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可惜夜にサヨナラを  作者: 七月 ナツキ
天穹は幾度と叩かれる
7/16

小暑に挨拶を


「ケイトーーー!」

灯籠院に戻ると、ツムギがダッシュで駆け寄り、勢いに任せ、ケイトは押し倒された

「お前っ……お前!どこいってたのだ!」

「悪い、ちょっと散歩に……心配させて悪かったって」

「心配!?心配なんてしてないのだ!ただミズキの唐変木がやらかしてないかソワソワしてただけなのだぞ!?」

「俺とばっちりじゃね?」

ミズキの言ってることは無視するとして

涙目で言われても説得力は無いが

「彼女が心配したかしてないかは定かでは無いが、少なくとも僕は心配したさ」

「ミナト……そういや、応援呼んでくれたのお前だろありがとう」

「うん、君が無事回復してくれて良かったよ、あぁそうだ、先生の貴重なお時間を君に使わせたとは先生が必要と判断したことだろうから、責めはしないさ、けれどそれを差し引いても、君は僕に言わなきゃ行けないことがあるだろう?」

笑顔だ、しかし圧がある、正直この短い間に経験した怖い圧ランキング上位にくい込んで来るくらいには怖い

ケイトは涙目になりながら口を開いた

「心配かけて、すみませんでした」


ーー車内ーー

「あはは……それは…災難でしたね…」

「あぁ…あの後二人に機嫌直して貰うのが大変で」

場面は打って変わって現在車内にいる、ケイトは助っ席に座り隣には、静かに苦笑する美少女が運転をしていた

横顔でもわかるほど美しい、世界で一番好きな顔は?と聞かれたら、今まで散々美形を見てきたケイトは悩むだろうが、世界で一番美しい顔は?と聞かれたら、彼女と答えるだろう

それほどまでに美しい、黄金の髪と、これまた、金を埋め込んだような輝く瞳、しかしそのどれもが嫌味に思えないほど、洗礼された色合いで、白い肌の微かな赤らみをより引き立たせる、困ったように下げられる眉すらも黄金比を取っている

しかしその美しさとは裏腹に愛想がよく性格までいいと来た

少女は白金 カレラと名乗った

ケイトは三億週くらい回って不安になる

「あのさ、もっと、こう…なんか他にいうことない?いやないならいいんだけど」

「?言いたい事?ですか?すみません…私の話つまらなかったですか?」

一瞬視線をこちらに向け、再びフロントガラスに向き直って運転し直すがカレラの長い睫毛が悲しげに下げられた

「いや…そうじゃねぇんだけど、困ったな、ここまで嬉しい説の瓦解ねぇよ」

ここで言う説とは灯籠院変人しかいない説のことだ、彼女の存在が説を否定する材料になることが嬉しくてたまらなかった

「は…はぁ……?よかったです?」

しかしカレラを混乱させてしまった、慌てて別の話題を探す

「えっと、カレラ……さん?は…」

「いえ…カレラで結構ですよ」

「うん、じゃぁカレラはここから行くとこが何処か知ってるか?」

「えっ…聞いてなかったんですか?」

「俺が聞いてないって言われると心外なんだけど!?」

「そっ…そうですよね、すみません!灯籠さんの何時もの奴ですよね!」

慌ただしく、カレラは失言の訂正をした

「えっと…これから行くのは、日本七法の一角対奇病特別対処課、通称 対奇課の本部です」

さすがのケイトも対奇課については知っている

「奇病の排除、撲滅を掲げる秩序の順次者って触れ込みの組織だろ?あんまいい噂聞かないんだが……」

対奇課はケイトにとって最も身近に感じる日本七法であった

なぜなら対奇課が掲げるのは奇病の撲滅である、大衆を守る秩序のために少数を犠牲にすることの出来る、冷徹な組織

対奇課は奇病の患者の収容、死刑を決行することも少なくないらしい

事実ケイトも孤児時代、よく追いかけ回されていた

だがまぁ、一般人から言えば現代の警察でしかないのだろう

「良くない噂ですか……うん…まぁ仕方ないのかもしれませんね」

「?」

「今回するのはただの挨拶回りですからそんなに緊張しなくてもいいですよ、奇病の適合者を一人所属させるというのは、武器を新たに保持するのとほぼ同義ですから、協力関係にある組織には連絡しておかないと、余計な不和をうみますからね」

「て言うと、対奇課と灯籠院は結構いい関係な訳?」

ほかの日本七法の関係は知らないが、少なくともモンステラといがみ合っているのは記憶に新しい

「そうですね、お互い奇病を無くそうとしているのは事実ですし、やり方はともかく、ある意味最終目的は一緒ですし」

確かにそうとも言えるのかもしれ無いが、灯籠院は患者を救うことを目的としているのに対して、対奇課は奇病にかかっていない大衆を救うことを目的としているため、ケイトには全く違う目的に見えてならなかった

