15ー3.モモの部屋
「モモの部屋へようこそぉ♡ 今夜は2人っきりの女子会、楽しみましょうね〜魔女さん♡」
「は、はい……⁇」
村長邸で手続きを済ませて宿の客となった魔女は、人のいない夜遅くにゆっくり温泉を楽しもうとしたところ、待ち伏せていたモモにたっぷり裸の付き合いをさせられ、更に寝室へと連れ込まれてしまった!
……それら全て、あくまでも友好的なものである。決して他意など無い……はず。
「それじゃあまずは〜、女子会らしく恋バナとかしましょうか〜? 魔女さんお先にどうぞぉ♡」
モモは浴衣が崩れるのも気にせず、布団の上をゴロゴロ転がりながら提案した。
魔女は縮こまって座ったまま、首を傾げる。
「えっと……モモさんは薬草の話が聞きたくて、私を呼んだのでは……⁇」
「モチロン♪ それもじ〜〜っくりお話ししますよぉ。でも今日は1日目ですから〜、お互いプライベートな話題で親睦を深めたいな〜って♡ あ〜、でも〜、話したくないことは無理しなくていいですからねぇ。とにかく今日は楽しくなる感じで〜」
「では、黙秘します」
「あら〜? ソラさん、まだ魔女さんを攻略できてないんですねぇ……」
「では、モモさんの話をどうぞ」
「う〜ん……モモも話すことないなぁ。恋バナって、今までサクラのを一方的に聞いてるだけだったし〜」
「そうなんですか? 意外ですね……モテそうなのに」
魔女は浴衣から溢れそうになっているモモの巨乳を見つめた。
自分にも同じようなものが付いているというのに、灯台下暗しである。
「モモはぁ、恋愛とかは他人事でいいかな〜。まだまだお勉強に専念したいし〜……」
そう話すモモの部屋には、主に薬学の本がびっしりと詰め込まれた書棚があり、その横の文机にはよく書き込まれたノートと一緒に乳鉢や薬瓶が出しっぱなしだ。
その上、長押のあちこちに薬草が干してあり、見た目的にも香り的にも女の子の部屋らしいとは言えない。
「散らかっててごめんねぇ。カオルコ先生からは〜『危ないから薬品類はなるべく診療所で』って言われてるんだけどぉ、安全なものをちょっとだけならって思ってたら〜、いつの間にかこんな部屋になってたの〜」
「私やソラくんの部屋より、ずっと片付いてますよ……。でも、モモさんはどうして今の道に? サクラさんみたいに温泉を手伝う選択肢もあったのに」
「ん〜……モモはねぇ、後悔……かなぁ」
「今の道を……?」
「違う違う〜。そうじゃなくて……昔、ある人が目の前で苦しんでるのに助けられなかったから。あの時もしも薬草の知識があれば……って後悔。懺悔かな。……だからモモ、解毒剤の研究は特に頑張りたいんだ〜。今更頑張っても、あの時救えなかったものはもう救えないのにねぇ……」
「モモさん……」
「あ。念のために言いますけど〜、彼、命はちゃんと助かったんですよ〜。今でも遠いところから、たま〜にお手紙貰ってますし〜」
「あの……もしかして、それが『恋バナ』なのでは……⁇」
「まさかぁ〜。だってモモにくれるのはついでで、サクラの方がもっとお手紙貰ってるもの〜。なのにサクラが結婚しちゃうなんて、幼馴染の彼はきっとショックだろうなぁ……あれ〜? これ、どちらかといえばサクラの恋バナになっちゃうのかなぁ? ウフフ〜♡」
「え〜……」
魔女は隣の間へ繋がる襖を見た。
先の温泉にて、モモとサクラの部屋が隣同士だと聞いていたが、夜遅くこんなに話していて大丈夫だろうか?
そんな魔女の視線に気付いたモモは、スッと立ち上がるとその襖を開け放つ。
すすーーっ……トン!
「モモさんっ……そんなことしたらサクラさんが起きて……あれ?」
魔女は慌てたが、消灯中のその部屋には布団も敷かれていなかった。
「大丈夫よぉ。今日は午後から婚約者さんが泊まりに来てて、サクラそっちに行ってるんだもの〜……はぁ……親友の恋愛成就は嬉しいけど〜、小さい頃から一緒にいたサクラを奪われて、最近モモとっても寂しいんだぁ……だから〜今日は魔女さん来てくれてとっても嬉しいの〜♡」
むぎゅーっ!
「きゃっ⁉︎」
モモに抱きつかれ、布団の上に転がされる魔女。
「離してくださいっ! 私は部屋に戻ります!」
「もう遅いからモモの部屋に泊まっていってよぅ♡ サクラのお布団出して繋げたらいいですからぁ♪」
「結構です!」
「そうお? じゃあモモのお布団で一緒に寝ましょうねぇ♡」
「お断りですっ!」
迫り来る巨乳をなんとか振り切って客室に戻ると、魔女は少し後悔した。
静かな部屋でクロの遺骨と寝るのは心が折れそうだった。
もしかすると、モモの明るすぎる強引さは自分のためだったのではないか?……少しだけそんなことも思った。
***
翌早朝。
窓から中庭を眺めた魔女は、睦み合うサクラとハーフエルフであるローレンの姿を目撃し、呟く……
「寿命差のある恋なんて、絶対苦しむのに」
モモとサクラの幼馴染コテツは本編終了後、番外編で登場予定。




