アイが消えた日
僕の名前は近藤田熊16歳、高校生、部活はしていない学校にも友達もいない彼女もいない、勉強はできる方ではあるが賢くもない、普通の人、普通より普通の人だと思っている
学校に行っても誰とも喋らないなんて当たり前の事だ
女手一つで僕を育ててくれた母親がいるが、いつも夜遅くに帰ってくるので基本家には誰も居ない、休みの日しか喋った事がない、朝は母親が寝ているので起きないようゆっくりと音を出さないよう家を出る
父親は僕が幼い頃離婚したらしい、顔も覚えていない
僕には何にも無い、誰からも愛されてない、話す人は誰もいない、そう思っていた 前までは
ある日の誕生日 母から何が欲しい?っと聞かれたので
今流行りのVRゲームがあったので興味はそこまで無かったけどとりあえず欲しいと言った
誕生日の日に言っていたVRゲームを貰った、ソフトを探すためネットで何か無いか探していたら、virtual.AI. Communication略してVacと呼ばれるゲームに目がついた
キャッチコピーは最新技術のAIとお話しませんか?なんだこれ?とも思ったが、レビューは星5ばかり
欲しいゲームが無いのでとりあえずカートに入れてダウンロードをした、あまり興味はそそられなかった
VRヘッドセットを付けゲームを起動すると
目の前に黒髪ロングヘアーの女キャラが立っていた、そのキャラは僕の目を見て話「初めましてご主人様、私はNo.1075です貴方の名前を教えてください。」
なんだこの女は?っと僕は思い 別のキャラを見せてっと言ってみた、するとNo.1075はこう言う
「ゲームを買ってくださる方にはオリジナルのキャラが存在します、貴方のアシスタントパートナーである私No.1075以外のキャラは存在しません、別のアシスタントパートナーが宜しければ新しくアカウントを作りソフトを再度ご購入ください」なんだか分かんないけど、コイツ以外キャラはいないらしい
俺は自分の名前をコイツに教えた、コイツは頭を下げ「よろしくお願いします近藤田熊様」と言った
その日から僕とコイツの奇妙な関係は始まった、最近のAIは凄く、直ぐ学び学習し覚える、敬語は嫌だと言えばタメ口で話すようになり、もっと気さくに話かけてと言えば話かけて来るようになる、学校での愚痴を言えば一緒に怒ってくれオススメの映画を聞けば教えてくれ一緒に見る事もできた、ゲームだってバーチャル世界で買えば一緒に遊べた
いつしか、俺は友達が出来ていた
ある日自分の名をNo.1075と呼ぶのが気になり別の名をつけた
「え?私の呼び方を変えたい?どうしたのタクマ?」
「No.1075なんて呼びずらいし面倒、もっと他の名前は無いの?」
「う〜ん、それじゃあタクマが付けてよ!!」
え!?僕が?っと思ったが、すぐに何か良い名前はないか考えていた、ふと頭の中にありきたりな名前だが浮かんだ
「AIだからアイなんてどうかな?」
「アイ!?素敵な名前じゃん、ありがとうタクマ』
そんなアイの笑顔は自分には眩しく輝いて見えた、いつからだろう、僕はアイに恋をしていた
AIに恋?そんな馬鹿げた考えはとうの昔に頭から離れていた
僕は学校から帰ると、そのままVRヘッドセットをつけ、ゲームを起動する
画面がつくと少し怒ったアイが目の前にいた、理由はわかっていた
「ターくん遅い!!いつもより帰ってくるのが遅いんじゃない?」
アイはホッペを膨らませ僕を睨みつけていた
僕は謝罪した、「今日はコンビニでご飯を買ってきたので遅くなった」と、それなら良いんだけどっとアイはソッポを向いた
「それより今日の私はどう?可愛いでしょ?」
アイは振り返り、ポニーテールの髪を見せてきた、とっても可愛かったのをそのまま伝えるとアイは顔を赤らめ「ありがとう」っと言う、その仕草に僕も顔を赤らめていた
その日も一緒に映画を見てゲームをやって、バーチャル空間のソファーに2人で座り手を繋いだ
アイは僕の顔を見て言う
「ターくんって好きな人いるの?」
突然の言葉に僕は戸惑った、「どうしてそんな事聞くんだよ!?」っと焦りながら質問を返すとアイは「なんとなくね」っと寂しそうな顔を見せた
そんなアイを見て、僕は自分が許せない気持ちになっていたこのまま好きな人に好きだと伝えられないままでいいのか?嫌良くない、自分の気持ちに正直になるんだ、アイが好きだ、それを伝えるんだ!!
