第11話 道草がおいしい。
外にでてきた。
クレアが待っていて、合流する。
「とりあえず、お父様に事のいきさつを話しにいきましょう。」
「そうですね。」
未だにクレアに対しては敬語で話している。
まあ一応王女だし。
「そこの方!」
歩き出したとき、後ろから声をかけられた。
「総隊長様は、どうなったのですか・・・。」
どうやら軍の人間のようだ。
後ろに数人集まっている。
多分デッグがキレたときに脱出した奴らだろう。
「彼は死んだ。ただ、満足そうだったよ。」
見たとおり、やったとおりに答える。
なるべく早くこの場を離れたかった。
だってなんかキレて襲い掛かってきそうじゃん、こういうヤツら。
「ま・・・まさか・・・」
「そんなことが・・・」
さすがに驚いていた。
だが、悲壮感などはあまり感じられなかった。
「お前らは、俺に襲い掛かってこないんだな。」
若干からかうように言ってみた。
先頭の奴がちょっと笑って言った。
「私たちは自分の感情をできるだけ殺して、命令に従えるようにとトレーニングしてきたので。無論完璧ではなくとも、総隊長が死んでも、雇用主が変わるだけとしか感じないんです。」
「ただ、世界最強に最も近いと言われた総隊長様が倒されたというのは驚きですけどね。」
ちょっとかなり衝撃的なことを、あっさり言われた。
しかしどこかで納得してもいた。
優れた軍人というものは、敵を殺すときに一切の躊躇をしない。
デッグはまさにそういう軍を作りたかったのだろう。
そういう意味で言うならば、ラシードは普通に失敗作なのだ。
アイツは才能はあっても、感情に起伏がありすぎる。
しかし、自分の教育に染まらなかった彼こそが、次の総隊長にふさわしいと思ったのだろうか。
今になって、デッグも色々考えていたんだなと分かる。
「感情がない割には、さっきはあっさり逃げてたな(笑)」
バシッ
どうでもいいところでつっかかり、クレアに頭をたたかれる。
「いって・・・・ごめんて・・。
あ、そうだ、次の総隊長は多分ラシードだ。もう感情を抑えるとやらはやらなくてもいいと思うぞ。」
遺言はまず王に伝えるべきと思っているので具体的な根拠は言えなかったが、一応それらしく匂わせておく。
「そうですね、私たちもそうなると思っています。」
ニコッと軍の人は返してくれた。
なんだよカッコいいじゃん。
「ではまた・・・。」
言って俺たちは分かれる。
所詮俺たちは住む世界が違う人間だ、変なところで意気投合しても困る。
お互いが深く干渉せずに立ち去った。
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「何事も起こらなくてよかった~。」
歩き出してから、自然に言葉が出た。
「いやアナタ現総隊長を殺してましたよ!」
つっこまれた。
「そうですね。」
笑って帰す。
「それにしても、立場が、力が、あそこまで人を変えてしまうとは・・・。」
さっきから思っていたことを口にする。
「多分デッグの奴、根は誇りを持った真っすぐな青年だったと思うんですよ。」
クレアが驚いた。
「信じられませんわ、あんなクズが。」
ちょっとひどい。
いやだいぶひどい。
「だから俺も怖いんだ。もしかしたら自分も将来、ああなってしまうかもしれないということが・・・。」
自分の手を見て言った。
結構本気で怖かった。
クレアがこっちを覗き込んできた。
「そんなときは、私がアナタを止めてあげます。」
ちょっと驚いてクレアを見た。
クレアは笑った。
「そうですね・・・。頼みます。」
俺も笑った。
思えばこれが、2人の初めての約束だったかもしれない。
どうも、桂移作です。
第11話、どうでしたでしょうか。
え、短い?・・・ちょうど区切り良く終わろうと思ったらこうなってしまいました。
まあ、次の話も読めば良いだけです!(終わってる戦略)
最近の悩みは、(誰も聞いてない)
タイトルが思いつかないことですね。
なんで、なろうの名作たちは各話のタイトルがうまいんでしょうか。
正直内容考えるより大変。