天香桂花に黄金を
「状況説明を」
カエデが短く説明を要求した
「はっ、正門の林に、推定巨人病の怪人が一体、裏門の池近くに狼症候群の怪人が一体屋上に不明が一体、それぞれが連携など取らずに暴れ待っているように見えます」
「参ったな…今一番隊以外は他所へ出払っているというのに」
「戦況は?」
今度はアサヒが隊員の一人に声をかける
「は!林が危険もっとも押されていて犠牲者が増え続けています、他に箇所は拮抗した状態となっており」
「よし…もうわかった、カレラ、それからケイト、灯籠院に救難要請をする」
「は?さっきまで散々」
「何を言っている人名優先だ」
驚いた、もっと冷徹で人を数としか見ていないような人だと思っていた
「では巨人病の怪人の元に私が出向きます」
なんの迷いもなく、カレラはそう答える、恩師の言動を何ら疑うことなく、信頼すら滲ませながら
「待ってよカレラ!報告なら巨人病の現場が一番危険な筈だ!そこには僕が向かう」
心の底から心配を滲ませ、カエデが必死の形相で頼み込む
「いいえ、カエデくんは不確定要素の強い、不明の怪人の元へ向かってください」
「でも……」
「カエデくん、多分討伐に一番時間がかかるのが巨人病の怪人でしょう、その相手に時間を使い君を足止めするのは非効率でしょう、だからすぐに終わるところから制圧して、他のところの応援へ言ってください」
カレラは正直これ以上カエデといたくないのだろう、必死に両手を突き出し近寄るなとアピールしている
しかし
カエデの脳内変換『すぐにほかの怪人を制圧して、私の事助けに来てくださいね!信じて待って居ます』
カエデはその訳の分からない脳内変換を受け頬を真っ赤に染め、長い睫毛を伏し顔を覆い俯く
「君は……本当に僕をやる気にさせるのが上手だね、わかった君の期待通り、すぐに終わらせて、助けに行くよ!約束する」
カエデはカレラの手を握りキラキラとしながら返事をする
「微妙にズレている気もしますが、やる気になってくれたなら……まぁいい?のでしょうか?」
お願いだから訂正してやってくれ
「なら俺は狼症候群の怪人の方に行くけど、あんたは?」
そういい、アサヒに問いかける
「私は別件だ」
「そう…ですか、はい、頑張ってください」
全面的な信頼をカレラが発する
「他所の組織に問題任せてまでやる別件かよ」
「正しい批判だ、受け入れよう、だが機密情報に当たる、おいそれと外部には漏らせん」
それだけ言うと、怪人の制圧作戦が決行された
ーー本部内林ーー
カレラは林に向かい木々の隙間を通り抜け、音のなる方へ、走り続ける
「オラァ!?んなもんかァ!?」
荒々しい叫び声と共に轟音と、銃の音がが響き渡る
「下がってください!灯籠院の白金 カレラです!応援に来ました」
「は!……ありがとうございます」
はっきりとしかし疲弊をにじませながら隊員はいった
「怪我人はすぐに建物へ!全員撤退してください」
「なんだァ?チビ?人の楽しみに水差してんじゃねぇよ!」
そう言って大きな拳を地面に振り下ろし地形を変える
カレラがそれを避けたのを見て巨人は目を見開いた
「なんだよ、やるじゃぁねぇか!最強の俺様の攻撃を避けるとか、気に入ったぜ?チビ」
「チビって、あなたから見たら誰でも小さいでしょうに……」
怪人は地面に座って居るのにも関わらずカレラ十人分は優に越える大きさを誇っており、深い緑色の髪と灰色の瞳を楽しげにユラがせ話し続ける
「んぁ?確かにな!俺が最強だもんな仕方ねぇわな!」
そういいガハハと豪快に笑い膝を叩く、その風圧でカレラ衣服が膨れ上がり、土埃で咳き込んでしまう
「俺様は最強の怪人またの名を【雲峰の怪人】ダイアン様だ!ひれ伏せ!敬え!恐怖しやがれ!ガハハ」
まるでアリの巣に木の棒を突っ込む子供のように、その言動は幼稚で野蛮で残酷だ
ダイアンは再び豪快に笑いカレラに名乗る
「んじゃぁまぁ俺様の最強伝説百と二回戦目だ!」
「!っと」
突然木を引っこ抜き、ダイアンはそれでカレラを凪払おうとした、何とか上空に飛び上がり木は回避するが、上空は巨人の領域だ
「はい!ドーン」
