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消された証言

「何だと!?四人も死んだ!?」



王宮の執務室で、アーロンは右腕のウィリアムズから報告を受け、思わず声を荒げた。



カレル森で逮捕された十一人の麻薬団員は、

この一か月間、ディル薬による麻薬依存症の治療に励んでいた。



治療は過酷ではあるものの、体調も精神状態も徐々に改善していると、

つい先日まで報告を受けていたのだ。



騎士の一人は、十一人がディル薬を飲み込む様子を「地獄絵図だ」と表現していたが、

それでも彼らは毎日、必死に治療を続けていると聞いていた。



「予定よりも早く完治する可能性があります」


そんな明るい見通しさえ伝えられていた。



治療の初期には、数人がその苦しさに耐えきれず、暴れたり、自害しようとしてディル薬を拒否することもあった。



だが、仲間が次第に正気を取り戻していく姿を目にし、「自分も……」と思うようになったのだろう。



現在では、十一人全員が素直に薬を飲み、治療に取り組んでいるという話だった。



取り調べでも、以前のような妄言は減り、受け答えは明らかにまともになってきている。



ボスの特定には至っていないものの、十一人は口を揃えて「仲介人」の存在を覚えていると証言していた。



その仲介人は、カレル森の小屋に何度か姿を見せており、

リーダー格の団員は、麻薬の製法や分量について何度も話し合ったことがあるという。



――その人物が誰なのか、アーロンにはすでに心当たりがあった。



現在、極秘裏に騎士たちに裏捜査を命じている。



もしアーロンの予想通りなら、相手は手強い。



確かな証拠がなければ、簡単に逮捕できる人物ではない。



だが今回は、十一人全員が「カレル森の小屋で見た」と証言している。



今度こそ、何としてでも捕らえたい。



……はぁ。



麻薬事件の捜査は、少しずつではあるが、確実に前へ進んでいる。



ボスの逮捕は難しくとも、せめて仲介人を捕まえることができれば、

アーロンの胸に刺さった一本の棘を抜くことができるはずだった。



ディル薬は、味だけでなく匂いも強烈だ。



一度、勇敢な騎士が試しに口にしたことがあるが、

丸一日味覚がなくなり、「史上最凶の薬だ」と喚いていた。



そんな激烈な薬を、十一人は毎日三回、

大きなバケツに入ったものを震えながら飲み、吐き、それでも耐え続けていた。



その姿に、騎士たちは次第に彼らへ好感を抱くようになった、とも聞いている。





しかし今朝――。



担当医がいつも通り様子を見に行くと、十一人全員がベッドで眠っているように見えた。



だが、誰一人として動かず、声をかけても反応はなかったという。



医師が異変を感じ、慌てて近づいて確認すると、全員の顔色は真っ青だった。



すぐに看護師と騎士を呼び、救命処置が施された。



助かったのは七人。



残る四人は、医師が小屋に到着する前に、すでに息を引き取っていたという。



死因は、まだ判明していない。



昨日の夕方までは、いつも通りディル薬を飲み、吐き、

ふらふらになりながらもベッドに戻り、夕食を取っていた――



そう報告されていたばかりだった。



「死因は、まだはっきりしていません。ただ、医者はディル薬の副作用の可能性が高いと言っています」


「十一人全員に、たまたま同じ副作用が出るか?おかしくないか……」


アーロンは眉をひそめる。


「リーマの村の人間の話では、

そんな症状は一切なかったというのに……怪しいな……。

ひょっとして……」



「――ひょっとして、"口封じ"でしょうか?」


「あぁ。その可能性は高い。あの十一人は下っ端だ。

結局、謎の仲介人までの情報しか持っていない。

だが、念には念を――というところだろう」


アーロンは小さく息を吐いた。


「しかしな……あの十一人の治療の件は、ごく限られた人間しか知らないはずだ」


「王宮内部の誰かの仕業、という可能性でしょうか?」


内部リークの可能性は、かなり濃厚だ。


だが、事前に徹底した対策をしていなかったため、特定は容易ではない。



――失態だな。



「今後は内部の情報漏洩に細心の注意を払え。十大大臣であっても例外ではない。

リーマの一言がきっかけで、ロランとバロウズがカレル森を調査することを勧めていた……。

あの二人は密偵ではないはずだが……」


アーロンは続ける。



「ナイゲル大臣も含め、他の大臣たちも調べておいてくれ」



ナイゲル大臣――



最近、ラウリー・ブレイズ子爵の後任として農務省大臣に就いた、ナイゲル・ウェルズ男爵。



平民出身ながら王城で働き始めて以来、数々の功績を積み重ね、自らの実力で爵位を授与された人物だ。



長年王族に仕え、忠誠心も実績も申し分ない。



王もまた、彼に大きな期待を寄せて農務省を任せている。



「承知いたしました」



「それと、あの十一人に関わった騎士、医者、看護師――全員洗い出せ」



「承知いたしました」



「……あの四人の死因については、一度リーマに意見を聞いてみよう」



アーロンは一瞬、言葉を切った。



「だが……リーマに死体を見せるのは、少々気が引けるな」



「確かに……」



ウィリアムズが頷く。



「リーマお嬢様は、恐らくそのようなものをご覧になったことはないでしょうし……

あんな残酷な光景を、あの可愛らしいお方に見せるのは躊躇われますね」



「だが、仕方がない」



アーロンは決断する。



「カイテルに、リーマを病院まで連れて行くよう伝えてくれ。今すぐだ」



「カイテル様ですか?……すぐご理解いただけるといいのですが」



ウィリアムズは苦笑した。



「あいつは過保護すぎる。

だがリーマは、決してか弱い女性じゃない。

むしろ好奇心が旺盛で、遺体を見たがる可能性すらある」



「……仰る通りですね」



「国防省大臣の命令だと言えばいい」



これだと、父親としてではなく、上司としての立場になる。



アーロンは呆れたように肩をすくめた。



「それでも文句を言うなら、"他の騎士に行かせる"と言え。

そうすれば、あいつはすぐに連れて行くだろう」



「ふふふっ……そうですね。では、すぐカイテル様にお伝えして参ります」

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