第5話 即落ち2コマじゃつまらない。
「・・・今日ここに来たのは、なにもアナタと争うためではありません。」
ようやく彼女は本題に入った。
「アナタは何者なんですか?なんですかあの力は。」
大体想像どうりの質問が飛んできた。
いや、彼女にはほぼ何もできず、一発くらって負けただけだが。
しかし、質問があるのは俺も同じだった。
「俺も聞きたいことがありまして。」
「では交換条件成立ということでいいですね!」
王女さんはニッコリ笑った。
やはり女性の喜ぶ顔というのは反則だと思う。
しょうがない。
あまり自分の力について話したくはないが、相手は王女だ。
王都がピンチになったときとかに、戦闘員の能力を知らないのも大変だろうし。
「俺の力はですね・・・強い”意志の力”を中心に、様々な流派の剣の技などを素手で使ったりしているかんじですな。」
そう、これだけだ。
実は特殊な技など一つも使っていないのだ。(幻覚)
これが自分の力について話したくない理由だ。
結局根幹にあるのは、生まれ持った才能だよりの戦い方。
しかし彼女は、
「それは興味深いですね・・・。」
と真剣に聞いてくれていた。
「正直がっかりしたでしょう。才能だよりで。」
だが、何というか、自分が良くないと思っていることを、彼女が良いと思うのが気にいらなかった。
そのせいか吐き捨てるように言ってしまった。
「それは、私もです。」
彼女は真っ直ぐこっちを見て、言った。
何故か目をそらせない。
「聞いたかもしれませんが、私は、魔法の恐怖症みたいなもので、正面にしか高ランク魔法が打てないのです。あなたは才能を、それに噛み合う剣技をもって増幅させています。私のような人間より、よっぽど地力があると思いますよ。」
と、励まされてしまった。
いや、俺が落ち込んでる理由の9割はその、地力が勝っているはずの相手に一発で倒されたからなんですが・・・。
でも、励ましにはなった。
「ありがとうございます、なんかまたその、明日からも頑張る。」
「そう、勝手にして。・・・ゴホン。
それはそうとして・・・あなたが言う”意志の力”とは闘気のことなのでないでしょうか?」
「おい隠しきれてないぞ、もう少し頑張れや。
ってのはまあよくて、多分闘気に関しての話は、そうだと思います。」
俺だって自分の力のルーツを知ろうと昔色々調べたので、それくらいは分かる。
でも違うところもある。
それは、うちのの家系の人間がみんな生まれつき会得していて、自在に操れてしまうところだ。
闘気は剣士が長い鍛錬の末に会得するものだと言われている。
明らかに使用難易度が違う。
「まあ、私が今日聞きたかったのはこれくらいです。では。」
彼女はそういって出ていこうとする。
「いやちょっと待てや。」
手を掴んで止める。
なに?誰? みたいな顔をされた。
誰? はなくね、誰? は。
「いやあの、交換条件って言ってませんでした、おたく?」
「チッ・・・・・何?」
ばれたか・・・ じゃないのよ。
コッチにも質問がある。
「俺を倒した、あの技は何なのでしょう?」
純粋に聞きたかったことを聞いた。
なのに、
「は?・・・アナタもしかして、魔法ってご存じない?」
と、驚愕の表情で聞き返された。
「魔法って、空想上のものでは?」
とさらにそこに聞き返す。
「それ何年前の、・・・ああ、そういえばアナタのお家は追放されていましたね。多分その間に誕生・発展したのでしょう。」
何ともないように彼女はそう言った。
しかし、俺には衝撃だった。
この世界に、魔法があったのだ。
魔法はおとぎ話の世界の力で、この世にはないと19年間思ってきた。
あるのならば今すぐにでも習得したい。
正直剣技よりそっちの方が極めたい。
俺は今人生の19年間で一番興奮していた。
我に返り、
「どうやったら、魔法を習得できる!!?文書とかあると助かるんだけれども!!!」
