俺は、不幸だった! 元居た世界で!
「すごく怖い顔をしていたから、思わず声をかけてしまったよ」
ヒミの祖母は心配そうに眉毛をハの字にし、俺を見つめる。
なんでだろう。この人には虚勢を張れない。
「あ、はい、その、実は、人の幸せ・不幸を決めるのは何かなー、なんて、難しいことを考えていまして」
「ほほほ、そんなの答えは簡単だよ。幸か不幸かは、その人が決めることなんじゃよ」
フォルと同じ答えだ。なにか引っかかる。
「……でも過去は変えられないですよ」
「それも、正解」
正解? 認めるの?
「でも、いまこの瞬間からの、未来は変えられるはずだよ」
ヒミの祖母はヒヒッといたずらっ子のように笑った。その笑顔からは、若い時にやんちゃだった雰囲気が伝わってくる。
なぜだろう。なんだか分からないが、その言葉が俺の胸の中にしみこんでくる。
そして、イナズマのように、考えがまとまった。
―そうだ! 過去は変えられない! でも、これからの人生、何をどう生きるのか、それを決めるのは俺だ! 自分が幸せか、不幸かを決めるのは俺なんだ! ―
ついに俺の中に、一つの答えが見つかった。そんな気がする。こうしてはいられない、何をどうしたらいいのか、どう伝えたらいいのか分からない。でも、いますぐにフォルに会いたい! そんな気持ちが沸き起こってくる。
そんな俺の表情を読み取ったのか、ヒミの祖母がまたいたずらっぽく笑う。
「行くのかい?」
「はい! なんだか、少し、分かった気がするんで! じゃ、あの、また!」
「またね」
俺はダッシュでカフェ・グッドラックへ向かう。
速く走りすぎて、息が切れる。
でも、止まれない。ゆっくり走りたくない。おれは息を切らしながら考えを声に出す。
「はぁっ、はぁっ。俺は、不幸だった! 元居た世界で! それは変えられない!」




