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【お休み中】創造前夜 ~The Eve of Creation~  作者: 桂 移作
第一章 エッジ・ザ・ドッパー編
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第2話 望まれる人間

 私はクレア。

 今年で17歳になります。

 

 こう見えても実は王女で、王都では知らない人はいません。

 だから、最近は王都を散歩することができなくなってしまって残念とも感じています。


 職業は魔法師で、腕は・・・まあそこそこ。

 

 身長は150くらい。

 もう少しほしいと思いながらも、魔法師は小柄になりやすいといわれているので、しょうがないことだとは理解しています。


 胸は・・・逆にもう少し栄養素を身長に回してほしいというのがホンネです。

 お母様は大きいし、尚且つ王族が”大きいのが好き”というのはよく知られた話なので、遺伝的にしょうがない部分はあるとは理解していますが・・・。


 チッ・・・エロ親父が・・・・・。  ゴホン!!


 

 そんな私の人生は、しょうがないところではありますが窮屈なものです。 


 王族としてのしかかる期待に、応え続けることなど当然で、いつでも優秀でい続ける必要があります。

 他の同年代に比べて、圧倒的に忙しいのに。


 

 そんなつらい日々の支えは、私の夢です。


 私の夢は理想の男性に出会うこと。

 

 具体的に言うならば、常に落ち着いて物事を判断できて、強い正義感があり、やると約束した事は何としてでもやり、平和に命を懸けられ、目上に敬意がはらえ、年下に優しい、そんな人と一緒に生きていきたいのです。要求が多い?そんなことはありません。(断言)


 政略結婚が多い王族の娘としては、高望みかもしれませんが・・・。

 

 夢は人生を豊かにします。

 ただ、夢を見るということは同時に、そうでない現実を知るということです。

 

 この夢は、私の心の奥底に閉まって大切に保管しているのです。

 




 最近の王族としての仕事といえば、お父様が私を自慢したいらしく、外向きのものを数多く持ってこられて、多忙な日々を過ごしています。


 

 今日などは、


 「昔の名家、シュミット家の子がどうやら凄まじい才能の持ち主らしい。なんと魔力を使用せずに魔法の真似事ができると聞く。ぜひ王都で使ってやって下さいという親からの手紙も届いておることだし、クレア、迎えにいってやってくれぁ!(ドヤ顔)」



 などと薄ら寒いおやじギャグを最後に引っさげて、うちの一族が自ら進んで追い出した貴族のことを、”昔の名家”などと言い張り、恥ずかし気もなくまた王都で働かせようと言い出したのです。


 薄ら寒いのはアンタの頭皮だけで十分だわ。・・・失礼。


 しかし、仕事は仕事。

 私はそのシュミット家という者たちが住む農村に護衛兵達と向かいました。



 その家は、農村にあるにしては規格外に大きく、きっと中の住民も態度が規格外に大きいのだろうと、少しめんどくさく思いながらも例の男を外に呼び出します。


 例の男はたしかに好青年でしたが、がさつな空気感が抜けず、来客に対する対応も雑で、いかにも私が嫌うタイプだったのです。


 運命の相手とかが現れるようなカンジでしょ普通は!


「レックス・シュミットさん。あなたは、王都の宮殿での勤務が決定いたしました。いまからおつれいたします。」


 テンプレ通り、事務的に仕事を済ませようとこう述べました。

 この農村は結構王都から離れているので、はやく帰りたいという気持ちが高まり、踵を返して馬車の前に立ち、男に乗るように促します。


 男の方は、両親に荷物を渡されてようやく自覚が沸いたのか、値踏みするような目でこちらを見て、立ち止まって少し考えるようなしぐさを取り始めました。

 (うわぁめんどくさいタイプだ・・・別にそこまで期待してないし)

 なんて内心で思いだしたその時、


「いや、俺は王都にいく気はない。けど、俺に勝てたらいいぜ。」と。


 唐突に男は言いました。


 流石に寛大な私でも少しピリつきます。

 だって男は、”望んで王都に来る”と聞いていたのです。

 

 そういう、自分の力をいちいち誇示するタイプか~。

 私が嫌いな人種です。


 などと考えていると男が何かを呟き、赤いオーラ?に囲われだし、失礼にも私に対して構えました。

 しかも素手で!