空中に飛び上がったカレラを平手で弾き飛ばし、何本も木をへし折りながらふっとぶ
「ガハハ!俺様の勝ちだ!」
そうダイアンが勝ち誇った瞬間吹き飛ばした木々の合間から、鋼が飛び出してきた
「ァ?んだこりゃァ?」
飛び出して来る鋼を手でつかみ動きを止めると、今度は手に絡みつき右腕を拘束される
「俺様に小細工をッ……!」
鋼を引きちぎり、叫び出す
「するなぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
絶叫が響き渡り鼓膜が震える
そして巨人は見逃す上空から落ちてくる少女に
カレラは手に鋼で作った刃を手にダイアンの肌を差し、重力を使って切込みを入れ続ける
「ぎゃぁぁぁ!?」
鬱陶しく叫びカレラは手で払われるしかし今度は鋼で壁を作り遠くまで飛ばされるのを防いだ
今度は鋼が何本も巨人めがけ針を伸ばす、そのまま巨人を滅多刺しにする
「なんの!これしき!!!!!」
それすら意に介さずカレラに拳をぶつけようとする
カレラが首につけていた大きなリボンが外れ、金髪がハラハラと崩れるように乱れる
しかし首を傾け簡単に避けられ、あまつさえ突き出した腕の勢いを使いそのまま腕に切込みが入れられた
状況は圧倒的にカレラに有利に動いてると誰もが思うだろう
しかし
「傷の治りが早すぎる」
そう、怪人にとっては痛くも痒くもないのだ
ーー本部屋上ーー
「やぁ君が怪人……と言っていいのかも分からないね」
建物の外に出て、屋上まで飛び上がり、カエデは怪人とも奇病虫とも形容できないものと相対した
カエデの到着と同時に周囲の隊員は一斉にどこかへ散る
「Mたpdjga@dg'wすmdg@gj5agmpMけ4246@8p?て?」
理解不能な言語が返される、肉塊のような醜悪なものだ
「まタさたなはtdmす52タサタケテバナか?」
「申し訳ないが僕には理解できない言語だね」
「45dpdpjなタスpなまはまpdけpMテ4!!!!」
「何か伝えようとしているのかい?」
「まさないカタカタたガかまはまスg25ヶ3175てajpj!!!!!!!!!」
それだけ言うと肉塊は周囲に飛び散り人型をとる、その人型はゆっくりカエデに近づくものや、飛びついて来るもの、こちらを意に返さず、はね周り続けるものと様々だ
しかし最も異様なのはその数だ
瞬きの間に消して狭くは無い屋上が埋めつくされる程の肉塊が作られる
「これは……少し厄介だな」
そう、彼にとっては少しなのである
カエデは腰にある刀に手を当て、目を瞑る、また一歩また一歩、できるだけ多くの肉塊が間合いに入るその瞬間
時空は切り裂かれ肉塊はバラバラにちぎれた
「残念だね、君を拘束したところで、ろくな情報を得られそうにない、とても心が痛む事だが、ここで死んでくれ」
そう言って一歩一歩詰め寄る、抵抗のように射出される肉塊も一切意に返さず切り刻み、歩みを手めることはない
「タAGDTMTMGAG@4gdagマサタナマサカス8242ケはさあや笑テ」
一歩
「Ja2682た76868342116@9gagpjすjpa4j'pdjdけdgdjてd」
一歩
「助ぁさまさや けdaJMtm1:てdapjpj/57!」
一歩
「助ーーーーーーーーーーけーーーーーーーーーて」
斬り伏せた
何事も無かったかのようにその場は静寂に包まれた
「驚いたな、まだ生きてる…だがもう何もできそうにないし…」
周りの様子を忘れ思案する
「隊長……」
近くに控えていた隊員の一人がカエデに近寄る
カエデの頬につたう鮮血が、その光景に何度も出くわす隊員すら黙らせる
「ごめんね、後処理もなあなあで」
謝罪の音がする
「死体は回収しておいて、後で灯籠院に検死で回すと思うから」
あれほど暖かいと思っていた瞳から日が消えた
「僕?あぁ僕はすぐに行かなきゃ行けないんだ、僕を待ってくれるお姫様がいるからね」
それだけを、人間らしく、恍惚と言うと、屋上から飛び降り林の方へ走っていった
聞こえていなかったのか、あえて無視したのか、この怪人にも人間にもなれなかった化け物は、一体何と言った?
