表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/136

・じゃあ、俺だけで走って逃げよう。そうすりゃあ助かるぜ

 大通りは大パニックへと陥った。


 人々は我先へと、町の外へと逃げ出そうと、門の方へと殺到していく。


「なんてついてないんだ、俺は」


 俺はもう一度、頭上を見上げた。空には巨大な召喚獣バハムートが羽ばたいている。


 その巨大な口の中には真っ白い光のエネルギーが充てんされているようだ。

 

 シュオオオオォォォォ・・・・・・・。


 なんだか甲高い音が響いている。


 こんな光景は見たことがない。でも、直感的にわかるさ。魔法だか何だかは、わからないけれど、アレは俺の知らない未知の高エネルギーの塊だ。そうだろう?


 あの口から、エネルギー弾がビームみたいに発射され、それが地面に直撃したら、半径数百メートルは灰燼に帰す、というワケだろう。


 その時、俺はどうなる?


「俺は、死ぬ!」


 異世界に転移してきたばかりで、どうしてこんな目にあわなければいけないんだ。


「ゴオオオオオォォォォ・・・・・・・・・・!」


 これまた頭上から轟音がとどろく。


 後ろを振り返れば、これまた伝説の召喚獣である、大地の巨人ゴーレムがおたけびをあげている。


「おいおい、どんだけでかいんだ。五十メートルはあるんじゃないか?」

 こいつが少し足を動かすだけで、辺りは地震が起こりまくりだ。とても立っていられない。さっきから、ずっと俺はよろよろとこけまくりだ。見なよ、この町の人々もよろよろしてる。


 次々にレンガや石造りの中世ヨーロッパのような町並みの家々が崩れだしている。


 もし、このゴーレムがダンスでも踊りだした日にゃあ、やっぱり町が消滅するのは目に見えている。


 ボボボボボボォォォ!


 はい、そしてこちら、俺の目の前でかめ○め派でも繰り出しそうなポーズで真っ赤に燃え盛っていらっしゃるのが、やっぱり伝説の召喚獣イフリートだ。


 体長は3メートルってところ。


 わかってるって、背は低いけど、どうせ強いんだろ? 


 その手の中の火球を打ち出したら、大爆発ってわけさ。


 おまけにどういうわけか、その目線は俺の方を向いているし。


 俺に一目ぼれでもしちゃったわけ?


 町の人々はゴーレムの起こす地震でぐらつきながらも、我先へと逃げ出していく。


 だが、本当に門の外まで逃げたところで、助かるのだろうか……。でも、逃げるしかない! 


「俺たちも逃げないと……! ラル!」


 俺は爆風で倒れていたラルの手を引っ張り、引き起こす。


「い、痛っ!」


 立ち上がりかけたラルが、地面にへたり込んだ。


「どうした、大丈夫か?」


「あ、足が……。どうやら足をひねってしまったみたいだ」


 見るとラルの足首が真っ赤にはれている。どうもラルのアンタッチャブルアーマーは攻撃は確かに自動回避するようだが、自分で足をひねったり、抱き着いたり、手を握ったりと言った、攻撃っぽくないものは回避できないのかもしれない。


「ラル、俺の背中に乗れ!」


「ありがとうジンゴロウ! でも、あたいのことはいい! あたいよりあそこのこども達を頼む!」


 ラルが指さした先には大通りで遊んでいたのか、小さなこども達が数人うずくまって泣いていた。

「し、しかし! お前は死ぬぞ!」


「いいんだ! これもメルクリン家の宿命。弱き者の盾となる、それが我が一族の務め!」


 ラルの瞳は強く光っていた。何のことかはよくわからないが、ラルの決意が固いことはわかる。そして、その気高さが、何物にも代えがたいほど、素晴らしいことも。


 絶対に助けたい! 心の底からその気持ちが沸き起こる。


 だが、困ったぞ。ラルを背負って逃げるにも、俺の体力じゃあ、門の外まで逃げ切れるかどうか分からない。


 ましてや、こども達を背負うこともできはしないだろう。


 もたもたしてたら、俺はここで死んでしまうだろう。


『じゃあ、俺だけで走って逃げよう。そうすりゃあ助かるぜ』


 俺の頭の中で声が響く。


 いつもネガティブなことばっかり言う、俺だ。


お読みいただき、ありがとうございます。

もしよろしければ、下の 【☆☆☆☆☆】にて『ポイント評価』をお願いいたします。

面白くなければ星1つ【★☆☆☆☆】にてお願いいたします。

皆様の率直な評価を参考に、次回のお話に生かしていきたいと思います。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