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女神

      二    

「というわけで神園裕也(かみぞのゆうや)さん。貴方は死にました」

「俺が死んだ?」

(なぜ、駅にいた俺が死ぬんだ?)

 疑問から口を開けたままで間抜け面となってしまう。

 俺は通勤のネクタイ姿で神々しい女神? の前にいた。

 見回した。

 うっすら輝くパルテノン神殿風建物の前だ。

 とり敢えず口を閉じた。

「死ぬはずのないあなたがなぜ事故死となったのか。調べました」

「俺は死なない予定だったんですか?」

「貴方は将来、会社社長になるはずでした」

「社長って、俺が代表取締役にですか? いやいやそれはないでしょう」

 資金繰りで背中を丸めた今の社長のくたびれた後ろ姿が頭に浮かんだ。

 社長だなんて想像したくない悪夢だ。頭を振ってくたびれた表情の自分を追い払った。

(柄にもない。俺は社畜で隠れゲーマーだぞ。社長業は最も過酷だ。激務は嫌だ。ゲームができない)

 女神はただ優しい目で俺を見つめている。おもむろに口を開く。口の奥から光が見えた。

(口の奥が光るなんて人間じゃねえな。ものほん(本物)か。……俺って死んだんだな)

 女神が静かに頷いて続けた。

「誰もしたがらないゲームを攻略させた事で、好意が生まれ未来が開けるはずでした。今回は疲労の招いた突発事故です。疲れの原因は心当たりがあるはずですね」

(ああ、心当たりだらけだよ)

 いづれにしても、あの新人(社長娘)のせいだ。疫病神め。

 けれど……しばらく考えて思い直した。

(俺って社畜で隠れゲーマーだよな。ゲームのやりすぎで死んだなんて……俺らしいっちゃ。俺らしいよな)

 ゲーマーらしくゲームに挑み攻略した。疲労も死も覚悟の上だ。副次的結果だ。

 俺には俺の生き方があった。

 隠れ社畜ゲーマーは、決して目立たず中庸に生きる。天涯孤独、徒党は組まない。平凡で分相応の人生。穏当で片寄らず中正。ついでに、できる範囲の人を助ける。そして、平穏にゲームを楽しむだ。ここ重要。

 鼻から息を抜いて想いを伝える。

「口車に乗ったとは言え、自分からゲームに興味を示したのですから俺の自己責任です。両親を交通事故死で亡くして以来、一人の力で生きてきました。正直、俺が死んで悲しむ人はいません。死を受け入れます」

 サバサバと応えた。独りの力で生きてきた自負がそう言わせた。

 三十五年の人生を振り返った。孤独に塞いだ心を木刀の素振りとゲームに癒してもらった。ずいぶん助けられた気もする。

 女神は聞き入る表情からかすかに微笑んだ。

「剣道とゲームが好きなのですね。真っ直ぐでいい心持ちです。……貴方には救済措置が適用されます」

(心を読まれている?)

 心が読まれている事実に表情がこわばった。

(そりゃそうだ。女神様なんだから当然か)

 間を開けて疑問を口にした。

「救済措置? とは何ですか?」

「端的には、輪廻転生するか異世界転生するかです。輪廻に戻れば白紙に戻り地球で零からスタート。異世界転生ならば記憶と意識を保ってのリ・スタートとなります」

 女神は説明も明快だ。

 俺に迷いはなかった。

「異世界転生でお願いします」

 ゲームと異世界小説には慣れ親しんできた。どんな異世界だろう? 想像するだけで少なからず心が躍った。

「あのうチート能力は授かれますか?」

 俺は真顔で女神に質問した。美しい神は頷いてくれた。

「新たな門出に私(=女神)の加護を授けます。貴方の手に持つゲーム世界で、貴方の愛するゲーム能力を存分に振るいなさい。では旅立ちです」

 手に持ったゲームって! まさか……。

「まって下さい……」

 俺は温かい光に包まれた。

 ぼやいた。

(女神様! 神様(大人)なんだから、相手の話は最後まで聞こうよ)



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