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7ー5.海の家(その1)


「セス、ゆーしょーおめでとうなの〜〜っ‼︎‼︎ セス、すっごいの〜‼︎」


「ははは、ありがとな〜ステラ〜」


母国での修練の成果か、優勝候補筆頭が直前で帰宅したおかげか、見事競泳大会で優勝したセス。

村長から賞品の『海の家1日食べ放題の権利』を貰い、今はステラとネリアを連れてシドの店へ来ていた。

VIP待遇で並ばずに特等席へ案内してもらえたことはありがたいが、結果的に自分を疎んでいたレミの思惑通りになったことは多少不愉快である。

今頃レミは幼馴染の美少女2人と、ついでに教会の3人と、ピアの手料理にありついていることだろう。


「すみません、シドさん。本当は優勝者1人分の権利なのに、ステラたちまで……」


「なーに、嬢ちゃん2人分の席くらい増えたって構わんさ! 去年のチャンピオンだって家族で席をとったしな。席が増えるのは毎年恒例だ。ただし! 無料なのはチャンピオンの飯だけ、連れの分は普通に払ってもらうからな! がーはっはっはっ!」


「あ、やっぱそうなんですね……」


「おうよ! 結果的に、チャンピオンの無料分より、連れの有料分の方が高くなるもんなのさ!……っと、じゃあオレは厨房に戻るから、注文が決まったら可愛いウエイトレスさんに言っとくれよ!」


店主シドが楽しげに厨房へと戻っていくと、入れ替わりに小柄な少女がセスたちの席へやって来る。

その姿を見て、セスは驚きの声をあげた。


「サーシャ⁉︎⁉︎」


「‼︎‼︎」


セスの声に驚いてビクリと肩を震わせたサーシャだったが、一呼吸置いてこくんっと頷く。

直後、セスは横からネリアに頭をはたかれてしまう。


ぺしっ!


「セスったら、なに急に大声出してるのよ! ごめんね、サーシャちゃんっ。驚いたよね〜」


「ああ、驚かせて悪かった。ごめんな、サーシャ……」


「…………」


セスが謝るとサーシャはペコリと頭を下げた。

その動作によってかけていたエプロンがずれ、下に着ていた水着がチラリと覗く。


それを見たセスは、密かに安心した。

何故なら……さっきまでセスの角度からは水着が隠れていて、サーシャが裸エプロンに見えていたのだ。


実際のサーシャは、可愛らしいラベンダー色のビスチェ水着を着ていた。

エプロンは海の家のものではなく、屋敷メイドから借りたフリル付きのものだ。


「でもなんでお嬢様のサーシャが、こんなところでウエイトレスなんかしてるんだ?」


「それは恋故に‼︎ だぞ、人間!」


セスが疑問を口にした瞬間、背後で聞き間違えようのない偉そうな声が答えた。

自称天使の武闘派メイドアリスだ。

サーシャとお揃いのエプロンの下に、水色ギンガムチェックのキャミキニを着ている。

相変わらずスタイルも完璧な超絶美少女に違いないのに、何故か性的な目で見ることは一切できない。


「恋……って⁇」


「恋とは相手に特別を乞うこと! お嬢は、シドの後妻の座を狙っているのだ」


「「ええええ〜〜っ⁉︎⁉︎⁉︎」」


ネリアもセスも驚いて一緒に叫んでいた。

真偽を確認すべくサーシャの方を見ると、緩んだ口の前で注文票を握りしめながら、コクンと頷く。


「と、いうわけで、お嬢は海の家に貢献してシドにアピールすべく、お前たちから注文を聞き出そうとしているのだ! お前たち、しっかりと注文して、お嬢のアピールに役立つがいい!」


そう言い放つとアリスは他の席へ注文をとりにいってしまった。

混んだ店内を機敏に動き回り、注文も配膳もアリス1人でサーシャ数十人分は軽くこなしていそうである。

セスとネリアはサーシャのために注文を急ぐことにした。


「そういえばさっきからステラは随分大人しいな。何かステラの食べたいものは……ん? ステラがいない⁉︎ どこ行った⁉︎」


「おい、人間! 厨房に入り込んだ精霊が無断で食べた『数量限定超高級特製蜂蜜ジェラート』代は、後できっちり請求するからな!」


さっそく無料分を有料分が上回った瞬間である。




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