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20ー2.戦闘!ノーチェ


ズガガガガガッッ‼︎‼︎ ドン‼︎ ドドン‼︎‼︎


「やぁーめぇーろぉおおおお‼︎‼︎」


ゴオオオオオオオオ‼︎‼︎


ノーチェを魔脈制御室から誘き出すのは簡単だった。

遺跡の魔脈に根を下ろしている大広間中央の巨大樹に、カーマインがシャベルで攻撃を浴びせたところ、ノーチェは金切声を上げながらすっ飛んできたのだ。

本人が到着するより先には、ゴウゴウと空気を震わせながら隕石のような重みを感じさせる魔攻弾が何発も飛んできた。

各自なんとか避けられたものの、当たれば即死級の威力。初っ端から危険な相手である。


「お前ら全員ぶっ殺す‼︎」


「いけません、ノーチェ‼︎ 私の話を聞いてください‼︎」


「ステラ⁉︎ 目が覚めたんだね‼︎ でも、その体は……」


巨大樹の根元で両手を広げたステラが叫ぶと、ノーチェはステラの周囲に結界を張りながら降り立った。


「ノーチェ、人間を滅ぼすなんていけません! 今すぐ術式を放棄して下さい! 諦めずに共生の道を拓くのです! 戦うべきは悪意ではなく無理解……悪意を敵として滅ぼすのではなく、理解を求めて味方とするのです! 根気よく対話に取り組めば、きっと心を通わせられます!」


「わかんない……全然わかんないよっ……なんで人間なんか庇うの⁇⁇……ステラだって憶えてるだろ⁉︎ 前に君が治療してやった人間なんて、あとから仲間を連れて君を捕らえに戻ってきたじゃないか! 言葉はいくらでも嘘をつけるのに、対話なんかするだけ無駄だよ!」


セスは先の夢で見た場面を思い出した。

きっと自分が見てきた記憶以上に、ノーチェは人間に傷付けられ、失望させられてきたのだろう。

セスはノーチェを可哀想に思った。


「人間なんて信じても裏切る! 強欲で卑怯で卑劣で傲慢で自己中心的な害獣‼︎ 生かしておく理由なんか無い‼︎」


「ノーチェ‼︎‼︎」


ノーチェは結界をギュッと圧縮し、ステラを狭い中へ閉じ込めた。

ステラは必死に抗議しようとしたが、結界がその声を完全に遮断する。


「ステラは黙ってそこで見守ってて。今に僕が正しいことを証明してみせる」


ノーチェはステラを巨大樹の頂点に運びながら飛び上がると、広間に集まった人間たちを忌々しげに見下ろした。

1番近くにいたカーマインは手を叩いて笑う。


「はっww 常識も病識も欠如した確信犯に、説得なんて通じるわけねーよなァww」


「お前の口から常識なんて言葉が出ると耳を疑うぞ、カーマイン」


思わずツッコミを入れるシアン。カーマインは愉快に笑い続ける。


「ま、あんな具体性の無い粗末な説得じゃ無理もねーけどよww 結論ありきで思考停止したバカの吐く綺麗事に価値なんてねーしww」


「そこのお前ェ‼︎ ゴミクズの分際でステラを愚弄するなァ‼︎‼︎」


ゴウウッッ‼︎‼︎


ノーチェは激昂し、絶叫とともに放たれた強大な魔攻弾がカーマインを襲った!

直撃寸前に発動が確認された魔防壁もジリジリと押し潰されて消え去り、後に残ったのは人型に黒くひしゃげた物体だけだった。

ノーチェは念を入れて更にそこへ尖った岩を何発か撃ち込むと、シアンたちへ向き直る。


「次はお前らだ」


「自分はそいつのように簡単にはいかんッ」


ヒュッ‼︎……ズオオオオオオオ……


シアンは素早く呪影術を展開した。

一瞬にして辺りは闇に包まれ、ノーチェだけでなくセスたちの目から見ても凡そ味方には思えない、禍々しい呪影たちが大広間中を蠢き始める。


「邪悪な力の使い手め。僕が正義の光を以って浄化し尽くしてやる。死ねッ‼︎」


キィン‼︎


ノーチェは頭上に手を掲げ、輝く巨大な魔方陣を複数展開させた。

耳鳴りのような音が響いて、空気が重くなり始めたそのとき……


「術式実行‼︎‼︎」


突然ネリアが叫んだ!