「ん?てか挨拶回りならミズキが来ないでいいのか?」

「あぁ……灯籠さんは…『トップは気軽に出歩いては行けないものなんだぜ?』と言いながら、気軽にクレープを買いに行きました」

様子が目に浮かぶようで、辛い

俯き顔を青くするカレラには苦労人の気配が漂っていた

すると目的地に着いたようでカレラは車を止め、ケイトの手を握る

「心配しないでください!私パイプ役として頑張るので!」

「パイプ役?」

「うん……はい、そうです、パイプ役…」

自分にその事実を馴染ませるように、呟く

「私の恩師が幹部をしているので、私が一番対奇課と関係が深いと思います」


ーー対奇課本部ーー

車を降り、長い石畳の道を歩いて行くと、どんどん大きくなっていく建物が威圧感をまして行く

ついに大きな扉の前に来た

「あのさ、カレラ……」

「はっ……はい…ケイトくん、なんでしょう?」

二人が青ざめ汗を流しているのは、初夏の暑さが原因では無い

「挨拶ってこんな壮大にやるものだっけ?」

そう石畳の道には武装した警察が綺麗に列をなし、2人を出迎えたのだ

「……えっと……対奇課は構成員が日本七法の中で一番多く、圧倒的なマンパワーを持っています、なのでこんな方法で力を示している……だと思うんですが…」

「いつ来てもこんな感じ?!今日たまたま訓練と何とかで、教官がトイレにいってて動けないとかじゃない?!」

一縷の希望を託し、カレラに質問する

「あ……えと……その……もっと慣れとくべきですよね……すみません!」

何時もこんならしい

「安心して、カレラが気にすることではないよ」

「それもそうだな、こんなもん絶対慣れねぇから、諦めて目的済ませて……誰?」

気がつくと会話に知らない青年の声が混じっていた、青年は紅葉のように真っ赤な髪の毛が少し癖が着いたように曲がりふわふわとした質感をしていて、優しく、しかし力強さを感じる夕焼けの西日を閉じ込めたようなオレンジの瞳がそこに立っていた

触れば焼けて、死んでしまいそうな心地になるその男はニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべている

少しデザインが違うが、ほかの対奇課の構成員と似たような軍服を来ているため、対奇課の構成員なのだろう

「ケイトくん、彼はカエデくんと言いまして……その……なんというか…」

「あぁ嬉しい、君の口で僕の紹介がされるなんて、夢見心地だよ、結婚しよう」

「あっ…うん、察したわ」

この好青年然とした男、ヤバいやつだ

「失礼、ただいまご紹介に預かった、対奇課一番隊隊長、若木 カエデだよろしく頼むよ」

そのまま差し出された手を握り握手をする

「あぁ……ケイトっす」

誰だこいつ、さっきの求婚発言をした人間と同じ人物か?一瞬で誰かと入れ替わらなかったか?

つか隊長って

「では、ケイトくん早く用事を済ませて早く帰りましょう」

そう言っていそいそと建物の奥へ歩いて行った、全面的にその意見に賛成なので急いで後を追う

「あぁ…待ってよカレラ、そこは少し段差があるよ、僕が手を引くから、そんなに急がないで」

「介護老人かよ」

「いや、カレラはまだまだ若々しくてとても美しいよ、あっでも、カレラがおばあちゃんになった姿もきっと愛らしいんだろう、うん…素敵だ、カレラ老後は孫たちに囲まれて幸せな暮らしをしよう!」

「あの一言でここまで飛ぶもんなの?」

「カエデくんの頭はいつだって飛んでいますよ」

そっか……苦労してきたんだな

しばらく歩くと明らかにほかの部屋よりも数段階高級そうな部屋に着いた

「ここですね」

「総長室?」

「あぁ、ここにいつもは総長が居るんだけれど、あいにく今日は不在でね」

あっ…まともになった

「不在?いいのかよ、組織間の問題なんだからそういうとこしっかりしなくて」

「総長は『トップがいきなり出張っても緊張させるだけでしょ?』と言い残されて、クレープを買いに行ったよ」

「どっかで聞いたことある話!?」

「安心してくれ、我らが新たな盟友くんよ、今は副総長が待っていらっしゃるから」

カエデは扉をノックし失礼しますと扉を開けた

「お義父さん!カレラと、灯籠院の新人くんを連れてきました!」

勢いよくカエデが扉を開けると何かが顔の横をすごい速さで通り過ぎた

よく見ればそれはカエデに投げられたものだとわかる、カエデはそれを最小限の動きで躱し、そのとばっちりがケイトに降りかかったわけだ

投げられたナイフは壁に綺麗に刺さっていた

「お見事、今日もいい精度ですね!」

「貴様がふざけたことを言わなければ、ここまで腕が上がることはなかった筈だが?」

苛立たしげに眉間に皺を寄せ男は机の前に立ちその机を指で叩く

男はケイトよりも上背があり、がっしりとした体型をしていた、菫青石の瞳を伏せ、形のいい眉に皺をいっぱいに溜め込み、刈り上げてある深い紺の髪の毛をガシガシとかいた、

そしてそれを辞め舌打ちをしながら机の前に置いてある、高級そうなソファーの片側に座り、足を組む

顎で早く向かいのソファーに座れと指示される

縮こまりながらソファーに座りカレラが横に立った

カエデは男の右斜め後ろに立った

「対奇課副総長 竜胆 アサヒだ、本日はうちの阿呆総長に変わり、挨拶を受けさせて頂く」

自分とこのトップ阿呆呼ばわりしやがったぞこいつ

ケイトは自分のことを棚に上げ、そう思う

「えぇ……本日はお日柄もよく……」

「あ?」

ヒョエッ!?

