拉致事件 pt.5
私は力ある限り、抵抗しようとした。私はその犯人たちを蹴ったりして、助けを求めて叫ぼうとしたけど、口を押えられてまったく叫べないし、私の抵抗はまったく効果がない。
「おとなしくしろ!」男の声が聞こえたと同時にお腹に激痛が走った。私はお腹を殴られ、ものすごく痛くて、抵抗する気力がなくなった。
この男たちは私を馬車か何かに放り込むと、馬車を走らせ、どこかに向かって移動している。馬車がかなりの速度で走っていて、道も荒くて、馬車の揺れでお腹がすごく痛みを感じる。最悪だ。
私が誰かにどこかに拉致されたのだ。マジで最悪だ。今カイテルさんは私を心配しているかもしれない。私が拉致されたのに気付いてくれているかな。
私の視界が急に明るくなって、周りが真っ白になって何も見えなかった。
「おぉー、最上級の女を取ってきたじゃないか!」私の視界がだんだん明るさに慣れてくると、男が3人もいるのがわかった。1人の男が私の顔を見てニヤニヤしているのが見えた。私はさすがに怖くなった。
「へぇ〜、これを売るのか?もったいないな。せっかくこのレベルを手に入れたんだから、俺たちで楽しもうよ」もう1人の男は私の頬をなでなでしている。カイテルさんの手と違って、こいつの手はすごく気持ち悪い。カイテルさん、助けて・・・
「そうだな〜。拠点についたら、俺らで商品を検品しようじゃないか」1人目の男は私の顔を掴んで、ニヤッとしながら下品なことを言った。
「優しくしてやるから、安心しろ、ヒッヒッヒッ」マジでマジで最悪だ。カイテルさん、お願い、助けて。
馬車はどこかの倉庫の前で止まり、私はこいつらに倉庫の中まで引っ張って行かれた。倉庫の中には誘拐団の仲間が3人もいた。こいつらは私の顔を見るとニヤッとし、3人とも私のところに歩いてきて、下品な言葉を吐き始めた。
「へぇ〜なぁこの女、売らずに俺らで取っておこうか?最近発散していないし、この女に俺らを慰めてもらおうよ」こいつが私の顔を触りながら、汚い言葉を吐いた。こいつの手はマジで気持ち悪い。
「一発目でこんないい女が取れたとはさすが王都だね〜。すげぇ可愛がってやるから、安心してね〜」こいつの言葉を聞いて私はまったく安心できないのだ。
「やべぇな、この女の目すげぇそそるぞ〜」この1時間で私はずっと下品な言葉を聞かされてそろそろ吐き気がしてきそうだ。
『ガオッーー』倉庫の奥から動物の吠える声が聞こえた。私はそこを見ると大きい虎2匹が起き上がっているのが見えた。その2匹の虎の首輪は柱に繋がっている。その虎ちゃんたちは私を見てうれしそうな顔をしたと同時に怒ってもいる。おそらくこの下品な6人の男に怒っていると思う。よかった、少なくともここに私の味方がいるわ。虎ちゃんがいて本当によかった。虎ちゃんならこいつらをなんとかしてくれるかもしれない。その虎ちゃんたちの首輪の鍵を探して外さなければならない。その首輪の鍵を見つけなければ・・・でもどうやって見つけるのかしら・・・
幸い私は手も足も縛られていない。何とか戦って自分を守って逃げられるかもしれない。とりあえず今はおとなしくして、チャンスを待とう。
私は自分のできることを考えた。カイテルさんたちが助けに来てくれるまで自分の身を守ること。そしてその虎ちゃんの首輪を外すこと、まずこの2つだね。でも虎ちゃんの鍵はどうやって・・・
私は虎ちゃんの近くにある檻に放り込まれた。檻の中には他の女性7人が座り込んでいる。女性たちはすごく怯えていて、お互い抱きしめている。近くに虎も下品な男もいるから、怖いよね。私だって自分が生き残れるのかと考えると戦慄してしまうのだ。
もう何時間経ったのかしら。ずっと檻の中にじっと座っているから、時間の感覚がまったくない。倉庫の窓から見ると、外はもう暗くなっていた。
暗くなると、今までずっと壁の裏に隠れていた動物がだんだん巣から出てきた。ネズミたちがあちこち走り回り始めている。
あっラッキーだわ!檻の女の人たちはまたお互いを抱きしめ、ネズミたちを避けようとしているけど、私にとってはとてもいいことだ。ネズミちゃんたちに私のところまで来てもらわないと。
