7ー2.初めての海
「うみーーーーっ‼︎ なの! やっほーーーーっ‼︎ なの!」
「へぇ、思ったより賑わってるな……って、おい! ステラ、1人で遠くに行くなよ‼︎」
「はぁいなの‼︎」
バシャバシャバシャ……
海開き祭で賑わう浜辺へ、セスもステラを連れて来た。
ネリアの選んだ翡翠色のワンピース水着を着たステラは、早速波打ち際で水を蹴って遊びはじめる。
「あはは! ステラちゃん、はしゃいでるね〜。でも気持ちわかるなぁ。こんな綺麗な海だもん!」
「ああ。俺も感動中。内陸育ちの俺たちにとっては、海で泳ぐの自体初めてだしな」
「うんうん。家族旅行中にセノーテで数回泳いだ以外、修練用のプールくらいしか経験無いもんねー。この機会に思いっきり楽しまなきゃ!」
ネリアもセスたちと一緒に来ていた。
同居中のピアは幼馴染たちと待ち合わせて行くというので、ネリアだけ先に家を出たのだ。
「で、そのためにお前はその新しい水着を用意したってわけか」
「えへへっ! 聞くまでもないけど、似合ってるでしょー?」
ネリアはあざとく胸を寄せてウインクした。ビタミンカラーの瑞々しいビキニ姿が眩しい。
だがそれ以上に、抱き心地満点に違いない健康的な肉付きが眩しい!
結局はラッピングより中身なのだとセスは思った。わざわざそれを口に出して非難されようとは思わないが。
「それだけ自信があれば、褒める必要もないだろ? いいよ別に、お前はそれで。問題は……」
セスはそう言って、浅瀬でパシャパシャ水を跳ね上げているステラを見た。
「ステラちゃんがどうかした?」
「どうかした〜? じゃ、ねーよ。なんであんな水着選んでんだよ⁇」
ステラの水着は、正面から見る分には露出控えめで少女らしいデザイン。
だが背面から見ると、うなじで結んだリボンから腰までが大胆に開いたデザインだった。
緩めに編んだ2束の長い三つ編みの間から覗く背中は、下半身が水面に隠れた状態だと何も着ていないようにさえ見える。
「ええ〜? 可愛いし、よく似合ってるじゃーん! それともセスはもっと布が少ない方が良かった?」
「逆だバカ。てか、布面積率っていうよりは、分布偏りが問題なんだよ。バランス悪いだろアレ。後ろから見たらトップレスじゃねーか」
「えぇ〜⁉︎ そんなこと言うなら、セスなんか前から見ても上着てないじゃんっ。露出狂じゃんっ」
「男は下だけ隠せてればいいんだよ!」
「不公平〜!」
「じゃあネリアも脱げば?」
「セクハラ‼︎」
セスがネリアと下らない口論を続けていると、突然ステラが海から駆け戻ってくる。
ステラは両手を広げてセスへ突進し、そのままギュッと抱きつく。
「うああ〜〜ん! セスぅぅ〜〜! うみ、めにしみるなの〜〜! たすけてほしいなの〜〜!」
「ああ、もうっ……よ〜しよ〜し、ステラ〜? 顔に海水がかからないように、ステラは浅いとこで遊ぼうな〜?」
冷静にステラの肩を抱きながらも、セスは内心動揺していた。
人間の常識が足りずに言動の幼いステラだが、体格的には子供扱いしてもいい範疇をやや超えている。
人目の無い家ではステラの気の赴くままにスキンシップを許していたが、外では体裁が悪い。
しかも、ステラはかなりの美少女。
その体が人間でないとはいえ、薄着で密着されると妙な気分になりそうだ……
「うえぇんっ……セスぅ、いたいよぉ……まだステラのなか、はいってるみたいなの……」
「か、海水が、目の中に入ってるのか〜! 早くなんとかしないとな〜」
ぴったり抱きついたまま、涙目で見上げてくるステラ。
セスがなんとか平常心を保とうとしていると……
「びえぇぇえん‼︎ 助けて下さいぃ〜! 砂が目にぃい! 目が、目がアッー‼︎」
ステラとは違う成人男性の泣き声が、すぐ足元の砂浜から聞こえてきた。
声のした方を見ると、頭以外を砂に埋められた神父がいる。
「し、神父様⁉︎ いったいどうされたんですか⁉︎」
心配そうに屈んで覗き込むネリアだが、声が少し笑っている。嗜虐心を刺激された様子だ。
「うっ、うっ……僕、ガトーくんとショコラさんを海に連れて来たんです〜。2人ともまだ小さいから『泳ぐより砂遊びにしましょう』って提案したら、僕のこと埋めたがって……ちょっとだけって言ったのに……うえぇぇえん!」
「あ〜……2人ともすぐそこの浅瀬で遊んでますね。私、神父様の代わりに子供たち見ときま〜すっ」
言い終えないうちに立ち上がり、砂を蹴るように駆けてゆくネリア。
「うううっ……よろしくお願いします、ネリアさん……あ、待って……助けて……」
「はいはい。神父さーん、俺が助けますよー」
既に涙で充分洗い流せてそうなほど泣いている神父を、セスは砂から掘り起こしてやった。
「ゲホッ! ゲホッ……砂が口にっ……ゲホゲホ‼︎」
「子供たちのことはネリアに任せて、神父さんも俺たちと一緒に洗眼に行きましょう。ちょうど今、ステラも連れて行くところだったんで」
神父のおかげですっかり冷静になれたセスは、2人を洗い場へ連れて行った。