耳鳴りのような音は更に強くなり、空気は一気に窒息しそうなほど重くなる。

……実はその魔術は、ネリアがしばらく前からソラに相談して共同開発していたものだった。


「限られた範囲内で一度に複数の魔術式を発動させれば、術式の処理が遅延したり止まったりする! 特にあなたの使う古代の高威力かつ複雑な魔術式は、洗練された現代の省エネ魔術式と違って無駄が多い! 今、私が発動させたのは、一定時間無意味な術式を反復させて空間の術式処理効率を著しく低下させるもの! この魔術の発動中は、強大で複雑な魔術式ほど発動を阻害され続ける!」


ネリアは矢継ぎ早に説明を捲し立てながら、大広間中央に浮かび上がった光の時計を指差した。

ガサガサとノイズ混じりに表示される時計は、魔術の残り時間を示しているように見える。


「親切に解説どうも! だったらもっと単純なやり方で葬ってやるよ!」


ノーチェは硬直した魔方陣を閉じると、今度は足下へ魔力を送った。

途端に広間全体の地面を突き破って無数の巨大蔓が出現し、ネリアたちに襲いかかってくる。


ドドドドドドドド‼︎‼︎


「お嬢様‼︎」


「シアンさんっ」


シアンはネリアを抱き抱えると、呪影を操って巨大蔓を防ぎながら逃げ始めた。

呪影で視界が悪い中、植物の生い茂った空間を立体的に活かしつつ、隠れるように逃げ回るシアンたち……

追い続けるノーチェはイライラを募らせていく。


「ちょこまかと小癪な……どうせすぐ魔力切れを起こすくせに……ッ」


ふと、ノーチェは胸元に違和感を感じた。

最初は単に興奮よる動悸かと思ったが、どうも様子がおかしい。

咳き込むと、目にも沁みるような痛みが走る。

……よく目を凝らして見ると、辺りに霧のように細かい粒子が漂っている。


「毒……⁇」


バキバキバキッ‼︎


天井から降ってくる粉塵に気付いたノーチェが、今更ながら自身を覆う結界を張ったときだった。

不意に地面に亀裂が走り、同時に吼えるような声が響く。


「オラアアア‼︎ 術式実行‼︎」


ガギィイイイイン‼︎‼︎


突如、大広間全体の地面が眩く光ったかと思うと、ノーチェの操っていた巨大蔓が一斉に掘り起こされた!

ズタズタに刻まれた蔓の山の中、憎たらしい赤毛男がスコップを地面に突き立てている。

先程あっけなく倒されたフリをしていたカーマイン……実は身代わりで気を逸らして地中に潜み、大型術式の準備をしていたのである。


「広範囲術式の使用だと⁇ あの時計はまだ消えていないのに……」


光の時計を睨みつけた巫女を、カーマインは不敵に嘲笑う。


「わざわざ戦闘中にペラペラと手の内明かすバカがいるかよ、バーカww さっきのメスガキの胡散臭え解説はな、テメーに高威力の魔術式を使わせないための誘導だったんだよww 実際には、ほんの僅かな時間しか処理を遅らせることなんかできなかったのさww それとは無関係な時計を表示する演出で、あたかもその時計の出現中は効果が続いてると思い込ませただけでなww」


「チッ……今度こそ殺す……‼︎」


ノーチェはカーマインに狙いを定めて魔法陣を展開しようとしたが、体内魔脈に違和感が生じて動作が遅れる。

それと同時にノーチェを覆う結界にも揺らぎが生じた、次の瞬間……


ザンッ‼︎


「は?」


緑光がノーチェの胴体を横断した。


セスの緑の剣だ!


妖精の羽を模した飛行装備をネリアから借りたセスは、巨大樹の中に潜んでノーチェの隙を伺っていたのだ。


「「はあああああああ‼︎‼︎」」


振り返って掴みかかってくるノーチェと、追撃を加えるセス。

両者は縺れ合いながら、巨大樹の枝葉を通過して根元へと落下した。



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