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【6万PV 感謝感謝!】記憶を失くした少女は、それでも生きていく。  作者: あまね


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あの人が笑う理由

*姉妹*


レオの暴走事件が終わり、レンブラント姉妹は少し後ろを歩きながら、前方でマーティス、カイテル、リーマが談笑している様子を眺めていた。


「……カイテル様が、笑っている……」

バーバラがぽつりと呟いた。


「……お姉様、そろそろカイテル様を諦めたほうがいいんじゃないですか?」


ナディアは、ずっと胸にしまってきた言葉を、ようやく口にした。


妹として姉の恋を応援したい気持ちはあった。

けれど、第三者として見続けてきたからこそ、分かってしまう。


——この恋は、実らない。


「私は昔からカイテル様を慕っているよ。

あの女が後から来たのに……どうして私が諦めなきゃいけないの?」


バーバラは、今にも泣き出しそうな声で言った。

バーバラは幼い頃からカイテルに恋をしていた。


家同士の付き合いも深く、互いの屋敷を行き来するのは当たり前だった。

アーロン小父様もジョゼフィン小父様もバーバラを可愛がり、彼女の想いも知っていた。


カイテルが自分を妹のように思っていることも、理解している。


それでも——

もし両家から結婚を勧められたなら、断らないはずだと、信じていた。


昔からの付き合い。

大貴族同士の結婚。

それは誰にとっても望ましい未来だった。


バーバラは、いつかカイテルと結婚するのだと、疑いもしなかった。


——それなのに。


ある日を境に、カイテルは変わった。

仕事以外のことに、まるで興味を示さなくなったのだ。

何度メイソン家を訪ねても、話しかけても、どこか上の空。

アーロン小父様とジョゼフィン小父様の態度まで変わった。


理由は……

カイテルが、ある女性に恋をしてしまったから。


それを聞いた時、バーバラは強い衝撃を受けた。

女性に興味を示さなかったカイテルが、恋をするなんて——。


「リーマ嬢は、後から来たというより……」

ナディアは一度言葉を切り、慎重に続ける。


「カイテル様が、ずっと一方的に想ってきた相手なんです。

……あの二人は、本来なら二度と会えないはずでした。

それでも再び出会ったんですから……誰にも引き離せないと思います」


「……それに……どうして、あんなにきれいなの?」


バーバラは俯いた。

自分の容姿には自信があった。

縁談も多く、社交界でも注目される存在だ。

どの令嬢にも負けない——そう思っていた。


けれど今日、初めてリーマを見た瞬間、その自信は音を立てて崩れた。


「お姉様もお綺麗ですよ。社交界でも大人気じゃないですか」


「あの女……別に化粧も着飾りもしていないのに……」

悔しそうに、バーバラは呟く。


「ねぇ、どうしてあの子があんなにきれいなの?

まさか、女性に興味がなかったカイテル様が、美人好きだったなんて……

私じゃ、足りないの?」


「お姉様は、何もしなくてもきれいですよ」

ナディアは柔らかく微笑んだ。


「毎日見ていますから。私が一番よく知っています」


頭も良く、礼儀作法も完璧で、優しい。

ナディアにとって、バーバラは誇りだった。


だからこそ——

こんなふうに自信を失った姉を見るのは、初めてだった。


「じゃあ……どうして、カイテル様は私を選んでくれないの……」

涙を滲ませながら、バーバラは言う。


「私は侯爵家の娘よ。

あの女は平民なのに……

どうして私が、あんな平民に負けるの?」


「……カイテル様は、外見や階級で人を選ぶ方ではないと思います」

ナディアは静かに答えた。

「ただ、リーマ嬢のことを想っている。それだけです」


「あの日から、カイテル様は笑わなくなった……

でも今は、あんなに幸せそうで……」

バーバラの声が震える。


「約束があると聞いても、絶対に会わないと思っていた。

ずっと、望みがあると信じていたのに……

あんなふうに笑うカイテル様を見たら……もう、勝てない……」

涙が、静かに頬を伝った。


「リーマ嬢のことを、もっと知れば……お姉様もきっと好きになると思います。

お兄様もあんなにリーマ嬢を可愛がっていますから、きっといい人ですよ」


「……それが問題なのよ、ナディア」

バーバラは苦しそうに笑う。


「きれいで、性格も良くて、みんなに好かれて……

性格が悪ければ、よかったのに……

そんな人に、私は勝てないでしょう?」


「……ほらほら。屋敷に着きましたよ」


ナディアは姉の腕を取り、優しく促した。



バーバラは小さくため息をつき、妹に導かれるまま屋敷の中へ入っていった。


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