タバコ?
「ジンゴロウ殿、もうしばらく行くと、植え込みがあります。タイミングを読んで、私が合図をします。そこで荷車から降りてください」
「分かった。ありがとう」
「それから」
アルゼンは静かに言葉を続ける。
「私どもが納品場所につきましたら、タバコを吸います」
「タバコ?」
「はい。その火を荷の緩衝材に使っている干しワラに移します。たいそうな煙が上がるでしょう。きっと城内の監視の兵士たちの目と関心は、このボヤに移るでしょう。そのとき、ジンゴロウ殿たちは、植え込みから一気に東に走ってください。ゴデブリン大臣の住む東の塔へとたどり着きます。ご武運を」
「アルゼン……本当にありがとう」
俺は小声で感謝を述べた。
パンパンッ。
アルゼンが荷車を二回叩く。
俺たち四人は素早く荷車から飛び降り、植え込みへと身を隠した。
しばらく植え込みで息を殺す。
どれくらいたっただろうか。遠くに煙が上がるのが見えた。兵士たちの喧噪が聞こえる。
俺たちが隠れている植え込みの前も、見回りの兵士たちが数名、煙の上がっている方向へと走り去っていった。東の塔の周辺の警備兵だろうか。いまが手薄になっているはずだ。
「よし! 行こう!」
俺たちは植え込みから飛び出し、まっすぐに東へと走る。
「見えた! あれが東の塔だ! って、塔の入口にまだ兵士いるじゃん!」
固定の警備なのだろうか、石造りの東の塔の入り口には、兵士が二名、槍を携えて立っていた。