「身体強化魔法・・・?見たことのないかかりかた・・・。」


 驚いたのは、男のその魔法は私がいままで見たことがないものだったからです。

 さらにまず前提として、支援系身体強化魔法は自分にかかりません。

 男は自分の魔法らしきもので、自分を強化したのです。

 

 なんで?なんで?どういう原理??



 ・・・悩んだすえに、私は答えにたどり着きます。


 それは、”闘気”でした。

 優れた剣士などが、己の剣に、そして戦いに集中したときに纏うもので、王都でも数少ない剣士しか習得していない神業です。

 しかし男はそれを、剣を構えずしてやってのけたのです。


 焦りすぎて逆に冷静な私の体は、反射的に魔法杖を取り出していました。

 その瞬間男が、


「なめるな!」

 

 と叫んで距離を詰めてきました。

 

「あーあ。あいつ王女様に正面から行ったぜw」


 後ろから小さい声で護衛兵が言い、数人が苦笑しました。



 そう、私はーーーーーーーー


 私は、過度の期待や自分自身でかけた重圧によって、強力な魔法は使えても、正面に真っすぐうつことしかできないのです。

 それが、私の実力。

 それが、こんな損な仕事ばかり回される理由。



 しかし男は、私に正面から向かってきました。

 故意か偶然かは知りませんが。


 そして私は落ち着いて水の弾を生成し、何故か驚いた顔をして立ち止まる男の顔面に撃ち込み、気絶させました。

 

 その時、何故か私は心がスッキリしました。

 なぜだろう、多分、真っ向勝負をすれば私より強いだろうと思っていた相手に勝ったからでしょうか。

 そんなことを考えると、そこに横たわる彼に、少しだけ感謝の心が沸きました。

 

 もしかしたら、彼はわざと負けたのかもしれない。

 あの闘気、素手で構える自身、最後の急な立ち止まり。

 

「彼は、・・・強いのかもしれない。」


 なんて呟いて。


 後ろで少し護衛兵が笑っていました。

 許さん。

 

「はやく彼を馬車へ」


 と命じて、馬車の内部にひきずりこませ、彼の両親へ挨拶をしました。


 挨拶したといっても、


「では。」と言ったら「よろしくお願いいたします。」


 と返されただけだけですが。

 多分母親としか会話していないと思います。

 父親と思わしき人物は、自分の息子が負けたと信じられないのか、ショックでうずくまっていましたので。

 

 めんどくさい人間は無視!と、決め切って私も馬車に乗り、王都へ出発しようとしたその時、後ろから唐突に怒鳴られました。


「レックスをどこに連れて行く気だ!」


 声の主は女でした。

 多分農村の。

 そして彼が好きなのでしょう、真っすぐ走ってきて、馬車の前で手を広げました。

 

 護衛兵たちが慌てて彼女の前に集まり落ち着かせているのを見ながら、ぼぅっとしていると、


「じゃあ、私も頑張る!」


 と言って、女はニコニコで引き返していきました。

 護衛兵が彼女に何を言ったか気にはなりますが、どうでもよいことです。


 そのあとは私は寝てしまったので覚えていませんが、王都へ着きました。



 そして、また同じような日々が明日からも続いてゆくのでしょう。


明日あたりからしばらく投稿ペースが上がるかもしれないです。


補足:クレアは、読んでわかる通り淑女に見えて、(別に見えない)結構ドギ

   ツイ性格をしています。

   なんということもなく、私の性癖です。・・・・おい。

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