周りが暗くなったおかげで、この檻もかなり暗くなった。私はこれからちょっと怪しい行動を取っても、こいつらに気づかれないかもしれない。今は大チャンスだ。
「ここ、ネズミが多くてうっとうしいよな。女の怖い顔がそそるけどさ」
「そろそろこいつらとやらない?俺、さっきの女希望だ」
「リーダーが戻ってきたら、聞いてみよう。ふふっリーダーだってそうしたいんだろうね。俺たちはリーダーの後だな」
「楽しみ~。いっぱい可愛がってやるわ」
「その女が壊れないようにしろよ~」
こいつらの気持ち悪い声を聞きながら、私は低く口笛を吹いてネズミちゃんたちを呼んだ。村にもたくさんネズミがいて、私はよくネズミたちと遊んでいたから、このネズミたちとも仲良くなれるはずだ。
ネズミちゃんたちが私の口笛が聞こえ、私のほうに振り向くと、思っていた通り3匹のネズミが私のところに走ってきて、私にすりすりしてくれる。可愛いね。
「ねぇ、私が虎ちゃんの首輪を外したいんだけど、鍵はどこにあるかわかる?」
私はものすごく小さな声でネズミちゃんたちに話した。ネズミちゃんは頷いた・・ように見える。
「知っているのね?その鍵で虎ちゃんの首輪を外してくれる?」
私がもう1回ネズミちゃんたちにものすごく小さな声で聞くと、ネズミちゃんたちはまた頷いた。
「ありがとう~。じゃこの檻の鍵もお願いできる?」
ネズミちゃんたちが頷いてさっそく行動してくれた。私はじっとネズミちゃんたちの動きを見届ける。あの男たちがずっと下品な話で盛り上がっているおかげで、誰もネズミちゃんたちに気付いていない。よかった!
その時、倉庫の窓に鳩が留まっていた。私はもう一つやるべきことを思い出して、口笛でその鳩を呼んだ。村でも屋敷の庭でもよく鳩とか雀とか燕とか遊んでいるから、この鳩ちゃんも私に懐いてくれるはず。案の定鳩ちゃんは私のところに飛んできてくれた。
私は前にカイテルさんが買ってくれた髪飾りを何とかその鳩ちゃんの足に付けた。鳩ちゃんにこの髪飾りを騎士団本部に届けてもらおう。もしかしてカイテルさんと他のお兄さんたちは騎士団本部にいるかもしれない。メイソン家に届けてもらおうと一瞬思ったけど、私はどうやって場所を教えればいいかわからない。
「この髪飾りを騎士団の本部まで持っていってくれる?」
鳩ちゃんは首を傾げた。騎士団の本部なんてどこなのか知らないのよね〜。ごめんね〜。
「じゃ、王城を知っている?」
鳩ちゃんは頷いた。
「よかった。王城の中にある赤い旗のある建物のところまでもっていってくれる?」
鳩ちゃんは戸惑った顔をした。ちょっと難しいかもしれない。もうちょっとわかりやすく伝えないと。
「王城の中に赤い旗を立てた建物があるのよ」
私がここまで教えると、鳩ちゃんは理解したように頷いた。
「その赤い旗を立てた建物まで行ってほしいの」
鳩ちゃんは私の言ったことを理解したように頷いた。
「その建物の1階の窓を探して中に入るのよ」
鳩ちゃんはまた頷いた。騎士団本部の建物は常に扉を閉めるから、この鳩ちゃんは堂々と扉から中に入れない。私が騎士団本部まで常備薬を届けに行くとき、鐘を鳴らさないと扉を開けてくれなかったから、よく覚えている。
「あの建物の中にいる誰かにこの髪飾りを見せて、注意を引いて」
鳩ちゃんは微妙な顔をした。さすがにここは難しいよね。でも髪飾りを騎士団本部まで持っていけば終わりじゃないの。騎士にここに来てもらわないと私とこの7人の女性は大変なの。
「あの建物の中にいる人たちをここに連れてきて」
鳩ちゃんは自信無げに頷いた。
「この髪飾りをあの人たちに見せれば大丈夫だよ。自信をもって」
この髪飾りのことを知っているのはお兄さんたちだけなんだけどね・・・運よくお兄さんたちに会えばいいんだけど・・・
「おいっ!何をぶつぶつ言ってんだよ!?」誘拐団の1人が檻のほうに歩いてきた。
「早く行って!」私が小さい声で鳩ちゃんに言うと、鳩ちゃんがすぐ檻を出て、窓から倉庫を出て飛んで行った。
「鳥か?へぇ〜寂しいのか〜?今夜俺、一晩中添い寝してやるからちょっと待っていてね〜」こいつがニヤニヤして歩いて行った。ふぅ〜。