表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/19

「ジャンル違いは流石に厳しい」

異世界ものを楽しく書いてみます。(自分のストレス発散かもしれません) 

ご指摘があれば容赦なくしてください。 

私も楽しみますので、皆様もお楽しみいただければ幸いです。


コロナ禍に追われ。筆をおいていました。この作品は仕上げたいと思っています。

時間のある方は、お付き合いください。

 ジャンル違いは流石に厳しい


   異界に独り歩む 


 異世界に何を求めて生きる

 双月は影を分かち街は静かに眠る

 独りふと異世界の夜空を見上げる

 一つ星が双月に負けず輝く

 たとえ生き残れぬ地でも

 僅かな希望にすがり生きるのか

 ただ無表情に苦悩を隠し

 異界を一人駆け抜ける

 

 異形の神に生き様を問いかける

 朝日は輝くが僅かな応えもなく

 独り異世界に生きる術を求める

 古刀が強敵を屠り煌く

 たとえ荒波かぶり心折れても

 僅かな希望だけで生きるのか

 ただ笑顔に苦悩を隠し

 異界を一人駆け抜ける


 たとえ夢が叶わなくとも

 僅かな光胸に独り生きるのか

 ただ笑顔の裏に涙をこらえ

 歩み続ける異界の荒野を

      

 

     序 

 怒涛の雄叫びが谺する。

 夕刻の斜陽のなか土煙があがる。敵が迫っていた。

 魔物の群れは狂気で目を赤く染めている。

 城壁は意味も成さない。蒼白に固まる衛士の横顔が語っていた。

 俺は隠形を解いた。スッと暗闇から姿を現す。

 服部半蔵として異世界の戦場にあった。

 右手をギュッと握りしめた。動く黒籠手は日本古来の精緻な金彩で縁取られていた。不破壊属性の凶器は沈みかけの赤い陽光を受け鈍く光った。

 腕を振るい唱えた。

「破! 空・間・断・絶」

 瞬時に光と衝撃波が土煙を上げ弧を描き広がった。

 同時にスタンビート化した前方の魔物が地面に倒れ伏していく。数百メートル四方の大地に死屍累々魔物が横たわった。

 至る所で血飛沫が吹き上がった。遅れて血の臭いが届いた。

 狂気で支配された空気が変わる。

 先程まで猛り狂い勝利を確信した魔物が呆然と動きを緩めた。

 目の赤色が消えた。敵が怯み震えていると察した。

(怯えたか)

 春秋もなかった。

(笑止、戦場ならば命を懸けよ)

 腕を振るい追撃を加えた。

 一撃で数百の魔物が吹き飛んだ。

 俺は音速で独り戦場を駆け続けた。

 一陣の風となり敵中枢に迫る。

 フッと遠く懐かしき平和な故国を想った。


   


 

    一

 ゲームをラストまでやり終えた。時計を見ると朝の五時を過ぎている。

 自室のカーペットに寝転んだ。

「やっと終わった。二度とアイツの口車には乗らないぞ。最低の一週間だった。……俺の時間を返せ」

(俺は、やり遂げたぞ。社畜隠れゲーマーを舐めるなよ)

 片腕を天井に突き上げ、心で怒ついた。

 思えば三十五歳にして新人社員の教育係に抜擢されたのが運の尽きだった。

 新入社員(社長娘)の勧め? で挑んだ恋愛シュミレーションゲーム『天使を探せ』は最悪すぎた。

 一週間前を想い返す。

「面白いゲームみたいなんですけど、先輩はゲームなんてしないんですよね」

「ゲームねえ。珍しいゲームなの? やってみようかな!」

(なんだと! 俺への、社畜隠れゲーマーへの、挑戦か?)

「誰も終わった人がいないんです。最後までやって見せてください! 先輩!」

「預かって。様子を見てみようかな」

(未踏破のゲームか、やって見せようじゃないか。社畜隠れゲーマーならば挑まねばなるまい)

「じゃお願いします。PG5(プレーゲイムファイブ)用です」

「確かに。『天使を探せ』ね! サクッと終わらせて持ってくるよ」

 浅はかに挑発に乗った感はある。正直やり始めて直ぐに自分を呪った。

(止めとけばよかった。糞過ぎる。この設定何だよ! 内容が陳腐で一片の興味すら持てね~よ)

 手渡された糞ゲーの中身は、学園や城に隠れた天使を探し守る内容。

1、ゲームクリアの為に隠れた天使を探しだし守る。

2、変装して隠れている魔人をあぶり出し倒す。

3、挙句に強大な魔王(裏ボス)を天使と協力して消滅させる。

 この三要件を満たしてやっと終了となる。

 難しいのが。見つけた天使が偽物だった。隠れた魔人を見つけられなかった(または間違えた)。魔王に負けた。でゲームオーバーだ。

 特に、精神(心)をやられたのが「魔人化ランダム設定」だ。ゲームインごとに魔人化する者が変わる設定(人が憑依されて魔化され魔人となる)要は、ログインごとに魔化される人物が変わるので魔人を倒しにくい。結果として、隠れ魔人を炙り出し倒すまでログアウト不可となる。途中、ログアウトで終われば魔人化する人物が変わるから最初からやり直しとなる。

(クッソ設定のお陰で、魔人を特定して倒すまで電源を落とせねえじゃねえか!)

