変化
「助けてぇ!誰か!」
逃げ惑う市民をまさに怪物という名がふさわしい連中が攻撃していた
それを彼女たちの視界を通して、モニターで見ていた俺はあまりの惨さに吐き気が起きた
「主様大丈夫?」
リリーが背中を撫でてくれるが、今の瞬間は記憶に残ってしまうくらいに気分の悪いものだった
「ギェイイ!!!」
一体のオークが額を何かに撃たれる
それはウルイの武装である長距離射撃銃「ニビル」だ
高台から一方的に攻撃するのはこの世界でも有効であると確認できた
「対象を……殲滅…」
丁寧に一体ずつ排除していく様に姉のガーベラは笑って見ていた
「おいおい、戦いってのは近接戦だよなぁ?遠くから一方的になんて面白くねえだろ」
モンスターたちの前に異常に装備が足に偏った女が現れた、ガーベラだ。
「んじゃまぁあたしの足で逝けよ」
ガーベラの足のブースターが彼女の蹴りと共に起動し、凄まじい破壊力を持った美脚がオークを横から薙ぎ払った
体が二つになり息絶えたオークの顔にヒールの形をした足が乗せられ、どちらが強いか証明してみせた
学習能力があるのか、敵のモンスターたちは後退りするが
逃すまいと背後からカスミとミズナが現れ、カスミは刀、ミズナは大きな鎌で敵を切り裂いた
気づけば、敵の戦力は全て包囲され。自暴自棄になった敵が着々と粉砕された
「よおし、帰るぞお前ら」
ガーベラの一言で事が済んだ姉妹たちは撤退しようとするが、市民がそれを止めた
「待って!あなた方は!?ぜひ感謝とお名前を教えて欲しい!」
そう言われるとガーベラは俺に声をかけてきた
『どうする主?めんどくせえぞ』
「一礼だけして、すぐ戻ってきてくれ」
『オッケー』
姉妹たちは何も言わず一礼だけして帰っていった
「あの方達は一体?」
困惑する市民の元に遅れてやってきた軍人らしい連中がことを尋ねる
「大丈夫か!?生き延びたのは…こんなに!?」
「はい、それが……」
この時、白い髪の同じ顔をした連中の話が国中に流れることになることを俺は知らなかった
もう夕暮れだと言うのに、先程の川場でキャンプをすることにした
「なぜ主様は先程、すぐに撤退する様にしたのですか?人間の感謝という気持ちを利用すれば施しも受けれたのでは?」
アスターがそう俺に聞いてきたので、その問いに応えた
「普通に面倒ごとには巻き込まれたくなったってのはある。でも情報が欲しいという思いもあった。まぁ村はすぐそこだし、また何度でも行けるさ。今はただやるべきことをやっただけだ。」
焼き魚を食いながらそう説明し、その日は疲れであまり眠る前のことは覚えていなかった
次の日に俺は村の様子を偵察に行った
高台からウルイの長距離スコープで様子を見ると、軍隊らしき奴らが破壊された瓦礫や臨時に作られた仮設住宅が並んでいた
「すごい対応の速さだな」
その中で特に目立ったのが、変な宝玉がついた杖で岩を軽々と持ち上げている者たちの様子だった
「な、なんだあれ!!」
この世界に来て昨日のモンスターの次に驚いたのが魔法らしき力だ
破壊された家などが魔法で治っていく様を見てとても興奮した
「ほんとに異世界なんだな…」
その創作の最中に村とは正反対の位置に見える大きな山々の麓に何かが反射した光が見えた
すぐにスコープをそちらに向ける
「あのモンスターは!?」
スコープから見えたのは洞窟から出入りする無数のモンスターだった。
村からかなりの距離があるが、昨日戦った時よりも多い
「これは排除しないといけないですね…」
姉妹たちの戦闘をもっと見たいという好奇心が俺の背中を押し、洞窟にいるモンスターを駆除するように命令した
周囲の危険を全て排除した後に、この世界について学ぼうと思った