ーー林ーー
手が固まってきた、関節が動かしずらくなってきた、持久戦にはあまりにも向かない自身の体に鞭をうち、身体を解す
カレラは禁錮病の適合者だ
本来自身の体が金属で覆われ、銅像のようになってしまう病である、それを制御適応することで、周囲の金属を自由に操り、多くの武器を作り出したりできる、しかし強力な能力故に、体に金属がだんだんと拡がっていき、体力配分を見誤れば、問答無用で銅像になってしまう
「なんだァ!?もうトゲトゲ出さねぇのか!?そんな程度でへばるなよ!」
頬まで広がった金属を軽く触ったが、冷たいと思う感覚まで分からなくって来ている
だがまぁ、それがなんだと言うのだ
能力が使えないならば武器で、武器が使えないのならば、手足で、手足が使えないなら牙を使ってくらいつけばいい
彼女はいつも自信なさげな表情を見せるが、その本質は苛烈極まりない、敵とみなしたならば最後まで食らいつくべきだと、己に常々言い聞かせる
足に力を込め巨人に近づく
「なんだぁ!?遅くなってんじゃねぇか?」
拳が振り上げられる
しかしカレラはそれを真正面から拳で迎え撃つ
「かってぇな!?」
普通の体ならばすぐにひしゃげるだろうが、カレラの拳は完璧に金属で覆われている
問題ない
拳をいなし、巨人の腹に重い拳がめり込む
「ガハッ!?」
さらに間合いに入り込み、もう一度、拳を振り上げ、攻撃を繰り出す
しかしそれは叶わなかった
「やぁ待ったかい?僕のお姫様!」
「か……えでくん……」
舌まで固まり、呂律が上手く回らない
目を見開き自分を抱え上げた青年の名を呼んだ
「あぁ!カエデだよ!」
カレラを横抱きにし、片腕だけで軽々と持ち上げ固まってしまった頬に触れる
「あぁ……傷がついてしまっている…しかも、随分と無理をしたんだね、こんなに拡がって…でも安心して、君の傷つけられた細胞の一切に至るまで必ず仇を打ってみせるから」
一人で独白を埋め今現在驚異とされている、巨人の一切に目もくれずに、少女の髪を空いている
「カエデくん、その」
少し動きを止めたことで、体力が回復し舌が調子を取り戻し始める
「あぁ心配しないで、もう終わっているから」
日を得た夕焼けの海が再び輝き出す
少女の一挙手一投足がこの青年に力を与えるのだ、少女のどんなに小さな表情の揺らぎもこの青年の心を強く揺らがすのだ、少女のどんなに微かな声だって、たとえ呼吸の音一つでも、青年に生きる理由をくれるのだ、だから青年は負けない、負ける理由がない
だから少女に言う、もう原因はいないんだから、怯える瞳をしなくても良いのだと
眼球に鉄砲玉を何発もくらい、再生が追いつかず悶える巨人を隊員は捕縛し、牢獄にどう入れるべきか話し合っている
誰も少女が怯える原因に気づくことは無い
あぁ、彼女の髪に刺すには月に咲くという伝説の花でも物足りないだろう
それでもそんじょそこらの花よりは幾らか、彼女の美しさに負けず咲き誇ってくれるだろう
いつなんときもそのような事ばかり考えている青年は己の思考に思わず笑みを零す
いつか黄金に天香桂花を
お疲れ様です七月です
普段小説を上げるとき、AIに壁打ちをするのですが、今回のエピソードを見せると、AIはカエデの事を人間らしいと表現します、うん、そうなんだ…
AIには少し過剰なくらいがちょうどいいらしいですね