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俺も、いつかあんな大人になりたい

「ああラル、行こう! マッチョ、ヒミさんちょっと行ってくる!」


 二人はにこやかに微笑んだ。そして東の塔の門をバタンと閉めた。二人が兵士たちの侵入を阻止してくれる。


 ああ、かっこいい大人だな。俺も、いつかあんな大人になりたい。


 俺とラルは、一気に塔の上階へと昇る。石造りのらせん状の階段の空気は少しひんやりとしていた。


 石造りの塔だが、まったくかび臭くはない。新築ってところだ。足が少し痛くなってきた。この世界には当然ながらエレベーターやエスカレーターはない。塔の上階に住んでいるいわゆる金持ちたちは、足腰が相当強いのかもしれない。


 おかしいな。途中の階にいくつも部屋があるが、誰もいないぞ。


「なあラル、なんで護衛の兵士が一人ももいないんだ? 今更だけど、本当に最上階にゴデブリン大臣とフォルはいるのか? 留守とかそんなんじゃないのか?」


「いや、きっといる! 金持ちは人から遠ざかる! 人が嫌いになる! 金持ちになればなるほど、そうなる! もし大臣がいなければ、自分の資産の盗難を警戒して、警備の兵士がたくさんいるはずだ! 警備がいないのは、ゴデブリン大臣がいて、人払いをしている証拠だ!」


「そ、そうなのか。な、なんで、金持ちになるとそんな風になるんだ?」


「それはあたいにはわからない! でも、メルクリン家にいる時、イヤというほどそういう金持ちを見てきた! 金持ちになればなるほど、小さなことに感動しなくなる。おいしいものを食べても喜ばない! 貧しい人を見下す!」


 ラルはなんだか怒っているみたいだった。


「あたいはそうはなりたくない! みんなとちょっとしたことで笑い合いたい! 道端の花に感動したい! 近所の定食屋のご飯を美味しく食べたい! だから! あたいはメルクリン家を出たんだ!」


「そ、そうだったのか」


「そうだ! そして、あたいが人間らしく生きるには、ジンゴロウとフォルが絶対に必要だ! だから、あたいは絶対にフォルをゴデブリン大臣から取り戻す!」


 俺は元居た世界でずっとお金持ちになりたかった。お金持ちになれば、何か変わると思っていた。でも、それはどうやら悪い方に変わるみたいだ。


 いまならわかる。幸せを決めるのはお金じゃない。 


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