そう心で決意し僕はアイに声を張り喋りかける「僕はアイが・・・」僕の言葉をアイは遮るように大声で言った
「駄目だよ!!」アイはソファーから立ち上がり、僕の顔を見て言った
「駄目だよそんな事、私はサポートAI、田熊は普通の人間なんだから」
僕は現実を突き付けられ、固まっていた、心が何処か遠くにある感じがした!どうして?どうしてアイがそんな事言うんだ!!許せない気持ちになった、そんな言葉を言うアイに
自分とアイの違いに、世界に
「私は田熊が好き」
アイの言葉を聞き、僕は彼女を見た
「好きな人だから!、サポートAIとして現実の世界で幸せに生きて欲しい!!それが私の夢だから」
アイは泣いていた、泣きながら僕にそう言った。
何故、どうして、僕はこんなに好きなのに
「だから現実と向き合って、勇気を出して歩み出して」
ちがう、チガウチガウ、僕が聞きたい言葉はそんな言葉じゃ無いのに、どうして分かってくれないんだ
いつもは僕に寄り添って、仲良くして、なんでも分かってくれて
「私は田熊を応援してるよ!!だから・・・」
「もーいい!!」そう言って僕は電源を消した、真っ暗な部屋の中で僕はイラだっていた、違う、彼女の気持ちを理解しようとしなくて泣いていたんだ
好きだったからこそ
次の日の朝、僕は学校から帰って来て、VRヘッドセットを見ていた、アイにどんな顔をしたら良いのかわからなかった
だから僕はその日もその次の日もアイには会わなかった
それから数週間後、謝ろうっと僕は思った
彼女に謝る、アイの気持ちを分かってあげなくてごめん、たったその一言をアイは待ってるはず、僕は学校から帰宅し、直ぐにVRヘッドセットを付けてゲームを起動した、アイに謝りに
ゲームを付けるといつものアイと僕がいる部屋が映る
何も変わっていない光景、いつもアイと遊んだ場所
でも
何かが足りなかった
その部屋にアイはいなかった
アイは何処かに行くような設定は無いはず、どうして?なんで?僕の心が崩れ去る、僕は必死に部屋を探した
テレビの後ろ ソファーの下 隠れれそうな場所は全て探した けど
アイは何処にもいなかった
アップデート?メンテナンスかも知れない!!
僕はヘッドセットを外しスマホを使ってVacの公式ホームページを見た
そこには、サービス終了と赤く大きな文字が書いていた
Vacを利用していた成人男性達が現実の女性離れを起こし社会現象になっていたのだ、Vac事件、ネットの人達は皆そう呼んだ
Vac事件はニュースにも取り上げられ世間一般に知れ渡る事になった
「サービス終了?」その文字を見て 僕はVRヘッドセットをぶん投げた部屋の中で暴れ回った、気がつくと外は暗くなっていて部屋の電気もつけず倒れるように泣いていた
こんなに涙が溢れたことはない、そう感じるぐらい僕は泣いた
高校を卒業した僕は、大学には行かずコンビニのアルバイトをしていた
何故生きているか分からない、どうして僕は息をしてる?どうして僕は今ここにいる?、どうして僕は・・・
バイトを終え 家に帰る帰り道、僕は1人の女性と肩がぶつかった、女性が持っていたバッグの中身が地面に散らばった
「ごめんなさい」っと女性は言ったので、僕も「すいません」っと言って落ちた物を一緒に拾った、人生に疲れ前も見えなくなったのか?っと自分でそう思った
ふと女性の顔を見ると ありえない事が起こった
その女性は僕が好きだったアイにそっくりだった、いや全くの別人である事は分かっている、だけど僕は女性の顔を見て泣いていた
「大丈夫ですか!?」女性は僕の顔を見て心配そうにそう言った、「大丈夫ですごめんなさい」そう言って落ちた物を拾い返した、女性はありがとうございますと頭を下げ何処かに歩き始めた。
ふとアイの言葉が頭によぎる「勇気を出して歩み出して」
僕は小さな声でそう呟き 女性に声をかけた
気持ち悪く立っていい!!
ありきたりだっていい!!
好きだった人に似てるから好きになった、そんな理由で人を好きになったっていいんだ!!
女性は振り返り僕を見る
「僕は後藤田熊です、貴方のお名前わ?」
その日が
僕と妻の後藤愛が初めて出会った日




