えっと、そこに、その、タダで泊まれるのか?
「えへへっ、いいでしょ。町の人たちが、どうぞってくれたの。断ったんだけどね。どうしてもっていうから。ありがたくお受けしたの」
フォルはくるりと一回りして見せた。ますます女神さま感がアップしている。
「そうそう。もうフォルはこのダバラの町の人気者さ。さあ、ジンゴロウ、宿へ行くぞ!」
やはりみんな幸運の女神さまのご利益にあずかりたいのだろうか。
「いいなあ。フォルは」
俺なんて異世界にやってきたときのままのジャージ姿だ。この異世界に来てからもらったものと言えば、日本円に換算して5百憶円の大借金くらいか。とほほ。
俺はとぼとぼとラルの案内について行った。
◇
「ここさ! あたいたちの今夜の宿は!」
「うおおぉ! 超すげえ! 高級ホテルじゃんか!」
ダバラの町の被害の少なかったゾーンでは、多くの建物が残っていた。やはり召喚獣ゴーレムの地震は局所的なものらしい。
そしてその中でもひときわ立派な中世ヨーロッパの貴族の別荘のような建物が、今夜の宿だということだった。
広いバラ園と噴水のあるホテルだ。なんて美しいのだろう。あいにくと日は沈みかかっている。でもこの美しさは俺にだってわかる。
「フォル様とラル様のご一考様でいらっしゃいますね」
邸内からかわいらしいメイドさんが数人出てきた。そしてうやうやしく二人にアレコレと解説をしている。
「フォル様とラル様のお部屋は最上階のキングルームでございます」
「ああ、あそこか。あたいもあそこに泊まるのは久しぶりだな」
「泊まったことあるのか?」
「メルクリン家の皆様には、時折利用していただいております。もっとも普段は王侯貴族様ばかりが使用する部屋でございます。ですのでこのアカラの王国でも最上級のもてなしと、自負しております」
「えっと、そこに、その、タダで泊まれるのか?」
俺はフォルが心配になった。俺はもちろん無一文だが、フォルも言っていることが本当なら、
この世界に着任したばかりの女神なのだから、一文無しの可能性がある。




