第3話 望む人間
アタシの名前はエミー。
年は彼と同じく19歳。
身長は165くらいで、年々彼に近づいていて、最近は焦っているように見える。
生まれははずれの地の農村で、幼少期から彼と共に過ごしてきた。
彼はいつも自身があってかっこいいし、大人びていた。
そして、彼はいわゆる神童だった。
彼はよく、この世界には”意志の力”と”感情の力”の2つと言っていたが、彼以外からそんな話聞いたことがなかった。
”感情の力”は辛うじてひいおじいちゃんが知っていて、感情の昂ぶりが様々な効果をもたらすらしい、と教えてくれた。
「感情とは人と関わったときに発生する摩擦だ。エミー、誰かのために怒れる、悲しめる人間になりなさい。」
と、ひいおじいちゃんは口癖のように言っていた。
多分、感情の力に関することだったのだろうと今更思う。
アタシは頭がよくない。
しかし、”意志の力”は本当に誰も知らなかったし、彼はあまり自分の力を見せたがらない。
しかしアタシは彼に近づきたかった。
彼はいずれ冒険者になるのだろう。
その横にアタシはいたかった。
調べに調べて、ついに見つけた手がかりは”闘気”だった。
・闘気・・・剣士が、己の剣に、そして戦いに集中したときに纏うもので、王
都でも数少ない剣士しか習得していない神業。
と文献には書いてあった。そして闘気は、赤色らしいとも書いてあった。
昔、この村で強盗事件が多発して、犯人が裏山のゴブリンだと分かり、彼がひとりでむかってゴブリンを倒してしまったとき、こっそり見た戦闘中の姿も鮮やかな赤色を纏っていた。
その瞬間から私の目標は剣士になることになった。
15歳になってから彼も剣士志望だったので、アタシたちは一緒に少し遠くの道場に生き始めた。
もとから親の手伝いで農業をしていたこともあり、他の子より筋力があったアタシは上達がはやかった。
でも、いつまでたっても彼には届かなかった。
彼は初日で師範と打ち込み稽古をし、1ヶ月もする頃には、師範と真剣で対等に戦えていた。
やはり戦っているときの彼は、鮮やかな赤色を纏っていて、師範も驚いていた。
そして、いつしか彼は学ぶことがなくなり、道場を去ってしまった。
アタシは一人道場で稽古に打ち込み続けた。
そんなこんなで、気が付いたら19歳になっていた。時の流れ早っ!
この村では、20歳になると成人の儀が行われて、自由にどこへでも行けるようになってしまう。
彼は20歳になったらすぐにこの村を出て行ってしまうだろう。
つまりそれまでにアタシは強くなる必要があった。
強くなるために、いつものように彼と会っていたのを週末だけにした。
一緒にお風呂に入って、剣について語り合う回数も少なくなってしまった。
まあ、いつも彼はいやらしい目でこちらを見てくるで話にならないが・・。
彼は最初は残念そうだったが、アタシの考えを理解して、賛成してくれた。
その分週末のお風呂での彼の目は野獣じみたものを感じるが・・・。
そして今日は週末。
一週間ぶりにあうのでちょっと緊張しつつも、彼の豪邸に小走りで向かうと、門の前に必要ないサイズの馬車が停まっていた。
こんなはずれの地に、なんとも珍しいものが来ているあたり、さすがシュミット家、さすがレックス。⇐関係ない
とりあえずレックスはどこだろうと近づくと、なんと眠っている状態のレックスが馬車の中にいて、無表情な女がよこに座っている。
直感的に彼を助けなければと思い、アタシは
「レックスをどこに連れて行く気だ!」
と叫んで馬車の前に立ちふさがった。
彼をどこかに連れていくつもりなら、傍観などできない。
中の女と目が合った。
こちらに興味がなさそうな目だった。
慌てて馬車の護衛兵らしき者たちが集まってきてアタシにこういった。
「彼は才能があると王様に認められたんだ。もう一度会うためには、お嬢ちゃんも強くなって王都に来ればいいのさ。」
と。反射的にアタシは
「じゃあ、アタシも頑張る!」
と返し馬車の前からどき、馬車を見送ってしまった。
悲しかった。
けど、やっぱりすごいなと思った。
・・・アタシは必ず、王都へ行く。彼に会う。
そう、強く誓った。
次くらいから本格的にストーリーが進んでいきます(じゃあ今までのはなんだったんや)
長めの補足タイム:意志の力、感情の力ってなんぞや?説明キボンヌ
作中一番の謎ポイントですが、簡単に言えば両方バフです。
・意志の力は、一般的に闘気と呼ばれ、”鍛えた剣士が纏える”とよくいわれます
が、実際は意志が真っ直ぐであることが纏う本当の条件で、剣士は精神を鍛え
るので意志が真っ直ぐになりやすいという話です。
主な効果として次行う行動への補正がかかります。
冒険者の中には長年の修行により魔術師でも纏えるものもおり、その場合魔法
の威力が増大するなどの恩恵がえられます。
デメリットとしては、弱気になると絶対に使えません。
主人公のシュミット家はこの意志の力を自在に纏える一族です。半分チートや
ん。
・感情の力は、感情の昂ぶりが本人の次行う動作に影響を与えるようなもので、
まあ単純に怒ったら力が強くなったりする感じです。
意志の力との決定的な違いは、感情の力は渡したりもらったりすることが可能
という点で、零話のムットラックさんは、人界中の感情の力を自分に集めるこ
とによって力を増幅させ、新たな人界を創ろうとしているわけです。