番外編8
「アリーナ、食事ができましたよ」
ベッドに横になっていたアリーナを、ライが心配そうに覗き込む。
「そう。ありがとう」
起き上がろうとしたアリーナの体を、ライが大切そうに抱え込む。
「まだ顔色が悪いですから、ここで食べて構いませんよ」
アリーナが申し訳なさそうにコクリとうなずくと、ライはアリーナの額にかかった髪の毛にいとおしそうに指をいれる。
「アリーナに元気がないと、私まで元気でいられませんから、早く元気になってくださいね」
「それは、どうかしら」
アリーナは苦笑しつつ、その身をライに委ねる。
「アリーナに食欲がないなんて、よほどのことですからね。心配にもなります」
「そうね。私も初めてかもしれないわ」
「じゃあ、持ってきます」
「お願いするわ」
アリーナの言葉にライは頷くと、そっとアリーナをベッドに戻して部屋を出ていく。
それほど時間がたたないうちに、軽快なライの足音が階段を上ってきた。
「胃に優しそうなシチューにしたんですよ」
部屋に入ってきたライの目に入ったのは、上半身を起こした状態で、急に気分が悪くなったように見えるアリーナの姿だった。
ライはトレイを置くと、慌ててアリーナに駆け寄る。
「アリーナ、大丈夫ですか」
ライが胸元を押さえるアリーナの背中をさする。当のアリーナは、力なく首を横に降る。
「匂いが…」
眉をしかめたアリーナが、申し訳なさそうにライを見る。
「匂い?」
「ええ。シチューの匂いがダメみたい。ごめんなさい、下げてもらえる?」
ライは慌てて窓を全開にして、ドアの外にシチューの皿が乗ったトレイを置くとドアを閉めた。
とたんに、アリーナがほっとした顔をした。
「もう大丈夫ですか」
「ええ。ごめんなさい。折角ライが作ってくれたのに。シチューだって美味しいって知ってるのに」
ぼんやりと呟くアリーナをライは真剣な顔で覗き込む。
「ねえ、アリーナ? この前の月のものは、いつだった」
「え? 月のもの」
首をかしげたアリーナが、ハッとなる。
「もしかして、そういうことじゃないですか」
「そういうこと、なの」
「私はそうだと思いますよ。明日、お医者さんのところに行きましょう」
柔らかい表情のライに、うなずきかけたアリーナが、またハッとして首を横に降る。
「私一人で行けるわよ」
明日もライは仕事だ。アリーナは今日体調が悪かったため、明日は休みを申請して帰ってきていた。
「いいえ。絶対にいきます。もし行く途中や帰る途中にアリーナに何かあったら、困りますから」
この時点でこんな様子のライに、アリーナは今後のことを思うと、少々気が重い。まあ、いつぞやの妊娠騒動の時だってあんな感じだったんだから、当然と言えば当然かも知れないが。
「絶対に、アリーナが何と言っても着いていきますからね。あー。ガイナー室長にも言っておかなければいけませんね」
それでも、喜びをにじませるライが、アリーナは素直に嬉しい。
ガイナーには、早めにライ対策をしてもらえるように頼もうと、ライに体を預けながら、アリーナは思う。
完
以前なろうで公開している時には、番外編8は確かなかったはずですので、初めて目にする方も多いのではないでしょうか?
番外編もこれにて終了です。
楽しんでいただければ幸いです。