 加えて予測不能なのが意地悪して陥れる女たちがいる。おまけに選ぶキャラクターの王子は、大概少し間抜けで、お色気に弱い残念な奴らだ。男気スイッチを性悪女に押されて良からぬ方向に動く馬鹿ばかり。毒殺、嫌がらせは当たり前。だいたい性悪のキャラクター全員が美形って気持ち悪いだろう。いがみ合う第一王子、第二王子、……第五王子……って、いったい王位継承者って何人いるんだ。その全てがウンザリだ。

 投げ出すのが嫌で、意地でラスボスまであぶりだして仕留めてやった。

 正直、ゲーマーで剣道部出身者(体育会系思考)に男女の駆け引きのあーだこーだは理解不能だ。

 小、中、高、大学までモヤモヤすれば竹刀を振り、落ち込めばゲームをすればよかった。

 社会人になってからは仕事とゲームだけで生きてきた。

 勝利を証明する終了コードを収めたSUBメモリーを引き抜いた。バッグに押し込み後輩(社長娘)の薄笑いを想い返す。昨日の会話が浮かんだ。

「神園せんぱい! まだゲームクリア出来ないんですか?」

 糞ゲーを面白いと勧めてきた、おバカな後輩にそんな評価を受けるのは我慢ならない。

 一応ボスキャラは討伐した。今日、男と女が化かし合う糞ゲームともお別れだ。生意気な後輩(社長娘)にツキ返してやる。

 糞ゲーを終わらせるため、昨日からネクタイを締めたままで着替えてもいない。

 脳が興奮したのか出社までの時間、寝る気になれず。

(流れは完全貫徹だな)

 気分転換に古いゲーム機の電源を入れる。

 急に心が軽くなった。

 日本的音楽で画面に戦史に基づいたウォーゲーム黎明期の『国士無双』が始まった。

 天照大御神、須佐之男命、月夜見尊に始まり、安倍晴明、平将門……織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、上杉信玄、淀殿……等々。キャラクターは全てカンストさせている。

 アイテムボックスは詰め込んでいるがまだ枠に余裕がある。しかも自分で何が入れたかは大体把握している。

 頭の中で諳んじてみた。

 機能枠で各種秘伝書、兵法書、武技法術複写習得、護符、禊札、等。食料枠の完全丸薬、元気おにぎり、兵糧、パンからカレーライスなどが入っている。軍事枠で軍馬、槍兵、弓兵、騎馬兵、陰陽師、等。そして武器枠、名刀、名槍、鉄砲、から、マシンガン、ライフル、ロケット兵器、隠れアイテムでレザー兵器、衛星兵器、etc……歴史を変える武器まで何でもありだ。一枠に九九九個、枠自体の数は記録媒体次第、(俺は趣味で古いゲーム機記憶媒体を最新のSSDに変えたばかりで枠の底が不明)加えてコピーし放題だから無尽蔵だ。

 ゲーム自体は古くとも最先端のスペックを使用してゲーム内で天下平定できないほうがおかしい。

 お気に入りは、何と言っても日本刀や手裏剣、弓などを使う服部半蔵だ。忍術、体術、武技、戦略を極めた愛着のあるキャラで俺の思い通りに動てくれる。

 半蔵の極めた武技を放つ。画面が一瞬輝いた。轟音を立て数百の敵兵を一瞬でなぎ倒した。

(爽快だ)

 やり慣れたゲームは感覚が違う。安心感がある。なによりストレスフリーだ。ひとたびゲームを始めればコントローラーが手と指に吸い付く。

「うん? そんな馬鹿な」

 一瞬、目にした光景を理性が否定する。

 今、画面の中の服部半蔵が指の反射を通り越した。頭で思い浮かべた次の動きをした。

 ゲームキャラが勝手に動くなんて、いくらゲームに愛着があっても起こりようがない。

 俺って疲れているのかな? 精神衛生を保つためには……ゲームを続けよう。

 心の安定を求めて服部半蔵を動かし続けた。つい楽しくて時間を忘れた。画面だけを見つめ服部半蔵を動かす。俺はもう指は使わなかったかもしれない。ただ楽しい。

 突如、目覚ましのアラームが鳴った。

「おっと! 時間だ。会社に遅れる」

 慌ててバッグ片手に部屋を飛び出した。通勤電車を待つ駅のプラットホームで眠気からかふらついた。

 記憶は途切れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