何だこのオッサン!あまりにも怖いぞ!?

「お義父さんはまだ二十一だよ」

「二十一!?えッ二十一!?老けすぎだろ!?三十は超えて無いとこうはならねぇだろ!?」

「そうか、そうかお前たちはそんなに俺を怒らせたいか」

貧乏ゆすりまでし始め、いよいよ限界が近そうである

てかしれっと心を読まれた気がする

「えぇ…灯籠院に新しく所属します、ケイト、あっ……苗字はないです…おなしゃ……お願いします」

「うむ…了解した、挨拶ついでに幾つか質問させて貰うが構わないだろう?」

カレラの方を見る、真っ青な顔をブンブンと横に振り、全力拒否の姿勢を示す

だよな俺もそう思う

このような圧を出すほか組織の人間の口車に馬鹿正直に乗る必要は無い

「えっとー…せっかくのお話なんすけど、俺たち先を急いでるもんでして「いいんじゃないかな!ゆっくりしていけばいいよ!」

ふざけんなよ!?

なんだコイツら、灯籠院の胃を潰して遠回しに灯籠院の壊滅狙ってんじゃねぇの!?

カエデがキラキラとした表情で、ケイトの台詞をぶった切った

こいつ、話を長引かせたいだけだろ

「そうか、答えてくれるか、協力感謝する」

明らかに笑顔が笑っていないよ?

「先生?ケイトくんを疑ってるんですか?」

「ん?先生?アサヒさんが例の?」

「元だがな、数年前は教職に着いていた、もっとも私の元に残った教え子など彼女くらいだが……」

なるほど……だからお義父さん、カエデの気持ち悪さが際立ち、質問したことをすこし後悔した

「さて、君を疑っているのかという話だったな、結論から言えば我々は君の存在を疑問視している」

室内に先程とはまた違う重苦しさがのしかかる

「我々にとって、奇病の適合者でも無いものが、奇病を複数体内に所持し、あまつさえそれを、ある程度封じ込めることができるなど、人間の枠に入らない、怪人として排除するべきという見方もある」

「待ってください、ケイトくんが怪人だなんて」

カレラが止めに入るしかしアサヒは止まらない

「対奇法度第八条、対奇課職員は怪人の疑いがかかったものに対し厳正に処分を下さねばならない、彼が怪人である可能性がゼロではない限り、我々は怪しきは罰さなくてはならない、他でもない大衆の明日のために、それについて、我々、対奇病特別対処課は、指導者である灯籠ミズキ及び当事者であるケイトに直接説明を求める」

「もし拒否したら?」

「その場合、君の存在を怪人と認めたとして、対奇課総出で排除する」

何をとは聞く気は起きなかった

「友好的って聞いてたんだけど?」

「察してください、これで友好的なんです」

これで…ね

日本七法の関係はケイトが思うよりずっと悪いらしい

「では質問に移る、君の出自は?」

「日比谷市の日比谷街で物心ついた時から浮浪児だ」

ちなみに日比谷街はシャッター商店街で、現代のスラムとなっている

「よろしい、次、君が現在体内に保持している奇病の数と種類、症状を説明しなさい」

「今は二個、老若病と軟体病、老若病は体力が無くなると五歳くらいのガキになる、軟体病は今のところ人より体が柔らかくなるくらい」

「了解した、次、お前はモンステラの指導者、園長石南 ヒビキと接触した、これに間違いは無いか」

「あぁ、間違いない」

「何を聞かれたか聞いても?」

「拒否権ねぇんだろ?いちいち聞くな、ミズキについて聞かれたよ、俺にとってアイツはなんに見えるってな」

「返答は?」

「普通の人間だって答えたよ」

「………………そうか、では最後だ」

含みを持って、最後の質問を紡ぐ

「お前は灯籠院で何がしたい、何が成したい」

藪から棒だった、一瞬何が聞かれたか分からなくて、フラフラと、酩酊する感覚すらあった

「俺……っは……」

突然の轟音が鳴り響き、誰かが部屋に駆け込んでくる

「副総長!カエデ隊長!対奇課の敷地内に奇病の怪人が確認されました!」

文字通り、部屋を震撼させ、警報が鳴り響いた

お疲れ様です七月です

昨日はサボりましたがばれてないはず…だよね?


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