてけ」

2人の男性がレティシアを取り押さえ、無理やり外に連れ出そうとする。

レティシアは必死に叫び、抵抗していた。そして……

「助けて!剣示!!」

俺は動けなかった……行動するという脳が心の中でさえ壊れるほど恐怖で動けなかった。

「剣ちゃん、行っちゃったね〜。これはね剣ちゃんが……選べなかった罰だよ?」

ハッ!

真っ暗な天井、私は自室の執務室の隣のベッドルームで目覚める。夢で記憶が歪められた……?あの時瑞香はそんな酷いことを言わなかった。だから私は瑞香と結婚し、希光と月姫を育てた。

月姫はまだ幼いこともあり、希光の部屋を見ると明かりがついていた。

ドアをノックすると受験勉強に勤しむ息子がいた。

「お父様、どうされましたか?」

「いや、ちょっとな……眠れなくて。お前こそこんな深夜まで勉強するもんじゃないぞ」

「でもお父様、片手にブドウ糖ドリンク2本持ってるじゃん。二人で飲む気だったんでしょ?」

意外とする洞察力の深い息子に驚きながらも、息子にも1本渡す。

「バレたか……」

2人でタブをプシュッと開ける音が鳴り、共に飲み合う。

「美味しいですねお父様」

「だな。疲れてる証拠だ……希光は何故航空宇宙海軍大学を目指す?」

息子は少し考えてから答えを出す。

「お父様みたいな強くて、権力のある優秀な軍人に憧れているから……」

「その考えでは私みたいにはなれないぞ。平和無き力は暴力、力無き平和は妄想。平和と力はセットになって初めて人々。つまり我々が守るべき存在は安寧を得ることができるわけだ。それが理解できるならお父さんのコネで入学援助するが?」

息子は再び少し考え違和感に気がつく。

「それってつまり平和無き力によく似てますね。今の僕には平和よりも軍で偉くなる事を考えていた。だから僕は平和を目指す為にも暴力にならないように、自力で頑張ります」

「流石私の息子だ。我々軍人は平和の為に日々訓練している。お前の母さん、つまり私の妻は実戦剣道では私ですら勝てなかった」

息子はむせて驚く。

まぁ、無理もない。初めて妻の実戦剣道の話をするのだから。

「え!?あの100人切りのお父様よりも!?」

「そうだ。亡くなってから2年経つがやはり寂しいか?」

息子の顔が暗くなる。しまった、私としたことが良くない質問をしてしまった。問い直そうとした時だった。

「お母様は優しすぎた……もし、お母様が生きてたら僕は違う道を選んだと思う。だから大丈夫だよ、お父様!」

息子は笑顔でこっちを向いてくれる。ただし、一滴の涙と共に。

私は瑞香と約束した、亡くなる間際、神という存在は残酷なのか、希光はインフルエンザで集中治療室には入れなかった。

そこで妻は必死に声を絞り出して、私と約束した。

「人が……自由で……何にも縛られない世界を作って……剣ちゃんの力と……希光の力があれば実現できるはずだから……四大列強の制度を終わらせて……」

この約束のために私は大学合格した息子にクーデターの支援を、約束した。

プロローグ終

まずはお手にとって頂きありがとうございます!黒井冥斗です!小説家になろうでは初めての大会のネトコン14になります。この星間国家覇権戦争は後に続くほど面白いと個人的には思っています。最初は戦闘要素少なめですがすぐに演習などが始まるので乞うご期待!

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