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6ー1.「ステラ」

夢の中。


光が溢れて真っ白な空間に、緑色の長い髪をした美しい女性が立っている。


セスは前にも同じ夢を見た気がした。

その時とは違い、今回はちゃんと自分の体を動かせるようだ。


セスは緑の美女に駆け寄ってみた。

近くで見ると、意外と小柄で幼い顔立ち。それに、誰かに似ているような気がする。


「あなたは……?」


「私はステラ……私はあなたに頼みたいことがあります」


ステラはその清らかな美貌に似つかわしい、鈴を転がすような声でそう言った。

ところが……


「実は………………………………………………」


「⁇⁇」


急にその声は全く聞き取れなくなった。

セスは自分が眠りから覚めかけているのを感じ、なんとかもう少し夢の中に留まりたいと願った。

そんなセスの視界の中、ステラの輪郭がぼやけていく…………


***


「…………す、てら…………ステラ……⁇」


夢から切り離され、現実のベッドの中。

セスは既にその意味を忘却し、ただの単語となった寝言を呟いていた。

忘れた何かを求めて手を伸ばすと、さらりとした布の中ですべすべした柔らかいものに触れる。


これは一体何だろう? とても気持ち良くて、ずっと触っていたい……


セスは全神経を触覚に集中させた。

滑らかな曲線に沿わせた手を、上へ……下へ……ゆっくりと往復させては、ときどき指に力を入れて揉み込む。


すりすり♡ ふにふに♡ むきゅっ♡♡


寝ぼけ頭のセスがその触り心地を堪能していると……


ピクっ…………ピクピク、ピク……ビクン!


「んっ…………んふふ……っ……んっ!……あ♡…………セスってば、くすぐったいの〜〜」


「⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」


セスの腕の中で、小さな体がぷるぷると震えながら甘い声を発した。

自分が夢中で撫で回していたものの正体を確認すべく、恐る恐る目を開けるセス。

その視界に、揉みくちゃにされた精霊少女の姿が飛び込んでくる。


「あっ! セス、おはようなの!」


「…………っうおああああああああ⁉︎⁉︎⁉︎」


ズデデーーンッ‼︎‼︎


大慌ててで精霊少女の服から手を引き抜いたセスは、その勢いのままベッドから転げ落ちた。

精霊少女はベッドから降りると、ヒラヒラ広がるスカートを押さえもせず、セスの顔の真横にしゃがむ。


「セス、だいじょうぶなの? セスはまえにもおっこちたの。ステラ、おぼえてるなのよ?」


「そ、それはお前が俺のベッドに居たせい……って、ん? ステラって⁇」


痛む体を起こしながらセスが尋ねると、ステラはキョトンとして首を傾げる。


「⁇ セス、さっきおなまえくれたなのよ? 『ステラ〜、ステラ〜』ってよびながら、い〜〜っぱいナデナデしてくれたなの!」


「へぇ?……ただの寝言だな、それ……でもちょうどいいか。お前も名前が無いと不便だしな」


「おまえ、じゃないのー! ステラなのっ!」


「ハイハイ、わかったよステラ……それにしても、ステラは一晩で随分話すのが上手くなったなぁ」


「うんっ! げんご、きのうよりなじんだの! ステラ、これからいっぱいセスとおはなしするの!」


ベッドに腰掛け、じゃれついてくるステラを膝に乗せながら、セスは昨日のことを思い出した。

迷いの森に突如出現した巨大植物との戦闘。その植物を吸収し、実体化した精霊ステラ。

魔力切れを起こし、一時は危険な状態だった相棒ネリア。そのネリアを背負って、ほぼ崖のような近道を通ったこと。

診療所で治療中、モモがソラの無事を伝えてくれたこと。

くたくたになって帰宅後、実体化したステラを空き部屋のベッドで寝かしつけたこと……


「なぁ、ステラ? どうして俺のベッドに居たんだ? ステラにはちゃんとステラの寝床を用意してやっただろ」


ステラは再びキョトンとして首を傾げる。


「セス……なにをいってるなの? ここ、ステラのベッドなの。きのうはセス、ここでねちゃったなのよ」


「ステラ、このベッドであったことは誰にも秘密だからな。絶対にッ……‼︎」



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