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教授

     六

 週が変わると朝食後に教授と聖騎士が尋ねてきた。

 最初の顔合わせは天気の良い庭となった。

 カルロス(俺)の胃は、相変わらずの脂っぽい朝食を終えたばかりでグロッキー状態だ。

「魔法学と帝王学を担当するレナード・バーンスタインです。こちらは武術を担当する聖騎士のカイン・ゴンザレスです。両名、身命を賭して殿下にお仕えます。私共を本日より宜しくお願い致します」

 胃のあたりを撫で虚ろに応えた。

「はい。宜しくお願いします」

 応えた俺は体も不調だが、地獄の糞ゲー『天使を探せ』ショックから回復し損ねていた。

 落ち着かないし疎外されている感じがした。

(どう足掻いても糞ゲーの中だ。まったくやる気が起きねえよ。朝から脂っぽい肉のなんか食えるか? だいたい日本人に金、銀、の髪色の美形ぞろいは刺激が強すぎるんだよ)

 カルロス自身は金髪だが神園は黒髪だ。心は大和男(やまとおのこ)、髪色は黒色がジャスティスだ。

 周りからは、どう見ても落ち込んでいて顔色も悪いはずだ。

 レナード教授と聖騎士カインが顔を見合わせ頷き合った。

 カインが一礼して口上した。

「名誉ある聖紋国にて聖騎士を拝命しております。カイン・ゴンザレスです。以後お見知りおき下さい。騎士として戦い、魔法騎士としてゴーレムを複数体操ります。カルロス様の剣のご指導をいたします。本日午後より実戦形式中心に開始いたします。よろしくお願いいたします」

 挨拶を終えると聖騎士のカインが俺に向かって黙礼して席を立った。

 ナード教授が話し始めた。

「カインは午後改めて参ります。では早速始めましょう。ステータス・オープン。私のステータスが見えますか? カルロス様」

 半身になり背を向けたレナード教授の胸の前にウインドウ画面が見えた。文字の内容が解る。

 ステータス

氏名:レナード・バーンスタイン 

 ルースター王国 魔法学教授、帝王学教授、戦時作戦参謀

加護:魔法神の加護3(加護1~5)

 性別:男(38歳)

 レベル:42(1~99)

 HP:150(1~300)

 MP:200(1~300)

 魔法適正:火3(1~5)、地2(1~5)、聖3(1~5)、生活3(1~5)

 体力:25(1~99)

 武力:20(1~99)

 知力:30(1~99)

 精神:30(1~99)

(さすがは教授だ。魔力量と魔法適正数値が高い)

「戦時は作戦参謀をされるのですね?」

 尊敬の念を込めてあどけない言葉で褒めた。レナード教授はニコリと笑った。

「まずお伝えするのは、聖紋国であるルースター王国では、加護や能力数値は他の者に伝えてはいけないという常識です。ステータス内容を決して他者に見せてはいけません。王子は王命で王に開示する以外は、ステータス・オープンしてはいけないのです」

 レナード教授はかなり真顔で言い切った。

「何故ですか?」

「魔人を倒し、なお生き残り、将来の王となるためです」

(無難に応えたな)

 目が真剣だ。現状で教授陣は味方と思っていいだろう。

 解っている。暗殺されないようにだ。実際、かなりシュールな生き残り戦略だと思う。

(出る杭は打たれるから、ステータスは隠し通す。そして王座を狙え! だな)

 俺が王座に就けば教授陣も自動的に出世する仕組みだ。俺と一連托生というわけだ。

 確かに俺は、生き残りは図る。ただし王は目指さない。何事も分相応がベストだ。だから分家して侯爵家を興す。

「ステータ・スクローズ」

 教授は自らのステータス画面を閉じて続けた。

「基本的な事柄からお伝えします。我が聖紋国、聖ルースター王国では、繁栄の基盤に潤沢な魔素が存在します。目に見えない魔素は魔法使用において絶大な恩恵をもたらします。その対価として、国の隆盛の陰で、籠った魔素が災いとなるのです。年に一度、二つの月は最も近づき、魔素の活性化する魔化月が訪れます。魔に侵された人間が魔人となってしまいます。聖紋を授かるルースター一族の男児だけが魔人を滅する偉業をなし得るのです」

 神妙に聞き入った。

「ルースターの名を冠する男児は魔人と戦う運命なのですか?」

 レナード教授は頷いた。

「そうです。残念ながら過酷な宿命にあります」

(『天使を探せ』の設定どおりじゃねえか)

 教授が眉間の皺を深くして続けた。

「加えて十年に一度二つの月が完全に重なる年に強大な魔王が誕生します。王族は人類の生き残りをかけ命を賭して魔王に挑みます」

「王が魔王を消滅できなければどうなるのですか?」

 つい真面目に問い返した。

「魔族のスタンビートが発生し王国全土が魔物に飲まれます。このゴンドア大陸全土に魔物が溢れるのです」

「人やエルフはどうなるのですか? 」

「エルフ族や獣人は森の奥に逃げ隠れ暮らし、力のない人族は魔物に蹂躙されます」

 僅かな間を開けて続けた。

「この危機的状況に際し神の恩寵が下ります。天使降臨です。神の御名のもとで見出された天使と王族の代表が魔王を滅するのです。ゴンドア大陸の王国はこの歴史サイクルを繰り返してきました」

「天使が見つからない場合はどうなるのですか?」

 聴きたくない質問をした。

 神妙な顔でレナード教授は天を仰いだ。

「人類は存亡の危機を迎えます」

 僅かの間、説明するか迷いの雰囲気があった。

「事実を教えてください」

 俺から誘い水を向けた。

「実は今年が十年に一度の魔王年でした。月が見妙に重ならず普通の魔人年となりました。天使降臨もない年でした。ですが十年後、王子が十五歳の年に、月が完全一致する大魔王年を迎えます。二十年分の溜まった魔素から生まれる大魔王と戦うのです。その時に天使が降臨されるかは解りません。神を信じるしかないのです。なので皆が神を求めているのです」

 沈黙が残った。

 俺は再度『天使を探せ』を思い返していた。

 マジ糞なゲーム設定だな。アホな地獄設定をしたゲーム会社担当の首を絞めてやりたい。

(おい担当者! 異世界の人類に迷惑かけすぎだろう)



 

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