と肩を掴んで詰め寄る。多分我に返れてはいない。
「きゃっ!!近いわ!!!」
王女はびっくりして後ろに下がり続ける。
しかし俺はそれに対して前進し続ける。
「王の宮殿だったらあるとか?本屋に言ったらあるのか?」
質問に質問を重ねる。
すると限界だったのか、
「近い!!!!無礼者!!!!!くたばれぇ!!!!!!」
バシッ
とビンタを繰り出せれ、くらった俺は後ろに吹っ飛んだ。
い・・・いてぇ・・・。
「し・・・失礼しました・・・。」
「もういいです!質問は魔法の文書があるところでしたね!王宮にいったらあるわ!」
といい、慌てて部屋から出ていく。
「送りましょうか~」
と後ろから声をかけるも、
「結構です!」
と叫び声で返されてしまった。
「・・あちゃ~、やらかしたかも。まあ何にせよ、明日から魔法が学べる!」
それが一番嬉しかった。
正直秘書見習いの仕事など、王宮に入るための口実に過ぎないと思うくらいには。
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「なんなんですか・・。丁寧なカンジかと思えば、急に近づいてきたり・・・。」
ぶつぶつ言いながらせかせかと彼女、王女クレアは王都を歩く。
ついさきほど彼、レックス・シュミットの部屋から出てきたばかりだ。
普段、周りの人間が純潔を守ろうと色々対策していることもあってか、彼の行動は、初心は彼女には刺激が強すぎた。
(お父様と話していた時、すごい丁寧でもしかしたら結構良い人なのかもと思っていたのに~~~)
どうにもならない思いを抱え、とうとう彼女は頬を抑えて蹲ってしまった。
少しの間があり、彼女は何もなかったように立ち上がる。
「ふう。結局彼がなんだというのですか。ただの執事見習いです。落ち着きなさい、クレア。」
と自分に言い聞かせた。
そして、
「疲れましたね。甘いものでも食べて帰りますか。」
と言い、動こうとした。
しかし、蹲っていた間に王女だとバレたのか、周りに人だかりができていた。
流石に少しはクレアから距離をとっているが、結構な数いる。
自由に動ける状況ではなくなっていたのだ。
(ヤバい!王女は不用意に外出しちゃいけないのに・・・)
周りには色々な視線とそれとともに感情があった。
好意、興味、・・・・敵意!
とっさに敵意を察知し彼女はその場から離れようとするも、それ以外の人たちが多すぎた。
正直、賊にとって王女ほど好都合な人間はいない。
そもそも女性ゆえに非力なので、拉致りやすいし、逃げられる可能性も低い。
さらに父親である国王は、娘を人質にさえとってしまえば大半の命令を聞くしかなくなる。
じりじりと多方向から敵意が迫る。
(魔法で対抗するしか・・・。でも、そうすると善良な市民まで・・・・)
彼女にとれる対抗策はなかった。
彼女には。
そしてついに、その敵意の元凶たちが取り巻きの円の内側に出てきた。
「本物の王女だぜ。ぐひひひ」
「ああ、こりゃ金のにおいがぷんぷんする」
賊は喋りながら、一斉にナイフを取り出した。
そのとき、
どこからかこの人だかりを抜けて、いつ着替えたのか聖騎士風な姿のレックスが現れ、彼女の前に跪いて手を差し伸べ、こう言った。
「王女様、ここは危険にございます。ここからわたくしが、安全に王宮までお連れ致します。」
彼女はあっけにとられながら、笑ってその手をとった。
え~、恋愛系の描写は苦手な桂移作です。どうも。
正直即落ち2コマで良くない?とずっと思っていましたが、さすがに話が薄くなるかなと思い、頭をうならせながら書きました。
どうでしたか?
まあもう少しもどかしいカンジが続くんですけども。
補足:王都
・この人界一の大都市。
王宮というか王の城が中心。
無駄に広いせいで、王都内にも貧民や賊みたいのが結構いる。
怪しい店なんかも立ち並んでたりする。