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10ー2.家庭菜園

朝食後、セスとステラは先月から始めた家庭菜園の手入れに励むことにした。

ピアに分けて貰った作物の苗を、ステラが精霊の力のトレーニングも兼ねて育てている。

おかげで育ちも早くて出来も最高なのだが、無闇に精霊の力で育てすぎると土地に負担をかけてしまうため、力の使用はほどほどに抑えながら地道な作業を心掛けることにしていた。


「この辺りは来週には収穫できそうなのですよ♪ ピアから美味しい調理法を教えてもらうので、楽しみにしててほしいのです〜」


「ああ、楽しみだ。ところで、ここに植わってるでっかいキャベツみたいなのは……⁇」


畑の列に割り込むように植えられた、白と黄緑のグラデーションカラーの葉が幾重にも重なった塊。

日光の下でわかりづらいが、ぼんやりと発光しているようにも見える。セスは首を傾げた。

するとステラは当たり前のように答える。


「それはシュシュさんなのですよ」


「シュシュ⁉︎」


「先月お魚釣りにそこの川へやって来ていた、あのシュシュさんが植えていったのですよ」


「あー、あいつか……」


ダイヤの月に、庭へウォルフを連れたシュシュがやって来たことがあった。

ステラの通訳によると、ウォルフに食べられないために魚を釣っているとのことだった。

その後も何度か川へ降りて来ていたのだが、最近は姿を見せていない。


「あ! セス! ちょうど新しいシュシュさんが生まれるところなのですよ!」


「へ?」


ぱああああ……‼︎


突然、葉の塊がキラキラと輝きはじめた。

めりめりと音をたてながら、葉が内側から押し広げられていく……そして……


「みゅっきゅーーーーん‼︎」


元気良く産声をあげて、毛玉のようなシュシュが姿を現した。


「う、生まれた……」


「みゅっきゅ。みゅんみゅんー」


「はいはい♪ シュシュさん、おめでとう〜なのですよ」


葉に半分埋まりながらバンザイポーズをしているシュシュを、ステラが優しく抱き上げる。

ステラの腕に抱かれたシュシュは、セスの方を見て手をパタパタと動かす。


「へぇ、なかなか可愛いじゃないか。今度こいつの親が来たら、会わせてやらないとな」


「親……ですか?」


「こいつをここに植えてったシュシュのことだよ。あいつが親ってことだろ?」


「きゅきゅー……」


セスの言葉を聞いて、ステラとシュシュはキョトンとして顔を見合わせた。

次の瞬間、ステラの口からは予想外の事実が飛び出す。


「セス、あのシュシュさんならもう死んでしまったのですよ。ウォルフさんに食べられて」


「えっ……そうなのか……⁇ なんでステラはそんなこと知ってるんだ?」


困惑するセスに、ステラはシュシュを掲げて見せる。


「たった今、聞いたのですよ。あのシュシュさんが転生したのが、このシュシュさんなのですからっ」


「転生⁉︎」


「あのシュシュさんは死期が近づいてたから、魂の新しい器をここに用意していったのですよ。シュシュさんたち、何度死んでも器を乗り継いでずっと生きるのです。器が余ると空っぽのシュシュさんも生まれるけど、その空っぽの器に途中から移住する場合もあるのです。シュシュさんたち、みんな繋がっているのです」


「みゅっきゅん!」


得意げな表情を浮かべるシュシュを眺めながら、セスはステラが精霊として持っている知識が気になっていた。

本にも載っていない、人間たちの知り得ないこの世界のこと……それを知っているステラは、やはり自分たちとは全く異なる存在なのだ。

そう痛感したセスは、自分からステラに世界の話を訊こうとは思えなかった。

何か知ってはいけないことまで知ってしまいそうで恐ろしかったのである。



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