表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お義姉様は、僕が守る

作者: ジュレヌク

五万字の短編の次は、千文字の短編に挑戦

 号外だよー


 空を舞い、石畳に落ちた藁半紙


 そこには、王太子と聖女の真実の愛が、魅了魔法による幻であったことが克明に書かれていた。

 事実が発覚したきっかけは、王太子の婚約者セリーヌ・ファビアスの一言からだった。


「天使の涙の使用をお許しください」


 それは、教会が莫大な寄付金と引き換えにしか配らない『自白剤』だ。嘘を吐くと歳をとり、正しいことを述べると若返るという。

 高位貴族の奥様方の中には、若返りの妙薬として欲するものも居たが、飲む量によっては若返り過ぎて、この世から消滅する可能性すらある。


 だが、セリーヌは、偽証で固められた断罪劇に一矢報いるためにも、死地に飛び込むしかない。


 王太子の卒業を祝うパーティー会場で、セリーヌは、自白剤を自ら一気飲みした。


そして、滔々と語りだした。


「私は、聖女様を虐めてなどおりません。殿下を愛したこともありません。この婚約を破棄したいのは私の方です。陛下、どうぞ、ご配慮を賜りたく存じ上げます」


その途端、彼女の体は光りだし、徐々に縮んでいった。


「こりぇで、まんじょくいただけたかしりゃ?(これで満足頂けたかしら?)」


 ドレスに埋もれるセリーヌは、その身を以て無実を証明した。


 そんなセリーヌの前に飛び出したのは、四歳の義弟。一人娘であるセリーヌが王室に嫁ぐ為に、親戚筋から養子としてファビアス家に入った少年アトラスだ。


「おねぇしゃまは、ぼくが、まもりゅ!(お義姉様は、僕が守る)」

「あとりゃしゅ!」

「おねーたま!」


 ヒシッと抱き合う幼児の愛らしさと、顔面蒼白の王太子達の対比が酷い。

 周りにいる者達も、ほっこりしつつも軽蔑の眼差しを向けるという難しい立ち位置だ。


 「王太子を廃位し、第二王子を王太子とする」


 そう言うしかない王は、やけっぱちだ。


「では、あたくちの、あらたにゃこんにゃくしゃは、あとりゃすといぅことで、よろしいでしゅか?(では、私の新たな婚約者は、アトラスということで、宜しいですか?)」

「許す!」

「めいよかいふくのために、ごうがいのはっこうをようぼうします(名誉回復の為に号外の発行を要望します)」

「許す!と言うか、急に滑舌が良くなっていないか?」

「きのせいで、ごじゃいましゅ(気のせいで御座います)」


 なんだか釈然としない王だったが、力量不足だった第一王子を廃し、有能な第二王子を跡継ぎに出来たので、スルーすることにした。


 微笑み合う幼児達が結婚するまで、後十四年必要だった。


ラジオで流れたら嬉しいなぁ

五万字の短編も、良かったら読んでみてください

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
もしかしなくてもこのご令嬢は、冤罪を逆手にとって薬を飲んで無実を証明すると同時に、可愛い義弟と釣り合う年齢まで若返ったのでしょうね。 どこまでが仕込みか分かりませんが、外枠も内枠もがっちり固められて、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