6ー5.アレを用意してきたよ!
「水着を用意してきたよ‼︎‼︎」
「…………」
ソラが高々と掲げる白ビキニを、魔女はゴミを見るような目で見つめた。
「もうすぐ海開きだろ〜。だ・か・ら、オレがちゃんとマイダーリン魔女さんに似合う水着を選んでおいたのさー!」
「……い、行きませんよ……っ海水浴なんか……。そ、それに、なんでっ、そんな際どいデザインのなんですか……⁉︎」
「だって魔女さん、スリーサイズ教えてくんないんだもん。これなら紐の結び目でサイズの融通が利くだろー? オレって本当に天才だな〜! あ! でも! 魔女さんがオレに採寸させてくれるなら、もっと違うデザインのも用意するよ‼︎」
「はぁ……」
あれから数週間。結界を解いていないのにも関わらず連日通ってくるソラに、魔女は困惑していた。
実はあの日、魔女のローブに追尾用の魔術札を縫い込まれたせいなのだが、魔女はまだ気付けていない。
「……仕方ないですね……」
ソラが握り締めて温くなったビキニを、魔女は指先で摘みあげ、汚部屋という名の腐海へ投げ込む。
「オレの愛がこもった贈り物、受け取ってくれて嬉しいよ‼︎」
「……君が持ったままでいるのも気持ち悪いので……こちらで処分させていただきます……」
「まーたまた〜! 素直じゃないなぁ、魔女さんは〜。今日だって、オレの分の昼食も作って待っててくれたじゃないか〜! 満更でもないくせに〜〜」
そう言うとソラは食卓を挟む2脚の椅子の片方に座り、中央のボールからポテトサラダを取り皿に分けた。
魔女もすぐにもう片方の席に座り、空のカップに紅茶を注ぐ。
「そっ……それはっ、いつも私が用意しないと、君がずっとお腹を空かせているからですよ……っ!」
そう言う魔女の顔は、サラダに添えられたトマトのように真っ赤だ。
わかりやすくてかわいい人だ、とソラは思った。
「でもさぁ、こうして家に入れてくれてる時点で、魔女さんって隙ありまくりなんだよ〜。もうオレのこと大好きじゃん? スキだけに……なんちゃってー♪」
「べ、別に……い、いざとなったら、クロくんに頼んで、君を畑に埋めてもらうだけですからね……っ!」
「ギィー」
魔女は魔物であるクロを膝に乗せて威嚇するが、すっかり常連なソラに効果は無い。
クロが人に合わせて手加減することも、魔女が本気でクロに攻撃させないことも、わかりきっている。
「ああ! この味、本当に懐かしい‼︎ 昔、魔女さんが食べさせてくれたジャムサンドと同じ味だ! あの頃と同じレシピなんだね!」
アプリコットジャムをたっぷり挟んだジャムサンドを頬張りながら、ソラは興奮した声で言った。
「……そういうことは憶えてるんですね、ソラくん……」
「う〜ん……このくどい甘さ! 砂糖の入っていない紅茶と、絶妙な相性だね‼︎」
魔女は少し表情を曇らせたが、ソラは気にも留めずに喋り続ける。
「こうして毎日、愛する人の顔を見ながら食事できる! 素晴らしいね‼︎ ここは正に特等席さ! なぁ、そうだろう⁉︎」
「ギギィ〜?」
そのとき、魔女の膝上にいるクロが、魔女の巨乳を頭で持ち上げながらソラを見た。
白骨頭のドクロウに表情は無いはずだが、何かものすごく勝ち誇ったオーラを感じる。
「くっ……真の特等席はそこだと言うのかッ……‼︎」
「バカなこと言ってないで、早く食べちゃってください……残すなら、残してもいいですけど……」
「バカなこと言わないでくれよ! このオレが、マイハニー魔女さんの手作りを残すわけないじゃないか〜!」
甘すぎるジャムサンドを紅茶で中和しながら流し込むと、ソラはポテトサラダをおかわりした。
こちらは口に合う味付けだったからだ。
「食事が終わったら、さっきの水着を着て見せてくれよ! 勿論、着替えなら喜んで手伝うよ‼︎」
「……君はいよいよ本格的に気持ち悪いですね……」
「ハハハハ! 何を今更‼︎」
「自覚あって開き直ってるのが、なおタチが悪いです……」
「ギィ……」




